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番外編:異土の乞食となるとても
セイのこと②
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「ノアの恋人だよね。じゃ、子供あつかいはやめる。自分の判断できてくれたんでしょ? あたしはもう気にしてないから、ノアをよろしくね」
セイはあいまいな表情で笑ったあと、「ありがとうございます」と言った。
「でも、俺はノアさんの恋人じゃありません。ノアさんは、特定の恋人は持たない主義みたいです」
「なにィ?」
こちらの声に不穏なものを感じ取ったのか、セイは軽く目を見張ったあとで、しまった、と言いたげな顔になる。がしかし逃がすわけにはいかない。
あたしは「ちょっと」と手招きしつつ、相手に自分のそばへ座るよう促した。
しばらく逡巡していたセイは、観念したのか、指定された場所におとなしく腰を下ろす。
「詳しく聞かせてくれる?」
「……ノアさんのことは、推測でしかないので……俺の話でもいいですか?」
困ったように、セイは聞き返した。
へえ、いい子だな。子供あつかいはしないと言ったそばからなんだけど、一丁前にノアを庇おうとしているのがわかって、笑みをこらえるのに苦労する。
ノアとの関係を説明するために、セイは簡単な身の上話をした。
中三の頃に関東から引っ越してきたこと。今は、近くの県立高校の三年生であること。ノアの名前や顔は、以前から知っていたが、話すようになったのはここ最近で、自分から声をかけたこと。
ノアは地元の有名人だから、セイが知っていても不思議ではない。
彼の目に、ノアの勘当の件はどのように映ったのだろう。自分と同じ人間の身に起きたことは。
聞くに聞けない問いだったけれど、“俺の話”をすると言った時点で、セイはそれにも言及するつもりでいたようだった。
彼はなんの衒いもなく、ずっとノアの存在に救われていた、と告げた。
ノアの取った行動は、本当に強くなければできない。カミングアウトも、出ていくことも、帰ってくることも。
本やインターネットの中の出来事ではなく、自分が暮らす同じ町の中にノアのような人がいたことが救いになった、とセイは言った。
セイはあいまいな表情で笑ったあと、「ありがとうございます」と言った。
「でも、俺はノアさんの恋人じゃありません。ノアさんは、特定の恋人は持たない主義みたいです」
「なにィ?」
こちらの声に不穏なものを感じ取ったのか、セイは軽く目を見張ったあとで、しまった、と言いたげな顔になる。がしかし逃がすわけにはいかない。
あたしは「ちょっと」と手招きしつつ、相手に自分のそばへ座るよう促した。
しばらく逡巡していたセイは、観念したのか、指定された場所におとなしく腰を下ろす。
「詳しく聞かせてくれる?」
「……ノアさんのことは、推測でしかないので……俺の話でもいいですか?」
困ったように、セイは聞き返した。
へえ、いい子だな。子供あつかいはしないと言ったそばからなんだけど、一丁前にノアを庇おうとしているのがわかって、笑みをこらえるのに苦労する。
ノアとの関係を説明するために、セイは簡単な身の上話をした。
中三の頃に関東から引っ越してきたこと。今は、近くの県立高校の三年生であること。ノアの名前や顔は、以前から知っていたが、話すようになったのはここ最近で、自分から声をかけたこと。
ノアは地元の有名人だから、セイが知っていても不思議ではない。
彼の目に、ノアの勘当の件はどのように映ったのだろう。自分と同じ人間の身に起きたことは。
聞くに聞けない問いだったけれど、“俺の話”をすると言った時点で、セイはそれにも言及するつもりでいたようだった。
彼はなんの衒いもなく、ずっとノアの存在に救われていた、と告げた。
ノアの取った行動は、本当に強くなければできない。カミングアウトも、出ていくことも、帰ってくることも。
本やインターネットの中の出来事ではなく、自分が暮らす同じ町の中にノアのような人がいたことが救いになった、とセイは言った。
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