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DAY AFTER
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社内で倒れて以来、休憩室には近付いていなかった。意識を失う直前のことは、おぼろげながら記憶がある。休憩室の自販機の白い光をながめていたとき、最後に未希と話した夜の光景がよみがえってきた。
その瞬間、全身が氷水に浸かったように冷え、呼吸ができなくなった。
少し、マズいな、とは思ったのだ。だが、まさか倒れるとは思わなかった。もう一度あそこへ行ったら、自分はどうなるのだろう?
「考えてみるよ」と応えると、水元が腕にふれてきた。
「無理はさせたくない。それは先に言っておくよ」
「うまくすれば転地療養になるかもな」
相手のぼやけた影に向かっておどけてみせる。腕に置かれた水元の手に力がこもるのがわかった。
「今の生活に不満があるわけじゃないんだ。響野の負担になるくらいなら、今まで通りのほうがいいと思ってる」
「吉武さんの力になりたいんだろう?」
「俺ひとりだったらね」と水元は認める。
「勝手に色々想像したよ。もし本当に働けることになったら、このあたりに家を借りて住むのかなとか。でも、響野と住みはじめる前の話だ」
「やりたいことがあるなら、実現の方法を探ってみるのは悪いことじゃない、と思う」
腕にふれている手から水元の葛藤が伝わってきた。
「響野はどうしたいんだ?」
「俺は……」
答えかけてそのまま言葉を探す。
その瞬間、全身が氷水に浸かったように冷え、呼吸ができなくなった。
少し、マズいな、とは思ったのだ。だが、まさか倒れるとは思わなかった。もう一度あそこへ行ったら、自分はどうなるのだろう?
「考えてみるよ」と応えると、水元が腕にふれてきた。
「無理はさせたくない。それは先に言っておくよ」
「うまくすれば転地療養になるかもな」
相手のぼやけた影に向かっておどけてみせる。腕に置かれた水元の手に力がこもるのがわかった。
「今の生活に不満があるわけじゃないんだ。響野の負担になるくらいなら、今まで通りのほうがいいと思ってる」
「吉武さんの力になりたいんだろう?」
「俺ひとりだったらね」と水元は認める。
「勝手に色々想像したよ。もし本当に働けることになったら、このあたりに家を借りて住むのかなとか。でも、響野と住みはじめる前の話だ」
「やりたいことがあるなら、実現の方法を探ってみるのは悪いことじゃない、と思う」
腕にふれている手から水元の葛藤が伝わってきた。
「響野はどうしたいんだ?」
「俺は……」
答えかけてそのまま言葉を探す。
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