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DAY AFTER
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波打ち際をぽつぽつと話しながら歩いていくと、砂浜が途切れて砂利の多い岩場に出た。
どれくらい歩いてきたのだろうと振り返れば、ゆるく弧を描く海岸線が背後に続いている。墓地でもよく歩いたし、今日は健康的だ。
岩場はまだ先まで行けそうだったが、「そろそろ戻ろうか」と水元は言った。夕暮れが近いせいだろう。
目の具合をまた聞かれる。少々にじんできてはいるが、歩く分には支障はなかった。
ふと海に目をやると、まばゆいオレンジ色の夕日が水平線のすぐ上まで落ちている。
「すごい夕焼けだね」
響野の視線を追いかけた水元が、赤と青の複雑なグラデーションを作っている空を見て言った。
「怖くないか?」
たずねると、相手は夕日と響野を見比べるように視線を動かす。
一年前、脱線事故の直後に聞いた水元の子供時代の話を思い出していた。めずらしく、彼が普段は見せない不安定な自分について語ったと思ったからだ。
「怖くない。もう大人だから」
答える声には、何の感傷も気負いもなかった。不安定だった子供時代の水元は消え、今は大人という安定した土台を手に入れた彼がいる。
それは良いことのような気がした。
ただ、ぐらつく自分を必死に支えていたであろう子供時代の彼のそばにいてやりたかったとも思う。
自分たちと同じように浜辺を散歩していた何人かが、スマートフォンで水平線に沈む夕日を撮りはじめた。水元も夕焼けの広がった空と海にスマホを向けている。
どれくらい歩いてきたのだろうと振り返れば、ゆるく弧を描く海岸線が背後に続いている。墓地でもよく歩いたし、今日は健康的だ。
岩場はまだ先まで行けそうだったが、「そろそろ戻ろうか」と水元は言った。夕暮れが近いせいだろう。
目の具合をまた聞かれる。少々にじんできてはいるが、歩く分には支障はなかった。
ふと海に目をやると、まばゆいオレンジ色の夕日が水平線のすぐ上まで落ちている。
「すごい夕焼けだね」
響野の視線を追いかけた水元が、赤と青の複雑なグラデーションを作っている空を見て言った。
「怖くないか?」
たずねると、相手は夕日と響野を見比べるように視線を動かす。
一年前、脱線事故の直後に聞いた水元の子供時代の話を思い出していた。めずらしく、彼が普段は見せない不安定な自分について語ったと思ったからだ。
「怖くない。もう大人だから」
答える声には、何の感傷も気負いもなかった。不安定だった子供時代の水元は消え、今は大人という安定した土台を手に入れた彼がいる。
それは良いことのような気がした。
ただ、ぐらつく自分を必死に支えていたであろう子供時代の彼のそばにいてやりたかったとも思う。
自分たちと同じように浜辺を散歩していた何人かが、スマートフォンで水平線に沈む夕日を撮りはじめた。水元も夕焼けの広がった空と海にスマホを向けている。
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