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DAY AFTER
17
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相手が籍を入れて一緒に住みたいと言うのを、伯母のほうでは、のらりくらりとかわし続けていたようだが、ここ最近の甥の様子を見て、少しずつ気が変わりはじめているらしかった。
「何だか、やけに可愛いのよね……伸也が。水元君と暮らすようになってから」
伯母を迎えにきた恋人から、そんな打ち明け話を聞かされて、響野は憮然となった。
告げ口された佳子のほうは、取り立てて悪びれた様子もなく、「だって事実じゃないの」とすましていた。
近いうちに、また顔合わせの会食が催されるのかもしれない。
水元の元先輩の介護施設は、県道を山側に折れた小高い丘の上にあった。
海と山の距離が近いので、海岸線を離れたあとも、坂をのぼった高台からは水平線を望むことができる。
小ぶりのマンションのような鉄筋の建物はまだ新しく、敷地の一角に造られた庭園も、いかにも最近のものだった。
水元は駐車場に車を入れるとサングラスを外し、ジャケットを羽織って外に出る。
行く途中で買った菓子折の袋を小脇に抱えて歩きながら、前にきたときはまだ着工前で、予定地だけ見せてもらったのだ、と響野に説明した。
エントランスから中に入って来訪者用の受付で話をすると、「少々お待ちください」とスタッフが中へ消え、すぐに事務室と思しき部屋からエプロン姿の女性が現れた。
「何だか、やけに可愛いのよね……伸也が。水元君と暮らすようになってから」
伯母を迎えにきた恋人から、そんな打ち明け話を聞かされて、響野は憮然となった。
告げ口された佳子のほうは、取り立てて悪びれた様子もなく、「だって事実じゃないの」とすましていた。
近いうちに、また顔合わせの会食が催されるのかもしれない。
水元の元先輩の介護施設は、県道を山側に折れた小高い丘の上にあった。
海と山の距離が近いので、海岸線を離れたあとも、坂をのぼった高台からは水平線を望むことができる。
小ぶりのマンションのような鉄筋の建物はまだ新しく、敷地の一角に造られた庭園も、いかにも最近のものだった。
水元は駐車場に車を入れるとサングラスを外し、ジャケットを羽織って外に出る。
行く途中で買った菓子折の袋を小脇に抱えて歩きながら、前にきたときはまだ着工前で、予定地だけ見せてもらったのだ、と響野に説明した。
エントランスから中に入って来訪者用の受付で話をすると、「少々お待ちください」とスタッフが中へ消え、すぐに事務室と思しき部屋からエプロン姿の女性が現れた。
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