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DAY7
72
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「具体的にはどうしたいんだよ?」
「響野と一緒にいたい」
胸が熱くなったのもつかの間、水元はこちらに向き直った。
「だから、いつか響野が正気に戻ってやっぱり女性と結婚したくなったら修羅場を覚悟してよ」
「何でそういう縁起でもない話になるんだよ」
「経験的に」
すげない答えが返ってくる。
色々な意味でムカついたが、息を吐いてこらえた。先ほどからずっと水元の声が不安そうに揺れているのが気になったからだ。
「前にも言ってたな。俺が家族を欲しがってるって」
そう言ったとたん、相手が怯んだのを気配で感じる。
「悪かったよ……ひどいことを言った」
「それは別にいい。間違ってないから。だけど、水元が欲しいのも家族じゃないのか?」
響野は相手の顔を見た。どこに視線を向ければ良いかわからないが、声の方向から両目のおおよその位置を測る。
「俺もおまえも、代わりが欲しいわけじゃない。それはもう“ない”んだ。戻ってこない」
暗い淵を覗き込むように、自分自身の心に向かって「寂しいのか?」と問えば、きっと「そうだ」と返ってくる。水元に言われたことは何も間違っていなかった。
だが、その寂しさは、失われたものを無理矢理に再現しても埋められないように思う。おそらく、どうあっても埋められないのだ。死んだ人間が生き返らないことと同じように。
「響野と一緒にいたい」
胸が熱くなったのもつかの間、水元はこちらに向き直った。
「だから、いつか響野が正気に戻ってやっぱり女性と結婚したくなったら修羅場を覚悟してよ」
「何でそういう縁起でもない話になるんだよ」
「経験的に」
すげない答えが返ってくる。
色々な意味でムカついたが、息を吐いてこらえた。先ほどからずっと水元の声が不安そうに揺れているのが気になったからだ。
「前にも言ってたな。俺が家族を欲しがってるって」
そう言ったとたん、相手が怯んだのを気配で感じる。
「悪かったよ……ひどいことを言った」
「それは別にいい。間違ってないから。だけど、水元が欲しいのも家族じゃないのか?」
響野は相手の顔を見た。どこに視線を向ければ良いかわからないが、声の方向から両目のおおよその位置を測る。
「俺もおまえも、代わりが欲しいわけじゃない。それはもう“ない”んだ。戻ってこない」
暗い淵を覗き込むように、自分自身の心に向かって「寂しいのか?」と問えば、きっと「そうだ」と返ってくる。水元に言われたことは何も間違っていなかった。
だが、その寂しさは、失われたものを無理矢理に再現しても埋められないように思う。おそらく、どうあっても埋められないのだ。死んだ人間が生き返らないことと同じように。
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