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DAY7
71
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水元は再び黙り込んだ。あたりを確認するように左右に頭を動かすと、響野の手の上に自分の手を重ねる。手のひらの温度がいつもより高かった。
「好きな人と一緒にいたい。家族にも俺の好きな人を紹介したい」
重ねた手に力がこもり、水元は言葉を切る。
通路のどこかでドアの開く音と複数の足音が聞こえた。
水元が重ねていた手を離して早足で歩きはじめる。彼の腕をつかんでいる響野も引っ張られるようにして歩き出した。
一階の玄関へ行くためにエレベーターを待つあいだ、どちらも口をきこうとしなかった。話したくても、数名の病院関係者が同じようにエレベーターを待っていたから難しかった。
玄関ロビーに着くと、病棟とは異なる外の空気が周囲に混じっているのを感じた。昼間よりは少ないものの、人の行き交う気配があり、自動ドアの開閉音がしている。
「タクシーで帰るだろ?」
前を行く水元がたずねた。
こちらの返事を待たずにドアの音がするほうへ誘導しようとする彼を、響野は腕を引いて止める。中断した話の続きをしないまま別れたくなかった。
「それで?」
「それでって?」
「まだ話は終わってない」
立ち止まったまま、前を向いている水元に響野は言い募る。
「“それで”? 今はあきらめてないんだろう?」
「あきらめられない……」
「好きな人と一緒にいたい。家族にも俺の好きな人を紹介したい」
重ねた手に力がこもり、水元は言葉を切る。
通路のどこかでドアの開く音と複数の足音が聞こえた。
水元が重ねていた手を離して早足で歩きはじめる。彼の腕をつかんでいる響野も引っ張られるようにして歩き出した。
一階の玄関へ行くためにエレベーターを待つあいだ、どちらも口をきこうとしなかった。話したくても、数名の病院関係者が同じようにエレベーターを待っていたから難しかった。
玄関ロビーに着くと、病棟とは異なる外の空気が周囲に混じっているのを感じた。昼間よりは少ないものの、人の行き交う気配があり、自動ドアの開閉音がしている。
「タクシーで帰るだろ?」
前を行く水元がたずねた。
こちらの返事を待たずにドアの音がするほうへ誘導しようとする彼を、響野は腕を引いて止める。中断した話の続きをしないまま別れたくなかった。
「それで?」
「それでって?」
「まだ話は終わってない」
立ち止まったまま、前を向いている水元に響野は言い募る。
「“それで”? 今はあきらめてないんだろう?」
「あきらめられない……」
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