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DAY7
43
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それでも、家族になることはできると思うけど。
挑戦するような微笑を浮かべてそう言った継母の思いに、はたして水元は気付いているだろうか。
アジの尻尾だけを残してきれいに食べ終えた皿の上に、ミートソースやゼリーがべたべたに散ったランチプレートを重ねながら、たぶん気付いてるだろうな、と響野は結論を出した。
部外者の自分にわかることなど、当事者である水元はとっくに承知しているはずだ。響野が、響野自身の家族についてわかっているように。
三つのトレーを厨房近くの返却口に戻してレストランをあとにする。
――響野さんは、きっと幸せな家庭で育ったんですよね。
先ほどの花音の言葉を思い出した。決していやみな言い方ではなかったが、深く考え込む口調で告げられた言葉を。
ええ、そうです、と心の中で響野は応える。自分の家族のことなら自分が一番よくわかっていた。
だから、できれば顔を上げて、胸を張って病院中に聞こえるような大声で言いたかった。
ええ、そうです。俺は幸せな家庭で育ちました。両親は良い人たちだった。妹も、ちゃっかりしてるけど憎めなくて可愛かった。家族みんな仲が良かったです。もういなくても、これから何十年と時間がすぎても、そのことは変わりません。永遠に。
挑戦するような微笑を浮かべてそう言った継母の思いに、はたして水元は気付いているだろうか。
アジの尻尾だけを残してきれいに食べ終えた皿の上に、ミートソースやゼリーがべたべたに散ったランチプレートを重ねながら、たぶん気付いてるだろうな、と響野は結論を出した。
部外者の自分にわかることなど、当事者である水元はとっくに承知しているはずだ。響野が、響野自身の家族についてわかっているように。
三つのトレーを厨房近くの返却口に戻してレストランをあとにする。
――響野さんは、きっと幸せな家庭で育ったんですよね。
先ほどの花音の言葉を思い出した。決していやみな言い方ではなかったが、深く考え込む口調で告げられた言葉を。
ええ、そうです、と心の中で響野は応える。自分の家族のことなら自分が一番よくわかっていた。
だから、できれば顔を上げて、胸を張って病院中に聞こえるような大声で言いたかった。
ええ、そうです。俺は幸せな家庭で育ちました。両親は良い人たちだった。妹も、ちゃっかりしてるけど憎めなくて可愛かった。家族みんな仲が良かったです。もういなくても、これから何十年と時間がすぎても、そのことは変わりません。永遠に。
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