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DAY7
37
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ちらりと視線を上げると、水元の継母は妙にまっすぐなまなざしでこちらを見てくる。
「聖はあなたに会うためにこっちにきたんですか?」
「いえ、転職のために。俺と会ったのは偶然です」
「転職? 仕事を辞めたの?」
「県内で再就職先を探してました」
相手の両目が大きく見開かれた。
「知らなかった」
ショックを受けているらしい母親の横で万里が突然、麦茶の入ったコップを倒す。
「あ~」と声をあげて母親がトレーとテーブルを拭いている横で、今度はゼリーの蓋を開けてくれとせがみはじめた。
「ちょっと待ちなさい、コラ」
「あかないんだもん」
大変だな……と思いながら、響野はテーブルの向かいから手を伸ばしてお子様ランチに付いてきた小さなカップゼリーのフィルムを剥がす。ランチプレートのくぼみに中身をあけてやると、万里は満足そうにスプーンを使って食べはじめた。
「ありがとう」
礼を言う母親に「いえ」と応じながら、自分もつい数日前に緑茶の湯飲みを倒したことを思い出す。もっとも直後にゼリーをねだりはしなかったが。
「聖は、こっちのほうで暮らしたがってるみたいでした?」
娘がゼリーに集中しているのを確認した母親は、食事を再開しながらたずねた。
「仕事が決まったら名古屋のほうから引っ越すつもりだと言ってました」
「そっか。もちろん、聖の好きにしたらいいと思うけど……」
「聖はあなたに会うためにこっちにきたんですか?」
「いえ、転職のために。俺と会ったのは偶然です」
「転職? 仕事を辞めたの?」
「県内で再就職先を探してました」
相手の両目が大きく見開かれた。
「知らなかった」
ショックを受けているらしい母親の横で万里が突然、麦茶の入ったコップを倒す。
「あ~」と声をあげて母親がトレーとテーブルを拭いている横で、今度はゼリーの蓋を開けてくれとせがみはじめた。
「ちょっと待ちなさい、コラ」
「あかないんだもん」
大変だな……と思いながら、響野はテーブルの向かいから手を伸ばしてお子様ランチに付いてきた小さなカップゼリーのフィルムを剥がす。ランチプレートのくぼみに中身をあけてやると、万里は満足そうにスプーンを使って食べはじめた。
「ありがとう」
礼を言う母親に「いえ」と応じながら、自分もつい数日前に緑茶の湯飲みを倒したことを思い出す。もっとも直後にゼリーをねだりはしなかったが。
「聖は、こっちのほうで暮らしたがってるみたいでした?」
娘がゼリーに集中しているのを確認した母親は、食事を再開しながらたずねた。
「仕事が決まったら名古屋のほうから引っ越すつもりだと言ってました」
「そっか。もちろん、聖の好きにしたらいいと思うけど……」
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