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DAY7
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ぼんやりと背表紙のタイトルを追っているうちに、急に視界がぼやけて文字が読めなくなった。
響野は何度かまばたきをして、目をつぶり、閉じたまぶたの上から眼球にふれてみる。視力が落ちるときに感じるいつもの圧迫感はなかった。ゆっくり目を開けてみると、視界のピントが徐々に合ってくるのがわかる。
問題なく読めるようになった本の背表紙をながめて、彼は視力の落ちた原因と戻った原因について考えた。
どちらにも、はっきりしたきっかけがあったようには思えない。まだ完全に回復したわけではないのだろうか。
あまり自分の目を過信しないほうが良さそうだな……と思いつつ、通路に出て水元の病室を目指す。
昼食がはじまったのだろう、トレーを何枚も乗せたワゴンを押していく院内スタッフとすれ違った。数はまばらだが、自分以外にも見舞客の姿を見かける。休日らしく家族連れが多かった。
通路の前のほうからも母親と小さい子供の親子連れが歩いてくる。子供の手を引いている母親は、初めて見舞いに訪れた人間がそうするように通路に並んだ病室の番号をいちいち確認していた。
だが、ふたりが水元の部屋の前まできて足を止めたのを見て、響野はつられるように立ち止まる。
「ここかな?」
響野は何度かまばたきをして、目をつぶり、閉じたまぶたの上から眼球にふれてみる。視力が落ちるときに感じるいつもの圧迫感はなかった。ゆっくり目を開けてみると、視界のピントが徐々に合ってくるのがわかる。
問題なく読めるようになった本の背表紙をながめて、彼は視力の落ちた原因と戻った原因について考えた。
どちらにも、はっきりしたきっかけがあったようには思えない。まだ完全に回復したわけではないのだろうか。
あまり自分の目を過信しないほうが良さそうだな……と思いつつ、通路に出て水元の病室を目指す。
昼食がはじまったのだろう、トレーを何枚も乗せたワゴンを押していく院内スタッフとすれ違った。数はまばらだが、自分以外にも見舞客の姿を見かける。休日らしく家族連れが多かった。
通路の前のほうからも母親と小さい子供の親子連れが歩いてくる。子供の手を引いている母親は、初めて見舞いに訪れた人間がそうするように通路に並んだ病室の番号をいちいち確認していた。
だが、ふたりが水元の部屋の前まできて足を止めたのを見て、響野はつられるように立ち止まる。
「ここかな?」
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