301 / 446
DAY6
60
しおりを挟む
衣類を片付けたあと、響野はPCのスリープを解除して、ほこりよけの布の下から手のひらサイズの基盤を取り出した。スイッチボタン、スピーカーなどの付属部品も一緒にみつけて取り出す。
手探りで接続をはじめたものの、コネクタの位置関係がよくわからなかった。シャーペンの先でブレッドボードの穴を数えながら配線を続け、何度か失敗したあとで、椅子の背もたれに寄りかかり、どうしたものかな、と考える。
すでに配線済みの基盤をサンプルにする方法を思いついて、棚から完成品の電子工作をいくつか持ってきた。自作のリモコンや湿温時計、そしてAIスピーカー。
電源を入れて動かしたり、カバーを外して基盤とコードの配置をさわって確かめたりしているうちに、次第に気分が高揚してくる。自分の趣味や嗜好が、子供の頃からあまり変化していないことを悟った。
初めて分解してみた機械は懐中電灯だ。五歳か六歳のときだったと思う。
なぜ懐中電灯だったのか、はっきりした理由は覚えていなかった。当時、家にあった年代物の懐中電灯が『ドラえもん』のスモールライトにかたちがよく似ていたから、そのせいかもしれない。暗闇を照らすだけでなく、物を小さくする機能もあるのではないかと考えたのだ。
響野の手によってネジひとつまでバラバラになった懐中電灯は、父が見つけて元通りに組み立てるのを手伝ってくれた。
彼は息子を叱りはしなかったが、スモールライトのくだりを聞いて愉快そうにずっと笑っていた。そして、大昔は暗闇が明るくなるだけでも十分に魔法のようなことだった、と言った。
手探りで接続をはじめたものの、コネクタの位置関係がよくわからなかった。シャーペンの先でブレッドボードの穴を数えながら配線を続け、何度か失敗したあとで、椅子の背もたれに寄りかかり、どうしたものかな、と考える。
すでに配線済みの基盤をサンプルにする方法を思いついて、棚から完成品の電子工作をいくつか持ってきた。自作のリモコンや湿温時計、そしてAIスピーカー。
電源を入れて動かしたり、カバーを外して基盤とコードの配置をさわって確かめたりしているうちに、次第に気分が高揚してくる。自分の趣味や嗜好が、子供の頃からあまり変化していないことを悟った。
初めて分解してみた機械は懐中電灯だ。五歳か六歳のときだったと思う。
なぜ懐中電灯だったのか、はっきりした理由は覚えていなかった。当時、家にあった年代物の懐中電灯が『ドラえもん』のスモールライトにかたちがよく似ていたから、そのせいかもしれない。暗闇を照らすだけでなく、物を小さくする機能もあるのではないかと考えたのだ。
響野の手によってネジひとつまでバラバラになった懐中電灯は、父が見つけて元通りに組み立てるのを手伝ってくれた。
彼は息子を叱りはしなかったが、スモールライトのくだりを聞いて愉快そうにずっと笑っていた。そして、大昔は暗闇が明るくなるだけでも十分に魔法のようなことだった、と言った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
33
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる