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DAY6
51
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「目が治ってきてるかもしれないんだ」
響野は言えていなかった視力の話を水元に打ち明ける。
「昨日の朝と今日の朝、前みたいに見えた。一瞬だったけど」
本当?と相手はたずねた。
「すぐに、いつものぼやけた見え方に戻ったから……本当に治ってるのかはわからないけどな」
「いや、ちょっとだけでも見えたんなら、治ってきてるんじゃないかな?」
今にも「良かったな」と続けそうな水元の声を聞きながら、響野はスマホを握り直す。
「怖いんだ」
「え、何が?」
答えようとして、自分の舌がうまく回らないことに気付く。焦っていると、水元のほうも不審そうに「響野?」と問いかけてきた。
「……治るのが怖い」
ようやく出た声は、必死に抑えたけれども、少しふるえたような気がする。
「どうしたの? 何か……」
水元の驚いたような声が途中で切れて電話口から遠ざかったかと思うと、また耳のそばに戻ってきた。
「何かあった? 話せそうだったら聞くけど」
落ち着いた、やわらかな声が耳元で言う。響野が好きな水元の声だった。聞き惚れていた自分に気付いて、マズいなと響野は思う。昨夜からどうにも気持ちが浮ついて、コントロールがきかない。今は、水元に何か言われたら何でも言うことを聞いてしまいそうだ。
響野は言えていなかった視力の話を水元に打ち明ける。
「昨日の朝と今日の朝、前みたいに見えた。一瞬だったけど」
本当?と相手はたずねた。
「すぐに、いつものぼやけた見え方に戻ったから……本当に治ってるのかはわからないけどな」
「いや、ちょっとだけでも見えたんなら、治ってきてるんじゃないかな?」
今にも「良かったな」と続けそうな水元の声を聞きながら、響野はスマホを握り直す。
「怖いんだ」
「え、何が?」
答えようとして、自分の舌がうまく回らないことに気付く。焦っていると、水元のほうも不審そうに「響野?」と問いかけてきた。
「……治るのが怖い」
ようやく出た声は、必死に抑えたけれども、少しふるえたような気がする。
「どうしたの? 何か……」
水元の驚いたような声が途中で切れて電話口から遠ざかったかと思うと、また耳のそばに戻ってきた。
「何かあった? 話せそうだったら聞くけど」
落ち着いた、やわらかな声が耳元で言う。響野が好きな水元の声だった。聞き惚れていた自分に気付いて、マズいなと響野は思う。昨夜からどうにも気持ちが浮ついて、コントロールがきかない。今は、水元に何か言われたら何でも言うことを聞いてしまいそうだ。
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