289 / 446
DAY6
48
しおりを挟む
響野が言うと、相手は「あー」と声をあげて、それから苦笑した。
「そうだな、お金のことで不安になってるのは俺のほうだ。色々考えて心配になってきたのを響野にかぶせたような気がする」
ずるかったな、と水元はあやまったが、どんな返事を返せば良いかわからなかった。相手の言葉はむしろ愚直なくらいで、ずるさとは無縁に思えたからだ。
響野は首に当てていた手を下ろす。
「心配になるくらい、何を考えてたんだ?」
「責任とか」
「何の責任?」
「えっ……?」
水元は声をあげて、ええと、と電話口でためらった。
「響野を抱いた責任」
「だからバス停でそういうことを言うなって」
「そっちが聞いてきたんじゃないか。ちょっと前に、人のいないとこに移動してるよ」
水元の言う通り、スマホから聞こえる自動車の音は、いつのまにか先ほどよりも遠くなっている。
「響野も逆の立場になってみたらわかるよ。全然責任を感じないなんて無理だから。何かできることをしなきゃって思う。多少、空回り気味でも」
相手が布団の上に身を乗り出して「後悔してない?」と聞いてきたことを思い出した。こちらの頬にふれてくる手は遠慮がちで、何かを恐れているみたいだった。
「そうだな、お金のことで不安になってるのは俺のほうだ。色々考えて心配になってきたのを響野にかぶせたような気がする」
ずるかったな、と水元はあやまったが、どんな返事を返せば良いかわからなかった。相手の言葉はむしろ愚直なくらいで、ずるさとは無縁に思えたからだ。
響野は首に当てていた手を下ろす。
「心配になるくらい、何を考えてたんだ?」
「責任とか」
「何の責任?」
「えっ……?」
水元は声をあげて、ええと、と電話口でためらった。
「響野を抱いた責任」
「だからバス停でそういうことを言うなって」
「そっちが聞いてきたんじゃないか。ちょっと前に、人のいないとこに移動してるよ」
水元の言う通り、スマホから聞こえる自動車の音は、いつのまにか先ほどよりも遠くなっている。
「響野も逆の立場になってみたらわかるよ。全然責任を感じないなんて無理だから。何かできることをしなきゃって思う。多少、空回り気味でも」
相手が布団の上に身を乗り出して「後悔してない?」と聞いてきたことを思い出した。こちらの頬にふれてくる手は遠慮がちで、何かを恐れているみたいだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
33
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる