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DAY6
27
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幽霊は実在するのかもしれない。それは、夢と現実の境界線がぼやけて、過去と今が混じり合ったあわいのような場所に……きっと今の自分が見ている世界のような場所にいるのではないだろうか。
――もし、目が治らなかったらどうする?
思わず弱音を吐いたのは、このままでいたいと感じる自分の気持ちに対して、水元から何か意見をもらいたかったからだ。真っ当な彼らしい、正しい方向を指し示してくれそうな言葉を。
――大丈夫、治るよ。
そう……確か以前、そう言ってくれたみたいに。
だが、相手から返ってきた答えはまったく別のものだった。
響野はスプーンを置いて、水元がいつかしたように顔の前に手のひらを翳してみる。視界の中でぼやけた五本の指が動いた。
――そのときは俺がサポートするよ。
今までも、水元はそんなふうに受け入れてきたのだろうか。自分に降りかかってくる理不尽な運命に対して、憎しみや怒りをぶつけるのではなく、ただ事実を認め、寄り添うようなやり方で。
ふいに、自分が強く、何かの選択を迫られていることを感じた。
輪郭の溶けた手を握ると、指は正常に折り曲げられてこぶしを作る。
何度か握ったり開いたりをくり返しながら、響野はきちんと動く自らの手をじっと見つめた。
――もし、目が治らなかったらどうする?
思わず弱音を吐いたのは、このままでいたいと感じる自分の気持ちに対して、水元から何か意見をもらいたかったからだ。真っ当な彼らしい、正しい方向を指し示してくれそうな言葉を。
――大丈夫、治るよ。
そう……確か以前、そう言ってくれたみたいに。
だが、相手から返ってきた答えはまったく別のものだった。
響野はスプーンを置いて、水元がいつかしたように顔の前に手のひらを翳してみる。視界の中でぼやけた五本の指が動いた。
――そのときは俺がサポートするよ。
今までも、水元はそんなふうに受け入れてきたのだろうか。自分に降りかかってくる理不尽な運命に対して、憎しみや怒りをぶつけるのではなく、ただ事実を認め、寄り添うようなやり方で。
ふいに、自分が強く、何かの選択を迫られていることを感じた。
輪郭の溶けた手を握ると、指は正常に折り曲げられてこぶしを作る。
何度か握ったり開いたりをくり返しながら、響野はきちんと動く自らの手をじっと見つめた。
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