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DAY5
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「悪かったな。薬が抜けるのが遅いみたいで、最近朝が弱いんだ」
「情報共有」
まばたきしながら響野がうなずくと、「嘘だよ」と水元は言う。
「俺も、言いすぎたって思ってたから……気にしないで」
この話はここまでにしたい、と言外の声が告げていた。
会話を切り上げると、水元は料理に専念することに決めたらしい。しばらくのあいだ、キッチンではフライパンをかき混ぜる音や戸棚を開け閉めする音が聞こえていた。音の具合だけで相手がてきぱきと要領良さそうに動いているのがわかる。
そのうち調理の物音が止んで、食器のふれ合う音に変わったかと思うと、夕食が運ばれてきた。
メニューは生姜焼きだ。昼食に作ったカップ焼きそばとの落差に響野は暗澹たる気持ちになる。
「どうした? 何か変な顔してるけど」
「同い年のやつにここまで家事スキルで差をつけられると、さすがに凹む」
「大げさだな」
水元のおかしそうな声が言った。
「恋人と住んでたときもこういう感じだったのか?」
目の前に置かれていく、ぼやけた食器をながめながら、響野は切り込むようにたずねる。
とたんに、それまで笑って配膳をしていた水元が笑顔と動きを止めたようだった。無言の圧力を受けて響野は観念する。
「情報共有」
まばたきしながら響野がうなずくと、「嘘だよ」と水元は言う。
「俺も、言いすぎたって思ってたから……気にしないで」
この話はここまでにしたい、と言外の声が告げていた。
会話を切り上げると、水元は料理に専念することに決めたらしい。しばらくのあいだ、キッチンではフライパンをかき混ぜる音や戸棚を開け閉めする音が聞こえていた。音の具合だけで相手がてきぱきと要領良さそうに動いているのがわかる。
そのうち調理の物音が止んで、食器のふれ合う音に変わったかと思うと、夕食が運ばれてきた。
メニューは生姜焼きだ。昼食に作ったカップ焼きそばとの落差に響野は暗澹たる気持ちになる。
「どうした? 何か変な顔してるけど」
「同い年のやつにここまで家事スキルで差をつけられると、さすがに凹む」
「大げさだな」
水元のおかしそうな声が言った。
「恋人と住んでたときもこういう感じだったのか?」
目の前に置かれていく、ぼやけた食器をながめながら、響野は切り込むようにたずねる。
とたんに、それまで笑って配膳をしていた水元が笑顔と動きを止めたようだった。無言の圧力を受けて響野は観念する。
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