ポケットのなかの空

ＤＡＹ５

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　自分が八つ当たりをしたことはよくわかっていた。気まずさをまぎらわせるために足元の袋を拾い上げるが、結局、罪悪感のほうが勝って「悪かった」と響野はあやまる。
「本当は、俺への態度を変えないでくれて、ありがたいと思ってる」
「昨日は眠れなかったけどね」
　相手はそんなことを告白した。
「傷つけたかったわけじゃないけど、言えば響野が傷つくこともわかってた。それでも自分が正しいと思うことをしなきゃって思ったんだ」
　正しい、という言葉とは裏腹に、水元の声は力なく萎しおれている。
　やがて相手は何かをこらえるように「俺、ここにいていいのかな」とつぶやいた。
「昨日みたいになるくらいだったら、俺じゃない人が響野をサポートしたほうがいいんじゃないかって……そういうことを夜のあいだじゅう考えてた……」
　たとえば、料理や片付けなら家事代行サービスを利用する方法もある。医師の診断を受けて視覚障害の認定が下りれば、障害者専門のヘルパーに居宅支援きょたくしえんを頼むこともできるだろう。
　具体例をいくつか挙げたあとで、こちらの考えを聞くためか、水元はしばらく言葉を切った。響野が何も言わないでいると、あらためて「どう思う？」とたずねてくる。
「水元がそうしたいなら、そうしてくれ」
「俺じゃなくて響野の意見を聞いてるんだ」
「同じだよ、どっちでも」
　投げやりな気分で響野は応えた。