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DAY5
63
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「布団、取り込んでもいいか?」
「布団?」
おかしな声のまま水元はくり返した。低くて硬い声はこちらを警戒しているように聞こえる。まるで目の前にいるのが野生の熊か何かだとでも言いたげだ。
「何でそんな……危ないし、無理しなくていいよ……俺がやるから……」
下がってて、と言い終える前に水元は手すりまでたどり着き、響野の腕を取る。
いきなり腕をつかまれたことにも驚いたが、握る力そのものも不自然に強くて、反射的に相手の顔を見た。
「何だ?」
「本当に、布団?」
質問の意味がわからなかった。
「何の話だ?」
たずねても、こちらを観察するように見ている気配がするだけで水元は応えない。
しばらくのあいだ、響野の理解が及ばないところで何かの攻防があったようだが、やがて相手は長い息を吐いて手から力を抜いた。吐き出した息の最後のほうで「何でもない」と声がする。
響野は眉をひそめた。
「何だよ?」
「だから、何でもないって……俺の思いすごしだった。……ごめん」
「思いすごしって?」
「気にしないでいいから」
会話を断ち切るように答えると、水元は「これ持ってて」とスーパーの袋を押し付けた。手すりから敷布団を下ろしてホールのほうへ運んでいく影を見送ったあと、響野は手元の袋に視線を落とす。
「布団?」
おかしな声のまま水元はくり返した。低くて硬い声はこちらを警戒しているように聞こえる。まるで目の前にいるのが野生の熊か何かだとでも言いたげだ。
「何でそんな……危ないし、無理しなくていいよ……俺がやるから……」
下がってて、と言い終える前に水元は手すりまでたどり着き、響野の腕を取る。
いきなり腕をつかまれたことにも驚いたが、握る力そのものも不自然に強くて、反射的に相手の顔を見た。
「何だ?」
「本当に、布団?」
質問の意味がわからなかった。
「何の話だ?」
たずねても、こちらを観察するように見ている気配がするだけで水元は応えない。
しばらくのあいだ、響野の理解が及ばないところで何かの攻防があったようだが、やがて相手は長い息を吐いて手から力を抜いた。吐き出した息の最後のほうで「何でもない」と声がする。
響野は眉をひそめた。
「何だよ?」
「だから、何でもないって……俺の思いすごしだった。……ごめん」
「思いすごしって?」
「気にしないでいいから」
会話を断ち切るように答えると、水元は「これ持ってて」とスーパーの袋を押し付けた。手すりから敷布団を下ろしてホールのほうへ運んでいく影を見送ったあと、響野は手元の袋に視線を落とす。
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