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DAY5
37
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葬儀場で佳子に落ち合うと、響野は、山崎と交わした会話の内容を彼女に伝えた。
伯母は一瞬、眉をひそめたものの、何かを飲み込むように「わかったわ」とうなずく。スマートフォンで山崎と話したときの自分もこんな表情をしていたのだろうか。
「ことわったほうが良かった?」
「いいえ、喪主はあなたですもの」
そう言う佳子の声はひどく乾いていた。
葬儀のはじまる直前、伯母は気の抜けたような顔で「家族の葬式はこれで四度目よ」とつぶやいた。これまでに彼女が見送ってきた相手は、自分の父と母。それに夫だ。
配偶者を亡くすというのはどういう気持ちがするものだろう。親やきょうだいを亡くすのとは、やはり違うのだろうか。
伯母に聞いてみたいと思う一方で、この先、自分がそれをたずねることはないだろうという奇妙な確信もあった。両親と妹が弔われる日にふさわしい話題でもないはずだ。
葬儀の受付は響野と佳子で交代して担当した。
伯母のことを知らない弔問客の中には、遺影の母と佳子とを見比べて、興味深げな表情になる者もいたが、彼女はそういう状況には慣れっこらしく、面と向かって質問されれば、自分が響野慶子の双子の姉であることを説明したし、何も聞いてこようとしない相手に対しては、自分も気付かないふりをしているようだった。
伯母は一瞬、眉をひそめたものの、何かを飲み込むように「わかったわ」とうなずく。スマートフォンで山崎と話したときの自分もこんな表情をしていたのだろうか。
「ことわったほうが良かった?」
「いいえ、喪主はあなたですもの」
そう言う佳子の声はひどく乾いていた。
葬儀のはじまる直前、伯母は気の抜けたような顔で「家族の葬式はこれで四度目よ」とつぶやいた。これまでに彼女が見送ってきた相手は、自分の父と母。それに夫だ。
配偶者を亡くすというのはどういう気持ちがするものだろう。親やきょうだいを亡くすのとは、やはり違うのだろうか。
伯母に聞いてみたいと思う一方で、この先、自分がそれをたずねることはないだろうという奇妙な確信もあった。両親と妹が弔われる日にふさわしい話題でもないはずだ。
葬儀の受付は響野と佳子で交代して担当した。
伯母のことを知らない弔問客の中には、遺影の母と佳子とを見比べて、興味深げな表情になる者もいたが、彼女はそういう状況には慣れっこらしく、面と向かって質問されれば、自分が響野慶子の双子の姉であることを説明したし、何も聞いてこようとしない相手に対しては、自分も気付かないふりをしているようだった。
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