【本編完結】ポケットのなかの空

ＤＡＹ５

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　ご協力お願いします、と頼む口調はとりたてて高圧的でもなかったが、事故に居合わせなかった家族も事情聴取を受けるという事実を初めて知った。
　それとも、これは特殊なケースなのだろうか。
　被害者と加害者のどちらもが事故について何も語ることができないから、自分が話を聞かれているのかもしれない。
　誰も生存者のいない事故だった。両親も、妹も、相手方の運転手も。
　相手はトラックだと聞いていた。センターラインをはみ出して、対向を走っていた家族の車と正面衝突をした。
　そんな警察の説明は、事故現場の様子を見る限り、言葉通りのように思えた。
　車体の中央まで無残に潰れた乗用車と、運転席が荷台にめり込んだトラックが、物々ものものしい赤色の三角コーンに囲まれていた。
　１１０番通報と１１９番通報は、たまたま通りがかった後続車がしてくれたという。だが、交通量の少ない場所と時間だったために、事故の瞬間の目撃者は今のところ見つかっていなかった。
「ドライブレコーダードラレコ、車に付いてますよね？」
　実況見分の質問に答えている最中、ふいに先ほどの警官が聞いた。
「ＳＤカードだけでも回収しておいてもらえるとありがたいんですが。再生してみていただいて、見られるようだったら提出をお願いするかもしれません」
　何となく持ってまわった相手の言い方に違和感を覚えたが、わかりましたと響野はうなずいた。