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DAY4
20
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「母がつけたようですが、名前の由来は知りません。俺が小学生のときに離婚して、今は会うこともないので」
友人の声は十分に抑制が効いていて、先日、耳にした昏い響きは鳴りを潜めていた。伯母は気付かなかったかもしれない。
水元が就いている介護士という職業については、佳子は響野よりも知識があるようだった。
響野の母方の祖母は、癌を患い亡くなったが、闘病に付き添ったのは、おもに同居していた伯母である。祖母には認知症の症状はあまり見られず、寝たきりになっても受け答えなどはしっかりしていた。それでも、在宅療養中には訪問介護サービスを利用して訪問介護員にきてもらうことがあった、と佳子は言った。
「水元君はヘルパーさんだったわけではないのよね?」
「ええ、前にいたのは特別養護老人ホームです」
水元は答えた。響野に対するときより介護施設の呼称が細かい気がするのは、それを口にして具体的なものをイメージできる相手だからなのだろう。
「次の職場も入所施設で考えてるの?」
「最初はそのつもりだったんですが、介護士の先輩で、色々見ておくのも良いと助言をくれた人がいて、一応、訪問介護や通所施設も受けてます。病院併設のデイサービスだと待遇もわりと良くて」
「……介護士の先輩って、あのメールの女性か?」
友人の声は十分に抑制が効いていて、先日、耳にした昏い響きは鳴りを潜めていた。伯母は気付かなかったかもしれない。
水元が就いている介護士という職業については、佳子は響野よりも知識があるようだった。
響野の母方の祖母は、癌を患い亡くなったが、闘病に付き添ったのは、おもに同居していた伯母である。祖母には認知症の症状はあまり見られず、寝たきりになっても受け答えなどはしっかりしていた。それでも、在宅療養中には訪問介護サービスを利用して訪問介護員にきてもらうことがあった、と佳子は言った。
「水元君はヘルパーさんだったわけではないのよね?」
「ええ、前にいたのは特別養護老人ホームです」
水元は答えた。響野に対するときより介護施設の呼称が細かい気がするのは、それを口にして具体的なものをイメージできる相手だからなのだろう。
「次の職場も入所施設で考えてるの?」
「最初はそのつもりだったんですが、介護士の先輩で、色々見ておくのも良いと助言をくれた人がいて、一応、訪問介護や通所施設も受けてます。病院併設のデイサービスだと待遇もわりと良くて」
「……介護士の先輩って、あのメールの女性か?」
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