上 下
106 / 446
DAY4

16

しおりを挟む
 正午はかなり前にすぎていたが、食事をすませた者は誰もいなかったので、話題は自然と昼食のことになった。
 佳子が持ってきたのは、彼女の職場近くの惣菜店デリで売っている弁当だった。雑誌に掲載されることも多い人気店らしいが、グルメ情報にうとい響野は「へえ」と言う以上の相づちを思いつけず、伯母から不興を買った。
 水元がスーツを着替えに行っているあいだ、佳子は人数分の食事をダイニングのテーブルの上に用意する。先ほど朝食をすませたばかりだった響野は、腹が減っていないと辞退したが、伯母はひと口でも食べたほうが良いと反対に説得をしてきた。
「少しせたんじゃない? ちゃんと食べてるの?」
「食べてるよ」
 どうして食事のことばかり気にされるのだろうと思いながら響野は答える。
「ひょっとすると何食か抜かしたこともあったかもしれないけど、水元がきてからはちゃんと食べてる」
「そうなのね、水元が」
 復唱する伯母の声は、何やら妙な具合だった。言葉に合わせて通路のほうを向いたのは、着替えに行った水元が戻ってきていないかを確かめたらしい。
「何?」
 佳子の様子をいぶかしんで響野はたずねる。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔王は討伐されました。

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:1

【本編完結】一家の恥と言われていた令嬢は嫁ぎ先で本領発揮する

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,270pt お気に入り:6,065

愛しい貴方へ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:38

妖精王

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

俺は薄幸の青年じゃない!勘違いしないでくれ!

BL / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:2,389

処理中です...