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DAY3
29
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驚かせたであろうことは想像に難くない。おそらくはかなり気も遣わせただろう。ひょっとすると、つらい思いや不愉快な思いをさせた相手もいたのかもしれない。
スマホに履歴は残っているが、交わしたメッセージをもう一度確認することは気が進まなかった。
自分が家族の死を受け止めきれていないことを響野は知っていた。
同じように友人たちも、受け止められないのではないかと危惧していた。〈友達の家族の死〉や〈家族を亡くした友達〉などというものを。
他人の身に起きた不幸な出来事について、うまく想像できなかったり、反対に苦しいほど共感してしまったりする。そういうことは、とてもよく起きる。
だから、誰かの配慮や手助けが欲しいと思うなら、相手に理解できる言葉で、相手が受け止めきれる感情の量で、適切に語らなければならない。
だが、自分の中の絶望をそんなふうにコントロールすることが今の響野には難しかった。相手に合わせて“ちょうどよく頼る”ということができそうになかったのだ。
「俺たちくらいの歳になると、みんなもう、それぞれの生活があるからな。仕事もそうだし、早いやつは結婚してたりもするし」
響野が遠回しに友人関係への連絡を避けようとすると、となりの影から「いじっぱり」とごくごく小さな声が聞こえた。どうやら本人は独り言のつもりらしい。
聞こえてるぞ、と思うが、相手が独り言ですませようとしているものに噛みつくのも無粋な気がして黙っていた。
スマホに履歴は残っているが、交わしたメッセージをもう一度確認することは気が進まなかった。
自分が家族の死を受け止めきれていないことを響野は知っていた。
同じように友人たちも、受け止められないのではないかと危惧していた。〈友達の家族の死〉や〈家族を亡くした友達〉などというものを。
他人の身に起きた不幸な出来事について、うまく想像できなかったり、反対に苦しいほど共感してしまったりする。そういうことは、とてもよく起きる。
だから、誰かの配慮や手助けが欲しいと思うなら、相手に理解できる言葉で、相手が受け止めきれる感情の量で、適切に語らなければならない。
だが、自分の中の絶望をそんなふうにコントロールすることが今の響野には難しかった。相手に合わせて“ちょうどよく頼る”ということができそうになかったのだ。
「俺たちくらいの歳になると、みんなもう、それぞれの生活があるからな。仕事もそうだし、早いやつは結婚してたりもするし」
響野が遠回しに友人関係への連絡を避けようとすると、となりの影から「いじっぱり」とごくごく小さな声が聞こえた。どうやら本人は独り言のつもりらしい。
聞こえてるぞ、と思うが、相手が独り言ですませようとしているものに噛みつくのも無粋な気がして黙っていた。
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