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DAY3

27

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 中学の頃、水元は部活動をしていなかった。放課後はよく響野の部活動の部室や、安西たちがたまり場にしている教室に顔を出していたが、しばらくすると通学用のリュックをしょって「俺、そろそろ行くね」と帰っていった。
 今なら、水元が早めに帰っていたのは、父親とふたりきりの家で他に家事をする人間がいなかったからだと理解できる。
 教室の壁の時計を見上げ、リュックをひょいと肩にかけて帰っていく後ろ姿を覚えていた。まるで、ちょっと途中で本屋やCDショップに寄ろうとしているだけだと言うような、たいした用事ではないのだと言いたげな、いかなる種類の卑屈さも感じさせない後ろ姿だった。
 あのとき、水元は中学生だった。ほんの十三、四の子供だったのだ。
 一ヶ月か……と響野はつぶやいた。自分の場合は、目の具合と家事の経験値をふまえても、もう少しかかるだろう。
「その前に、響野は目を治すことを考えろよ」
 心配そうな声がそれに応えた。ベッドのスプリングが軽くきしんで、友人が少し離れた位置に腰を下ろしたことがわかる。
 響野が顔を向けると、すりガラスのような視界の中に相手の白い影が映っていた。中学生の頃の姿はこんなにも鮮明に思い出せるのに、目の前の影は、まるで幽霊のようにぼんやりと現実感がない。
「誰かいないのか?」とその影がたずねた。
「誰かって?」
「元カノとか、友達とか、誰でもいいけど、連絡したらすぐにきてくれそうな人」


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