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DAY3
21
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目の効かない状態で思考をめぐらせていると、そんな考えにまで行き着くことがあって恐ろしい。考えすぎて正気を失うくらいなら、慣れない家事で動き回っているほうがマシだ、と思う。
響野は息を吐いて、タオルだかふきんだかわからない布をたたむと全部をサニタリールームのタオルの棚にしまった。区別がつかないということは、要するにたいした違いはないのだ。そもそも食器を拭く布で手や顔を拭いたからといって病気になるわけでもない。
ファブリック類が片付くと、残っているのはシャツや下着類だけのようだった。それを持って階段をのぼりかけ、ふと、午前中に家の中を一周してみたことを思い出した。
二階の響野の部屋は階段を上がってすぐ左手にあり、右手はバルコニーに出るための小さなホールにつながっている。
ホールを横切って先に進むと、妹の部屋と両親の寝室があった。その奥には、なかば書庫のように本が押し込められている父の書斎もある。
事故のあと、どうしても必要な書類や印鑑を取りに行くとき以外は、響野はそのエリアへは極力、足を踏み入れないようにしていた。
まるで恐ろしい怪物か何かが潜んでいるように、ホールの先にある三つの部屋のことは考えないようにしていたのだ。
しかし今日は、家の一階を一周りしたあとで、階段をのぼって右手の奥の部屋にも行ってみた。どうしてそんなことをする気になったのかはわからなかった。
響野は息を吐いて、タオルだかふきんだかわからない布をたたむと全部をサニタリールームのタオルの棚にしまった。区別がつかないということは、要するにたいした違いはないのだ。そもそも食器を拭く布で手や顔を拭いたからといって病気になるわけでもない。
ファブリック類が片付くと、残っているのはシャツや下着類だけのようだった。それを持って階段をのぼりかけ、ふと、午前中に家の中を一周してみたことを思い出した。
二階の響野の部屋は階段を上がってすぐ左手にあり、右手はバルコニーに出るための小さなホールにつながっている。
ホールを横切って先に進むと、妹の部屋と両親の寝室があった。その奥には、なかば書庫のように本が押し込められている父の書斎もある。
事故のあと、どうしても必要な書類や印鑑を取りに行くとき以外は、響野はそのエリアへは極力、足を踏み入れないようにしていた。
まるで恐ろしい怪物か何かが潜んでいるように、ホールの先にある三つの部屋のことは考えないようにしていたのだ。
しかし今日は、家の一階を一周りしたあとで、階段をのぼって右手の奥の部屋にも行ってみた。どうしてそんなことをする気になったのかはわからなかった。
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