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DAY3
15
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「どうして嫌なのかっていう理由を、俺がきちんと理解できてるかはわからないけど、自分が納得のいくようにやってみるのが一番いいんじゃないかな。別に、すごく身体に悪いことや危険なことをしてるわけでもないだろ。もしも危険だと思ったら、俺のほうで止めるよ」
水元の言葉は冷静で、合理的で、しかも親切だった。聞いているうちに胸から顔にかけてじわじわと恥ずかしさが込み上げてくる。
今の今まで、自分は友人に、何をしたいのか、したくないのかという希望を告げて理解してもらおうと躍起になっていた。だが、水元がどういうつもりでそんな自分を助けてくれているのかについては無頓着だったのだ。
「じっとしていたくないのは負ける気がするからだ」
響野は言った。建前の下から出てきた本音は、われながら子供っぽかった。中学生の頃から進歩していない。
「負けるって何に?」
「わからないけど……他の言い方が思いつかない。目がこうなって、最初、俺は負けたんだと思った」
響野は何度まばたきをしても視界が暗闇のままだった朝を思い出す。
「でも、違う。見えないことと勝ち負けは関係ない。今の状態でもできることはあるんだ。それを何もできないと思い込んだら、本当に負ける気がする」
そうか、と水元の声が聞こえた。
「響野は目を治すより、見えない生活に慣れることのほうに熱心みたいだったから、何でだろうとは思ってた」
水元の言葉は冷静で、合理的で、しかも親切だった。聞いているうちに胸から顔にかけてじわじわと恥ずかしさが込み上げてくる。
今の今まで、自分は友人に、何をしたいのか、したくないのかという希望を告げて理解してもらおうと躍起になっていた。だが、水元がどういうつもりでそんな自分を助けてくれているのかについては無頓着だったのだ。
「じっとしていたくないのは負ける気がするからだ」
響野は言った。建前の下から出てきた本音は、われながら子供っぽかった。中学生の頃から進歩していない。
「負けるって何に?」
「わからないけど……他の言い方が思いつかない。目がこうなって、最初、俺は負けたんだと思った」
響野は何度まばたきをしても視界が暗闇のままだった朝を思い出す。
「でも、違う。見えないことと勝ち負けは関係ない。今の状態でもできることはあるんだ。それを何もできないと思い込んだら、本当に負ける気がする」
そうか、と水元の声が聞こえた。
「響野は目を治すより、見えない生活に慣れることのほうに熱心みたいだったから、何でだろうとは思ってた」
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