【本編完結】ポケットのなかの空

ＤＡＹ２

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　最初に〈衣〉のバリアフリー対策として、リビングの床で山になっていた洗濯物のうち、シャツやズボン類をハンガーにかけ、自室のクローゼットに吊るしてみた。こうすれば着替えの際に洋服のかたちを把握しやすい。洗濯からあがってきた服をタンスにしまう手間も省けるので一石二鳥だ。
　下着類もたたまずに広げたまま、ひとつの引き出しに一種類のみを入れることにする。スーツなどのフォーマル衣料は、目が治るまでは着る機会もないと考え、クローゼットの奥のほうへと移動した。元々そんなに数を持っていたわけではないから、衣類の整理はあっという間に終わった。
　十一年ぶりに元同級生の部屋を訪れた水元は、シンプルすぎる響野のワードローブを見てあきれたようだった。
「パソコンが三台もあるのに、服はシャツとジーンズくらいしかない」と感想らしきものをもらす。
「ＰＣは七台だよ」と響野は訂正した。
「デスクトップの横に、小型機種ラズパイ二台とラップトップが二台あるはずだ」
「台数の話は今はいいよ。せっかく素材に恵まれてるんだから、もう少しは洒落しゃれっけを持てよな」
「素材って？」
　たずねるが、相手からの返答はない。どうやら本格的にあきれられてしまったらしい。
　しかし、素材の話などされても……服は専門外だ……。