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DAY2
17
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忘れていた。自由研究の制作物も、それを褒めてくれた理科の教師も、日常生活の中で思い出すにはあまりにも遠い過去の記憶だ。
鉱石ラジオは確か、科学雑誌に作り方が載っていたのだと思う。父の本棚から拝借してきたそれをながめながら、インターネットで情報収集をしたり、材料を取り寄せたりして、夏休みいっぱいを退屈せずにすごした。自分も工作好きの父が、途中からあれこれと口を出してきて鬱陶しかったので、余った材料を渡して自分のぶんを作るように勧めた。
思春期をすぎてからというもの、父と休日の海へ釣りに出かけたことはない。
だが、夏休みのリビングで、ふたりで黙々と鉱石ラジオを作っていた記憶ならば、今も鮮明に思い出せる。
響野はうつむいて、ゆっくりと息を吐き、それから吸った。
テグスがからまったように、あるいは銅線をコイルに巻きつけていくときのように、胸が強くしめつけられて、痛かった。
朝食を終えてすぐに、響野は水元の力も借りて行動を開始した。
目標は、視力に頼らないで生活するための環境を整えることである。
人間の生活をかたち作っている基礎機能群は、〈衣食住〉だ。そのうちの〈住〉については、三年前のリフォームによってある程度のバリアフリー環境は確保されている。より工夫が必要なのは〈衣〉と〈食〉のふたつだろう。
鉱石ラジオは確か、科学雑誌に作り方が載っていたのだと思う。父の本棚から拝借してきたそれをながめながら、インターネットで情報収集をしたり、材料を取り寄せたりして、夏休みいっぱいを退屈せずにすごした。自分も工作好きの父が、途中からあれこれと口を出してきて鬱陶しかったので、余った材料を渡して自分のぶんを作るように勧めた。
思春期をすぎてからというもの、父と休日の海へ釣りに出かけたことはない。
だが、夏休みのリビングで、ふたりで黙々と鉱石ラジオを作っていた記憶ならば、今も鮮明に思い出せる。
響野はうつむいて、ゆっくりと息を吐き、それから吸った。
テグスがからまったように、あるいは銅線をコイルに巻きつけていくときのように、胸が強くしめつけられて、痛かった。
朝食を終えてすぐに、響野は水元の力も借りて行動を開始した。
目標は、視力に頼らないで生活するための環境を整えることである。
人間の生活をかたち作っている基礎機能群は、〈衣食住〉だ。そのうちの〈住〉については、三年前のリフォームによってある程度のバリアフリー環境は確保されている。より工夫が必要なのは〈衣〉と〈食〉のふたつだろう。
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