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DAY2

12

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「洗面所のはさみやカミソリは、さわると危ないからしまってあるんだ。必要なら言ってよ」
 はさみは問題ないが、カミソリはひげをるのに使っている。しかし、今の目の状態でカミソリを使用することが、そもそも危険な行為かもしれない。
 事情を説明すると、水元は「じゃあ、剃ってやろうか?」と言って、自分の荷物から電気シェーバーを持ってきた。シャワーから出た響野をダイニングの椅子に座らせ、慣れた手つきでシェーバーを動かしていく。
「介護士ってひげ剃りもするのか?」
 あまりに手慣れているので、思わず質問が出た。
「するよ」と友人は答える。
「ひげ剃りだけじゃなくて、入所者さんの洗顔とか歯磨き、爪切り、あとは髪のブラッシングもね。整容せいようっていうんだ」
 あごにふれる手の動きは、声と同じく、やわらかいながらもきびきびとしている。〈仕事モード〉というわけだ。
「でも、安全面や法律なんかの関係もあって、現場でのはさみやカミソリの使用には制限がある。ひげ剃りなら、T字型のカミソリはNGで、電気シェーバーはOKとかね」
「なるほど、勉強になる」
「そうだろ。響野も将来、介護を受けるときには電気シェーバーを忘れずに用意しろよ」
 水元が笑い含みの声で言った。


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