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DAY AFTER
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柳沼智美の話というのは、響野が少し前から連絡を取るようになった交通事故の被害者遺族の団体に関するものだった。自分も最近、同じところにアクセスをしたらしい。
遺族に対する法律相談や精神的なケアを中心におこなっているところで、響野が利用したのは法律相談のほうだった。
衝突事故の多い暫定二車線道路の整備について、国や関係機関にかけ合う手段があるかどうかを聞いてみたかったのだ。
伯母と歩いてくる途中で、そんな響野の近況を教えてもらった、と彼女は言った。
「……すごいなと思って」
うつむいたままの相手の顔からつぶやくような声が聞こえてくる。
「私は、つい最近まで動けませんでした。自分が何をすればいいのかもわからなくて」
「俺もたいしたことはできてません」
この人はいつも下を向いてるな、と思いながら響野は応えた。
連絡を取ったと言っても、まだ具体的な行動を起こすまでには至っていない。同じような活動をしている別の団体につないでもらい、話を聞かせてもらっている最中だ。
「父のいた職場では、今、ドライバーは定期的な健康診断が義務になっています。トラックも安全装置付きのものに買い換えていくそうです」
彼女は、うつむいていた顔をぎこちなく上げる。
「こんな話をしても、響野さんのご家族が浮かばれるとは思いませんが、せめてお伝えしたくて」
遺族に対する法律相談や精神的なケアを中心におこなっているところで、響野が利用したのは法律相談のほうだった。
衝突事故の多い暫定二車線道路の整備について、国や関係機関にかけ合う手段があるかどうかを聞いてみたかったのだ。
伯母と歩いてくる途中で、そんな響野の近況を教えてもらった、と彼女は言った。
「……すごいなと思って」
うつむいたままの相手の顔からつぶやくような声が聞こえてくる。
「私は、つい最近まで動けませんでした。自分が何をすればいいのかもわからなくて」
「俺もたいしたことはできてません」
この人はいつも下を向いてるな、と思いながら響野は応えた。
連絡を取ったと言っても、まだ具体的な行動を起こすまでには至っていない。同じような活動をしている別の団体につないでもらい、話を聞かせてもらっている最中だ。
「父のいた職場では、今、ドライバーは定期的な健康診断が義務になっています。トラックも安全装置付きのものに買い換えていくそうです」
彼女は、うつむいていた顔をぎこちなく上げる。
「こんな話をしても、響野さんのご家族が浮かばれるとは思いませんが、せめてお伝えしたくて」
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