ポケットのなかの空

INTERVAL

3

　直ったラジカセは、てっきり水元が持ち帰るものと思ったが、相手は迷うように「うちは壁が薄いから……」と言って空き教室の棚に隠した。
　それに目をつけた安西がＣＤを何枚も持ってきて好きな音楽をかけるようになり、空き教室には小さなオーディオ空間スペースができあがった。
　子猫たちが下痢をしなくなり、目ヤニも取れて可愛らしくなってくると、和田は「飼い主を探す」と宣言してポスター作りをはじめた。
　和田ひとりにすべてを背負わせるのは気が引けたので、響野と水元も手伝いを申し出て、校内の掲示板や近所の動物病院にポスターを貼らせてもらいに行った。安西だけは断固として飼い主探しの手伝いを拒否したが、それはまあ、いつものことだから誰も気にしなかった。
　子猫の一匹は、四人と同じクラスの横山太一たいちの家にもらわれていった。
　響野とは部活も一緒だった横山は、ポスターを貼りにいって技術部に遅れてくる響野を見て「何やってんだ？」と不審がっていたが、子猫の縁に導かれてか、自分も空き教室に顔を出すようになった。
　いつのまにか教室内に増えた各自の私物（ＣＤ、スナック菓子、漫画雑誌、トランプ、携帯ゲーム機、エロ本など）を、校内の不届者ふとどきものから守るために、防犯用のからくり装置を考案したのも横山だ。
　子猫がすべて引き取られていってからも、安西は空き教室でラジオやロックを聴いていたし、動物を愛する和田も、ときどき、ケガした野鳥や捨て猫を保護しては面倒を見ていた。