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DAY7
14
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「色々ありがとう」
鍵を受け取りながら、響野は礼を言った。
「ひとりで大丈夫? 明日も水元君のところへ行くつもりなんでしょう?」
「タクシーも呼べるし、何とかなるよ」
佳子の声には疲労の色が目立った。都内から三日連続で足を運んでもらっているのだから、これ以上の負担はかけられない。
杖、と独りごちるような相手のつぶやきに苦笑をもらして、響野はぼやけた手の中の鍵をポケットにしまう。
病室で流した涙が止まるまでには、思いのほか時間がかかった。おそらく、今の自分は泣き腫らしたひどい顔をしているのではないかと思う。
だが、病院を出てアプリで呼んだタクシーに乗り込んだあとも、水元と交わしたやり取りの内容については、伯母は何もたずねてこなかった。
律儀にペットボトルを買ってから病室へ戻ってきた佳子に対して、水元がひたすら恐縮していたことが、何やらいたたまれなかったが、よく考えれば(よく考えなくても)水元に咎はない。
靴を脱いで家にあがると、響野はサニタリールームに直行した。両目の腫れぼったさと涙の痕跡を消すために、ばしゃばしゃと顔を洗う。
鍵を受け取りながら、響野は礼を言った。
「ひとりで大丈夫? 明日も水元君のところへ行くつもりなんでしょう?」
「タクシーも呼べるし、何とかなるよ」
佳子の声には疲労の色が目立った。都内から三日連続で足を運んでもらっているのだから、これ以上の負担はかけられない。
杖、と独りごちるような相手のつぶやきに苦笑をもらして、響野はぼやけた手の中の鍵をポケットにしまう。
病室で流した涙が止まるまでには、思いのほか時間がかかった。おそらく、今の自分は泣き腫らしたひどい顔をしているのではないかと思う。
だが、病院を出てアプリで呼んだタクシーに乗り込んだあとも、水元と交わしたやり取りの内容については、伯母は何もたずねてこなかった。
律儀にペットボトルを買ってから病室へ戻ってきた佳子に対して、水元がひたすら恐縮していたことが、何やらいたたまれなかったが、よく考えれば(よく考えなくても)水元に咎はない。
靴を脱いで家にあがると、響野はサニタリールームに直行した。両目の腫れぼったさと涙の痕跡を消すために、ばしゃばしゃと顔を洗う。
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