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DAY5
22
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これには、いいやと答える。とっさに声が揺らいだのをごまかそうとして、さらに続けた。
「別件だよ」
「何か大変な話?」
水元はごまかされなかったようだ。
響野は無言でTシャツの裾に手を入れると、上着を脱いだ。下も脱ごうと寝間着代わりのスウェットに指をかけたところで、ふと動きが止まる。
両手に洗濯かごを抱えた水元が、まだサニタリールームの出入口に立っていた。響野が彼の質問に答えるのを待っているのだろう。
「シャワーを浴びるから」
暗に出ていってほしいと促すと、「あ、うん」と応じて水元がかごを持ち直す。
「だけど、もしも重い話をするなら、大丈夫なのか? 昨日の今日で」
「人が死ぬと馬鹿みたいに色んな手続きが必要になるんだ。死んでわかったことだけど」
早口で響野は答えた。これは水元の最初の質問に対する答えだ。
次に、ふたつめの質問への答えも返した。
「……“大丈夫じゃない”と言って何か解決するのか?」
口にしながら、ああ最悪だなと思う。
これ以上、苛立ちも皮肉もぶつけたくなくて、相手のいる出入口に背を向けた。朝のように自分の発言をフォローすることもできなかった。
* * * * *
「別件だよ」
「何か大変な話?」
水元はごまかされなかったようだ。
響野は無言でTシャツの裾に手を入れると、上着を脱いだ。下も脱ごうと寝間着代わりのスウェットに指をかけたところで、ふと動きが止まる。
両手に洗濯かごを抱えた水元が、まだサニタリールームの出入口に立っていた。響野が彼の質問に答えるのを待っているのだろう。
「シャワーを浴びるから」
暗に出ていってほしいと促すと、「あ、うん」と応じて水元がかごを持ち直す。
「だけど、もしも重い話をするなら、大丈夫なのか? 昨日の今日で」
「人が死ぬと馬鹿みたいに色んな手続きが必要になるんだ。死んでわかったことだけど」
早口で響野は答えた。これは水元の最初の質問に対する答えだ。
次に、ふたつめの質問への答えも返した。
「……“大丈夫じゃない”と言って何か解決するのか?」
口にしながら、ああ最悪だなと思う。
これ以上、苛立ちも皮肉もぶつけたくなくて、相手のいる出入口に背を向けた。朝のように自分の発言をフォローすることもできなかった。
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