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DAY5
15
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「それは、響野が決めればいいことだよ。自分の感情だから」
「自分じゃよくわからない」
頼りない答えしか返せなかったが、水元の意見に反発したわけではなかった。どちらかと言えば共感できそうだった。響野自身もずっとそんなふうに、感情の取り扱いを間違えないことが立派な人間の条件だと考えていたように思うからだ。
けれども、今はよくわからなかった。元同級生に対する自分の感情は、プラスとマイナス、どちらなのだろう。
「水元の返事が聞きたい」
一周回って同じ話に戻ると、相手はため息をついた。
「……だって、未来がない。俺とじゃ」
「何だよ、未来って?」
「さっき言ったようなこと。夫婦で命をつないでいくみたいな」
「そういう未来があれば、水元はOKなのか?」
「未来はないんだ」
相手の声に苛立ちがにじむ。
「響野が欲しいのは家族じゃないか。今も自分の家族に会いたがってる。ときどき、本当に引っ張られてどこかに行っちゃうんじゃないかって怖くなるよ」
胸のあたりに大きな氷のかたまりを押し込まれた気がした。
水元がすばやく手を伸ばして腕をつかんでくる。こちらに驚く隙も与えまいとするように、急いた口調で「ごめん」と相手はあやまった。
「今のは言いすぎた……」
大丈夫か?と続けて聞かれたのは、つい先ほど過呼吸を起こしかけたからだろうか。
「自分じゃよくわからない」
頼りない答えしか返せなかったが、水元の意見に反発したわけではなかった。どちらかと言えば共感できそうだった。響野自身もずっとそんなふうに、感情の取り扱いを間違えないことが立派な人間の条件だと考えていたように思うからだ。
けれども、今はよくわからなかった。元同級生に対する自分の感情は、プラスとマイナス、どちらなのだろう。
「水元の返事が聞きたい」
一周回って同じ話に戻ると、相手はため息をついた。
「……だって、未来がない。俺とじゃ」
「何だよ、未来って?」
「さっき言ったようなこと。夫婦で命をつないでいくみたいな」
「そういう未来があれば、水元はOKなのか?」
「未来はないんだ」
相手の声に苛立ちがにじむ。
「響野が欲しいのは家族じゃないか。今も自分の家族に会いたがってる。ときどき、本当に引っ張られてどこかに行っちゃうんじゃないかって怖くなるよ」
胸のあたりに大きな氷のかたまりを押し込まれた気がした。
水元がすばやく手を伸ばして腕をつかんでくる。こちらに驚く隙も与えまいとするように、急いた口調で「ごめん」と相手はあやまった。
「今のは言いすぎた……」
大丈夫か?と続けて聞かれたのは、つい先ほど過呼吸を起こしかけたからだろうか。
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