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DAY5
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さらなる重い話を淡々と相手は語る。あえて感情を押し殺したような水元の口調からは、かえって問題の深刻さが透けて見えた。
「この仕事をしてそろそろ五年になるけど、幸い俺は……ハラスメントも虐待もガチなやつはほとんど知らない。職場に恵まれたんだと思う。今は本当に色んな場所で聞くから。自分が簡単に加害者にも被害者にもなりそうな気がするよ」
「言葉が骨身に沁みる」
「あのな、響野」
言いかけたところで、水元は何を思ったか、おもむろに立ち上がるとソファにいる響野のとなりに腰かけた。互いの肩と腕がふれる近さでふざけるように身体を寄せてくる。響野は驚いて尻の位置をずらし、水元から遠ざかった。
「……逃げたな」
どこかあきれた様子で水元がつぶやく。
「好きだと言ってみたり、避けてみたり、どっちだよ?」
「そっちこそ、何だいきなり」と響野は抗議した。
「俺はホームヘルパーとしてこの家にいるわけじゃないよ」
相手ははぐらかすようなことを言う。
「響野だってプライベートで家電の修理を頼まれたら、エンジニアとして仕事をしているとは思わないだろ?」
そりゃそうだと響野はうなずく。そもそも機械類の修理は、通常は組み込み系エンジニアの仕事ではない。
「この仕事をしてそろそろ五年になるけど、幸い俺は……ハラスメントも虐待もガチなやつはほとんど知らない。職場に恵まれたんだと思う。今は本当に色んな場所で聞くから。自分が簡単に加害者にも被害者にもなりそうな気がするよ」
「言葉が骨身に沁みる」
「あのな、響野」
言いかけたところで、水元は何を思ったか、おもむろに立ち上がるとソファにいる響野のとなりに腰かけた。互いの肩と腕がふれる近さでふざけるように身体を寄せてくる。響野は驚いて尻の位置をずらし、水元から遠ざかった。
「……逃げたな」
どこかあきれた様子で水元がつぶやく。
「好きだと言ってみたり、避けてみたり、どっちだよ?」
「そっちこそ、何だいきなり」と響野は抗議した。
「俺はホームヘルパーとしてこの家にいるわけじゃないよ」
相手ははぐらかすようなことを言う。
「響野だってプライベートで家電の修理を頼まれたら、エンジニアとして仕事をしているとは思わないだろ?」
そりゃそうだと響野はうなずく。そもそも機械類の修理は、通常は組み込み系エンジニアの仕事ではない。
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