【本編完結】ポケットのなかの空

INTERVAL

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　技術部に所属していた響野は、二年生に進級してすぐの頃、同じクラスになった水元聖ひじりに声をかけられた。
　粗大ごみでＣＤラジカセを拾ったが、ああいうものは修理できるのか？と相談されたので、見てみないことにはわからないと返事をすると、特別教室棟の二階のすみにある教室まで連れていかれた。
　空き教室には意外な先客がいた。
　入学当初から協調性のなさを隠そうともせずに周囲から浮き上がっていた安西康光やすみつが、どこから持ってきたのか、運動マットの上に寝そべってポータブルプレイヤーで音楽を聴いており、そのわきでは、こちらも一年生のときから飼育委員をしていて、学校のウサギ小屋の近くで姿を見かけることが多かった和田将大まさひろが、登校中に拾ったという子猫を数匹、熱心に世話していた。
　ふたりとも水元と同じように、響野とはこの春、同じクラスになったばかりだ。
　教室ではまったく接点のなさそうな三人が一緒にいることを意外に思ったが、響野の預かり知らないところで彼らは顔見知りのようだった。
　子猫を拾った和田が、しばらく育てられる場所を探していて、それを知った安西が空き教室の存在を教えた――というのが、どうやら一連の経緯けいいらしい。
　ＣＤラジカセについては、確実に直る保証はないと水元には伝えてあった。
　しかし、分解してピックアップレンズを掃除したり、レーザーの出力ボリュームを調整したりするうちに、ラジカセは正常に動くようになり、響野は水元にひとしきりの感謝を受けた。にこにこと人懐こく笑う同級生から言葉の限り称賛されるのは、悪い気持ちはしなかった。