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DAY4
3
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佳子がしばらく黙っていたのは、響野が“友達”の詳しい情報をそのあとに続けると考えたからに違いなかった。
だが、どういうわけか、このときは彼女の期待に沿う行動をすぐに取ることができなかった。
何か、石のように頑ななものが胸の奥につかえていたせいだ。
つかえを飲み込むためにひと呼吸置いて、響野は水元の簡単なプロフィールを紹介する。中学時代の同級生であること。職業は介護士だが、現在はUターンのための転職活動中であること。
聞き終えた伯母は、そう、と短く相づちを打った。
「とにかく、私も一度そちらに行くわ。どのみちそろそろ顔を出そうと思っていたところよ」
そうして彼女は、明日の午後にお邪魔すると告げた。
「花を買っていくわね」
「ありがとう」
「大丈夫なの、伸也? 声の感じがいつもと違うわ」
響野はあいまいに笑う。自分が大丈夫かどうかは、難しい問題だった。しかし、それを佳子に伝えることがはたして正解だろうか。
大丈夫じゃないかもしれない……さっき男にキスしようとしたところだよ。
電話を終えたあとで響野は部屋を出た。一階にいる水元に、伯母に連絡を取ったことと彼女が家にくることを伝える。
ちょうど夕食の配膳をしていたらしい水元は、「良かったな」と明るく応えた。部屋での一件を気にしている様子はなかった。
だが、どういうわけか、このときは彼女の期待に沿う行動をすぐに取ることができなかった。
何か、石のように頑ななものが胸の奥につかえていたせいだ。
つかえを飲み込むためにひと呼吸置いて、響野は水元の簡単なプロフィールを紹介する。中学時代の同級生であること。職業は介護士だが、現在はUターンのための転職活動中であること。
聞き終えた伯母は、そう、と短く相づちを打った。
「とにかく、私も一度そちらに行くわ。どのみちそろそろ顔を出そうと思っていたところよ」
そうして彼女は、明日の午後にお邪魔すると告げた。
「花を買っていくわね」
「ありがとう」
「大丈夫なの、伸也? 声の感じがいつもと違うわ」
響野はあいまいに笑う。自分が大丈夫かどうかは、難しい問題だった。しかし、それを佳子に伝えることがはたして正解だろうか。
大丈夫じゃないかもしれない……さっき男にキスしようとしたところだよ。
電話を終えたあとで響野は部屋を出た。一階にいる水元に、伯母に連絡を取ったことと彼女が家にくることを伝える。
ちょうど夕食の配膳をしていたらしい水元は、「良かったな」と明るく応えた。部屋での一件を気にしている様子はなかった。
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