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変態仮面の素顔

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◇◇

「ぁ♡だめっ、♡またイッちゃうからぁっ♡♡」

魔物に媚薬を飲まされ、なんやかんやでアストロマスクに体を委ねることになってから一時間は経っただろうか。
謎に自信満々だったアイツも童貞だと知りこれはもう俺がコイツを組み敷くしかないのでは……?と身構えたりもしたけど、取り出された俺のちんこはアストロマスクの指先でつままれ少ししごかれただけであっけなく射精して使いものにならなくなり──今は地面の上に仰向けに寝かされ、そこに覆いかぶさってきたこいつにケツの穴を蹂躙されていた。

「……ずいぶんほぐれているな。性行為の経験はないということだったのになぜ?」
「あっ♡あぁっ♡♡」

長くて骨ばった指が俺のナカに何本か入り込んでじゅっぽじゅっぽ♡♡と無造作に動かされ、もう何度イったか分からない。
星空揺らめくキュロットパンツは一番最初に下着のパンツといっしょに剥ぎ取られ、今は少し離れた地面でことの成り行きを見守っている。

「──ミルキーウェイ、聞こえているか?」
「んぁっ!?♡」

ぐりゅん!♡とナカの壁を抉り取るように指をひっくり返され、これまでバラバラに動いていたそれらが急に連帯感を持ってイイところを一点集中で責め立ててくるからアストロマスクが話し掛けているのが聞こえていても返事をする余裕が作れない。

「どうして君の“ここ”はこんなにも熟れていて、すんなり私の指を受け入れられたのか、と聞いているぞ」
「そ、なのわざわざ聞くなぁっ……♡」
「答えて欲しい。私の天の川の可愛い蕾が、既に誰かに摘まれているかもしれないと思うと冷静じゃいられないんだ」 
「おま、こんな時にそんな冗談……っ、」
「ミルキーウェイ……」

──セックスの経験がないのに“そこ”がほぐれているならオナニーしかないだろ!
──お前それ分かってて聞いてんだろ!!

これ以上意地の悪いこと聞くんじゃねぇと出かかった言葉は、仮面越しでもはっきり分かるくらい悲しそうな、捨てられた仔犬のような目に一瞬にして引っ込められた。

「……っ、ちが、うからぁ……っ、アンタ以外誰も、触ってない……っ」
「……!そうか」

代わりに捻り出した弁明にアストロマスクの表情がみるみる明るくなっていってほっ、と一息つく。こいつマジで俺が他の男とヤってるかもなんて思ったのかよ……なんとか誤解がとけて良かった。……って、なんで恋人に向けるような感想をこいつに抱いてるんだ!?俺には英先輩がいるのに!……いや別にあの人とも付き合ってないけど!!

「それを聞いて安心した。しかし私以外に触らせていないということは……」
「……っ、そ、それ以上言っ……」
「自分で慰めていたのか」
「……!お前……っ」

言い当てられ羞恥でカッと顔が熱くなるけど、その言い当てた本人はあっけらかんとしている。

「次からは寂しい夜は私を呼びたまえ。君のためなら銀河の果てからでも駆けつけよう」
「うるせ……っ、お前も童貞のくせに……っ!」
「問題ないだろ?──今から君で捨てるのだから」
「ぁ、っ、?♡」

あれだけ執拗に俺のナカをいじめていた指がじゅぼんっ♡♡といやらしい音を立ててあっけなく引き抜かれる。まだ足りない♡と言わんばかりにヒクつくそこに、指とは比べものにならない質量の“何か”の気配を感じて息を飲んだ。

「……っ、♡」
「……すぐ楽にしてやるからな、もう少し頑張るんだぞ」

そう耳元で囁く声色からは俺で童貞を捨ててやろうという下心は感じなくて、目の前で苦しむ俺を心から助けたいと思ってくれているのが分かる。

「……くっ……、あと一息だと言うのに……」

──だけど下心がない故なのか、アストロマスクのそれはゆるやかに勃ち上がってはいるけど挿入出来るほどの硬さはまだない。自分で軽く扱いてみてもイマイチ反応がないみたいだ。

「待っていろミルキーウェイ、今……」
「……っ、お前がそんなに無理しなくて良いから……!」

しごく手にだんだん力が入っていくのが目に見えて分かるのに、勃つどころか痛そうに見えるアストロマスクのそこになんだか申し訳なくなってきて、その手に自分の手を重ねて止めながら首を振る。

「お前がそこまでする必要ない……!こんなの放っとけばそのうち落ち着……、

……っ?」

そこでふら、と目眩がして言葉が途切れる。
快感とは違う不快なそれに顔を顰めていると、アストロマスクは気の毒そうに──けどはっきりと

「残念ながらそれはないな」

と言い放つ。

「その媚薬は、放っておけば君の生命力を奪い尽くすぞ」
「生命力……?」
「ぶしつけな言い方をすれば、早くどうにかしなければ君は死ぬ」
「……!?」

突然出てきた、この状況に一番関係なさそうな“死”というワードにひゅっ、と喉が鳴る。

「なっ、なんでお前がそんなこと断言出来んだよ……!?」
「自分の生まれ育った星の生き物のことだ、ある程度知っていて当然だろう?」
「……生まれ育った……?」
「言っていなかったか?私はこの星の人間ではない。最初に君を魔法少年に誘った妖精や──魔物と同じ星から来た者だよ」
「は……!?」
「君に媚薬を飲ませたあの魔物は、対象の性的興奮を高めたところで──」

さらりととんでもない事実が告げられたのに、なおも話を続けようとするアストロマスクを「ちょっと待て!」と制する。

「まさかお前……っ、自分の星の魔物がやられないように、わざと俺の邪魔してたのか……!?」
「とんでもない!先ほども言っただろう。私はいつだって、君を守るために立ち回っているつもりだと。──例えば昨日君が対峙した魔物は背中から熱線を発射する種族で、あのまま君があそこに居続けたら焼き殺されてしまうところだったぞ」
「──っ!」

『──あぶないっ!』
『ひでぶっ!?』
『大丈夫かミルキーウェイ!!』

昨日の魔物との戦いで、俺がトドメを刺そうとしたところでアストロマスクに体当たりされたことが思い出される。言われてみればその直後、コイツは謎の──まるで右腕を庇うようなポーズを決めていた。

「ちょっと待て……っ、ということは──」

アストロマスクの腕を掴んでガッ、と袖を捲る。

「……!?」

案外よく鍛えられているらしいアストロマスクの腕の手首から肘にかけてが黒くただれていた。

「この傷……俺を庇って……?」
「……男の勲章ってやつさ」

否定も肯定もされないけど俺の問いかけに気障ったらしく返すアストロマスクに、本当に俺を庇って火傷したんだと確信する。
それが本当ならコイツは今までも、邪魔どころか何度も俺を助けていたことになる。

「それなら最初からそう言えば良かっただろ……!」

コイツが何者で、どうしてアストロマスクとして俺のサポートなんてやっているかなんて考えたことなかったけど、漠然と俺と同じ人間が何らかの事情があって魔法の力を与えられたんだとは思っていた。
そういう話をもっと早くしてくれれば──魔物の知識とかその都度戦う前に教えてくれれば、俺ももっと上手く戦えたはずなのに。

「私の使命は魔物と戦ってくれている魔法少年をサポートし──その命と心を守ること。焼き殺されるだとか媚薬を飲まされるだとか詳細を聞いたら、君は恐れてしまうだろう?」
「……で、でも……、……ぁ♡」

正直反論は出来ないけどどうしても納得できなくて食い下がろうとすると、長らくお預けをくらっていた下半身にアストロマスクの“それ”が触れて忘れていた快感が舞い戻ってくる。 

「……君は何も気にするな。ただ私に身を委ねていれば良い」
「そ、そんなの……っ、アンタには何もメリットないじゃんか……!ここ、全然大きくならないし……」

普段は俺のことを私の天の川とか呼んで恭しく接してくるけど、言動の割に依然やる気を出す様子のないアストロマスクのそこを見やるとやっぱりあれはただのネタだったんだと思い知らされる。俺だってコイツにそんな感情は持ってないからそれで良い……はずなのに、チリッ、と胸が痛むのはどうしてだろう。

「……初めてを好きでもない奴にやりたくないだろ……?」
「だがこのままだと君は生命力を奪われてしまうぞ?」
「……っ、……べ、別に良い……」

改めて突きつけられた現実に少し怯みながらも、こちらを見つめる真っ直ぐな目から逃げるように視線を落として言う。

「俺が死んでも……困る人いないから……」
「困る人はいない?」

俺の言ったことをわざわざ復唱して、それから「そんなことはないだろう」と続けるアストロマスク。

「他の地区の魔法少年はなにかと私用を優先しがちだと聞くが、君はどんなに忙しそうでも魔物が出たと聞けばすぐに駆けつけてくれるからこの辺りはかなり被害を抑えられている。それに君は、魔物が強いと分かるといなやすぐに私だけ逃がそうとしてくれたじゃないか。さぞ普段でも家族や友人に信頼されてるものと思ったが……」
「……信頼なんて、されてない……」

思わぬ好評価に少しその気になりそうだったけど、いや俺なんかがそんな評価されているわけがない、こいつなりに気をつかってくれてるんだと言い聞かせる。

「……高校生の時に俺が男が好きだってバレてから友達はみんな離れてっちゃったし、母ちゃんは再婚して子供が出来てからは全然連絡してこない……。唯一母方の爺ちゃんだけは優しくて、死ぬ時に学費にって俺に全部お金とか残してくれたけど──それがきっかけで親戚中に恨まれてるし……」

こんなこと、コイツに言ってもしょうがない。だけど一度口からついた思いは止まらなくて、言葉にするとますます今の自分の情けなさが浮き彫りになるようで涙がぼろぼろこぼれてくる。

「俺なんか……俺なんか最初からいなくても良かったんだ……。だから今ここで死んだって誰も──

……っ!」

──困らない。
もう一度そう言いきろうとしたけど形になることはなかった。……徐に重ねってきたアストロマスクの口が塞いだのだ。

「ん……っ、ふ……っ♡」

卑屈な言葉を吸い取るようにちゅ、♡、ぅちゅ、♡と角度を変えながら何度も重ねられるそれにあれだけぼろぼろ溢れていた涙がすぅっと引っ込んでいく。

「……俺なんか、なんて言ってはいけないよ」

なんで今こんなこと、っていうか俺ファーストキス、え、人生最初で最期のキスこいつとなの……?なんて戸惑う俺を置いてけぼりにして、アストロマスクは唇を離すと今度はそこに人差し指を当てて泣いてる子供を宥めるような口調で言う。

「言葉は刃物だとはよく言うだろう。その刃が与える傷はひとつひとつはとても小さいが……だからこそ知らないうちに深い傷を無数につけてやがて君自身を殺す。

──君はこれまで、数々の心無い刃に傷つけられてきたのだろう。だから君だけは、君の心を守ってあげるんだ」
「……!」

──この先君を責めたり悪く言ったりする人が嫌でも出てくる。
──だから君だけは、君を認めてあげないと。

今日ここに来る前に、とある人にもそんなことを言われた。

……今目の前にいる仮面の男の正体なんて考えたこともなかったけど、言動や価値観が似てる人を俺は一人だけ知っている。

「アンタ──……、あなたは、もしかして、」

青みがかった黒髪。
顔の上半分は仮面で隠れているけど残された下半分からもじゅうぶんに感じられる整った顔立ち。
遠くからでも目を引く長身と長い手足。

「それに──君は初めてを好きでもない奴にやりたくないだろうと言ったが、そこに関しては心配いらない」
「え……?」

投げようとした問いかけは、涙の跡に口付けを落とされながら遮られる。

「私は素直でいつも一生懸命で、子供や老人を真っ先に心配する──そんな優しい心を持つ君をずっと前から好ましく思っていた。そんな君に初めてを捧げられて……命も救えるとなったらこんな幸運なことはない」
「……っ、」  

唐突な告白に驚いて一瞬言葉を忘れるけど、すぐにまた未だやる気の出ないアストロマスクのそこが目に入る。

「で、でも……あんたのちんこ全然反応してない……」
「いくらなんでも、無理やりこんな状態にさせられた君が可哀想でな。……初めてがこんな情緒のない場所だというのも萎えてしまう要因かな」

辺りを軽く見渡しながらそう苦笑するアストロマスク。
忘れかけていたけど確かに、ここは愛を囁きあうような場所ではない(そもそも野外だし)。

「しかし君が苦しんでいるのなら情緒などと言っている場合ではない。……まあ他ならぬ君が、私に抱かれるくらいなら死んだ方がマシだと言うなら話は別だがな」

アストロマスクはそう語り続け──最後に自嘲気味に口元だけで笑う。これが数時間前の俺なら、『ああそうだよお前にケツの処女捧げるくらいなら死んでやる!!』なんて噛み付いただろうけど……今はそれとは真逆の感情が芽生えていた。

「……!ミルキーウェイ?」

未だ俺のおしりの穴の前で半勃ちで燻っているアストロマスクのそこを両手でそ、と握る。

「おれ……、あなたにだったら抱かれても良い……」

さっきごしごしと力任せに擦られていたそこが痛そうだったので、握った両手をしゅこ……♡しゅこ……♡♡となるべく優しく動かす。

 「上手く出来ないかもしれないけど……俺の初めて、もらってくれる……?」

俺の頭の少し上にあるアストロマスクの目を見て言う。これ上目遣いってやつだ、俺がやっても可愛くないだろうな……なんて漠然と思いながら返事を待つと、

「……本当に君は──私以外の男にそんな顔をしては絶対に駄目だからな」

そう窘められてやっぱり柄にもなく上目遣いなんてしたのが良くなかったんだとせっかく引っ込んだ涙がまた出そうになったその時、

──むくむくっ♡♡

「……えっ……?」

それまで申し訳程度にしか挿れる意志を持っていなかったアストロマスクのそれが、俺の手の中でさっきとは比べ物にならない程の質量を持ったことに気づいて目を見開く。

「あんた、これ……」
「──どうしようもないな」

思わず顔ごと上げてアストロマスクを見ると、

「媚薬で苦しむ君の姿を可哀想と言って、そう思っているのは本当なんだ。しかしいざ可愛くおねだりなどされてしまうとすっかり舞い上がってしまう」

なんて決まりが悪そうな苦笑いを浮かべていた。

「……良かった……」
「良かった?」
「俺のこと、ほんとにそういう目で見てくれてたんだ……」

夢見心地な気分に身を任せて両足をM字に大きく開いて、両手に握ったアストロマスクのそれを宛てがう。さんざん焦らされてすっかり待ちくたびれたそこがくちゅ……♡といやらしい水音を鳴らした。

「来て……?」
「……っ、ミルキーウェイ……!」

俺に覆いかぶさっていたアストロマスクが、そこからさらにがばっと抱き締めてきてそれと同時にとんでもない質量のものが
ずっ……♡じゅぶぶぶ……っ♡♡
と肉壁を割って入ってくる。

「あっ……!?♡」
「くっ……、すごい締め付けだな……油断するとすぐ達してしまいそうだ……」
「ぁ……♡……別に、イッても良いのに……っ♡」
「せっかく君と身体と……心までひとつになれたのに、そんなあっさり終われるわけがないだろう……!」
「ぅあっ!?♡」

ごりゅごりゅっ♡♡

さっき燻っていた時よりも何倍にも太く長くいきり立ったそれはあっという間に一番奥までやってきて、肉の床にアストロマスクのそこが擦り付けられる度にしっかり出っ張ったカリが俺のイイところを抉り突いてくる♡

「あっ……♡これっ、すごぃい……♡♡」
「ああミルキーウェイ……普段の君も愛らしいが、私の下で乱れる今の君は特に可愛い……。ああ本当に、なんて可愛いんだ、ミルキーウェイ……」
「ゃ……ない……」
「うん?」
「ミルキーウェイじゃ、ない……。あおと……俺の名前、蒼人……、ぁ♡あなたには、本名で呼んで欲しい……」

魔法少年の時の仮の名前で呼ばれているのがなんだか切なくて、へこ……♡へこ……♡♡と腰を揺すりながらそう訴える。

「俺も、あなたのこと好き、だから……」
「……アオト……!」
「あぁあっ!?♡♡」

それまで意地でも出ていくかとばかりに一番奥でぐりぐり♡と擦り付ける程度に留まっていたそこが、俺が名前呼びをねだった途端に何かのタガが外れたみたいにめちゃくちゃに腰を叩きつけてくる。

「アオト……っ、ああ嬉しい……!こんな幸運があるなんて……!私も、私も君が、君だけが好きだよ……っ、愛してる……!」
「あっ♡あっ♡♡俺も、俺もあなただけ、あなただけ愛してる……っ」

下半身でがっちり繋がってるにも関わらず、空いた上半身の少しの距離すら切なくて、夢中で手を伸ばして思ったより逞しい背中にしがみつく。

「アオト……っ、」
「──っ!?♡♡」
「ああイくっ……イくよアオトっ……良いかい?アオトのナカに、私の欲を吐き出しても……っ」
「良い……っ、良いよっ、♡、俺のナカに、全部出してっ♡」

びゅるるるるっ♡♡

アストロマスクの精液が、無防備な俺の中を突き刺すように吐き出される。
 
「はぁ、はぁ……、」
「……は……っ、──アオト、大丈夫か?」

短く息を吐いたのを最後に呼吸を整え終えたらしいアストロマスクが、未だ息も絶え絶えの俺の身体を固い地面から起こして呼びかけてくる。

「ん……、もう平気、みたい」

媚薬を飲まされたばかりの時は背中をさすられるのすら反応してしまったけど、今は同じようにされてもびくともしないしあれだけ苦しめられた身体の火照りや嫌な感じの動悸と目眩もなくなっている。──ヤらなければ治らないというアストロマスクの話は正しかったようだ。

「それは良かった。……ああ、君の白魚のような肌が汚れてしまった」

そう言うと星空が覗く自分のマントを外して俺の身体──主に丸出しになった下半身に巻き付けてくれ、そのまま持ち上げられたと思ったら「失礼」と所謂姫抱きにされる。

「ここから離れなければ……そろそろ外部の者たちが様子を見に来る頃だろう」
「ん……」

媚薬の効果がなくなったので自分で歩けるだろうと思ったけど、強すぎた刺激に俺の下半身はすっかり力が入らなくなっているのが分かるのでこのまま甘えてしまおうと決める。──と、見上げた先に仮面があったので手を伸ばした。

「──どうした?」
「素顔、見たい……」
「ん?ああそうか、仮面をつけたままだった。……素顔も見せずに君を抱いたなんて、なんだか申し訳ないな」
「別にいい……あなたが誰だか、もう分かってるから。外して良い……?」

良いとも駄目とも言われなかったけど、外しやすいようにか少し頭をこちらに傾けてくれたので、それを肯定だと受け取って仮面に手を掛ける。

──というか“あの人”宇宙人だったのか……確かにどこか浮世離れしてる感じはあったな。
──俺も本名は名乗ったけど、ミルキーウェイが大学の後輩の日向 蒼人だって知ってどう思ってるかな。

少し緊張しながらそっ、と仮面を外すと、予想していた通り、仮面の下には俺がずっと片想いしていた大学の先輩・英 誠の端正な顔が──



「──え?」



──現れることはなかった。

「な……、え……?」
「どうした?アオト」

結論から言うと目の前の男は──英先輩じゃなかった。
仮面を外した途端、肌や髪の色や耳の形など、英先輩どころか地球人だと言うのも無理がある風貌に変わっていく。

「ああ……」

戸惑う俺に気づいたのか、目の前の男は俺の手に持たれた仮面をちらりと見やって、

「この仮面には認識阻害の魔法が掛けられていて、見た者の好みの顔が映るようになっているのだが──私の素顔は君の理想を裏切ってしまったかな?」

──この星の人間に姿を変え耳触りの良い言葉で籠絡し……囲ってしまおうとする異星人もいる。
──そういう輩に出会った時、今の君がたった一人で退けることが出来ると思うか?

ふと、この男自身から言われた言葉が思い出される。

何より今、俺がこいつに言いたいことはひとつだけ。




「いや──……



誰だお前!!」




「ははっ、やはり君はそうでないとな。しおらしいのも可愛かったが何か寂しいと思っていたんだ」
「笑って済む問題じゃねぇから!俺全然違う人想像してたんだけど恥ずかしいわ!!ああもう、無駄に美形なのが尚腹立つ!!!」

ただ英先輩と価値観が似てただけ?それともどっちかがどっちかに寄せたの?後者なら別の疑問が色々と生じてくるので問いただす必要が出てくる。

「もう俺お前のこと何も分かんねぇよ……」
「謙遜を。身体まで繋げたのに何も分からないわけはないだろう!」
「言うな色々思い出す!!」

余計なことを言われたせいで少し前の自分の痴態が脳内に鮮やかに蘇ってきて、たまらなくなってその腕から抜け出そうとするけど、問答無用でぐいっ、と胸元に引き戻される。

「分からないことはこれからいっぱい教えてあげる」
と、どこか柔らかくなった口調で落とされたキスを顔中に受けながら、俺は一生コイツには敵わないんだろうと悟った。

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