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騒ぎを聞きつけて、オリバーはメイビス家へと駆け足で向かっていた。
彼の耳に入ったのは、メイビス家が悪魔を呼び出したので、浄化の為に家に火をつけたという事だ。
住民の不満は把握していたが、まさかそこまでするとは。己の不甲斐なさを悔やむように、オリバーは歯嚙みするしかなかった。
メイビス家にたどり着いたのは、陽が落ちた頃だった。そこにはすでに家屋がなくなっており、代わりにあったのは、焦げ目のついた残骸と、その前に倒れこむ人々の姿だった。
その中ただ一人。大柄な人影だけが、その場に佇んでいた。
「こ、これは一体……」
オリバーは恐る恐る近づく。人影の正体であるウルゴが彼に気が付くと、帽子を目深に被り直し、そちらを振り向いた。
「おう。あんた、ここの司祭だな」
「えっと、貴方は……?」
「俺はこいつの護衛だ」
右手の親指で、近くで眠るモモを指し示す。今日、二度も浄化を行った彼女は、サラの魂から帰って来ると、疲労からすぐに眠ってしまった。浄化を受けたサラも目を閉じたままで、彼女の母親であるセティアも同様だった。
「こいつらを休ませてぇんだが、宿は多分難しいだろ? あんたんとこで部屋を借りられねぇか?」
「は、はい。それは大丈夫です」
「よし。んで、そこでのびているのは、ここに火をつけた奴らだ。こいつらはどうする?」
「そ、そうですね。ひとまず、司法機関に連絡して、身元を預かってもらいます」
「そうか。そんじゃ、それは頼んだ」
ウルゴがモモとサラ、セティアを抱え込み、オリバーを一瞥した。
「じゃ、一晩邪魔させてもらうぜ」
ウルゴは教会を目指し、足を進める。残されたオリバーは、改めて倒れこんだ人の方を見る。彼らは皆、鎖で縛られていた。その鎖の元をたどると、大きな棺桶に行き着いた。鎖が解かれた棺桶に、なにやら紋章が刻まれているのが見えると、オリバーは驚愕の表情を浮かべた。
棺桶にはウルゴの額と同様、聖痕が刻まれていた。
彼の耳に入ったのは、メイビス家が悪魔を呼び出したので、浄化の為に家に火をつけたという事だ。
住民の不満は把握していたが、まさかそこまでするとは。己の不甲斐なさを悔やむように、オリバーは歯嚙みするしかなかった。
メイビス家にたどり着いたのは、陽が落ちた頃だった。そこにはすでに家屋がなくなっており、代わりにあったのは、焦げ目のついた残骸と、その前に倒れこむ人々の姿だった。
その中ただ一人。大柄な人影だけが、その場に佇んでいた。
「こ、これは一体……」
オリバーは恐る恐る近づく。人影の正体であるウルゴが彼に気が付くと、帽子を目深に被り直し、そちらを振り向いた。
「おう。あんた、ここの司祭だな」
「えっと、貴方は……?」
「俺はこいつの護衛だ」
右手の親指で、近くで眠るモモを指し示す。今日、二度も浄化を行った彼女は、サラの魂から帰って来ると、疲労からすぐに眠ってしまった。浄化を受けたサラも目を閉じたままで、彼女の母親であるセティアも同様だった。
「こいつらを休ませてぇんだが、宿は多分難しいだろ? あんたんとこで部屋を借りられねぇか?」
「は、はい。それは大丈夫です」
「よし。んで、そこでのびているのは、ここに火をつけた奴らだ。こいつらはどうする?」
「そ、そうですね。ひとまず、司法機関に連絡して、身元を預かってもらいます」
「そうか。そんじゃ、それは頼んだ」
ウルゴがモモとサラ、セティアを抱え込み、オリバーを一瞥した。
「じゃ、一晩邪魔させてもらうぜ」
ウルゴは教会を目指し、足を進める。残されたオリバーは、改めて倒れこんだ人の方を見る。彼らは皆、鎖で縛られていた。その鎖の元をたどると、大きな棺桶に行き着いた。鎖が解かれた棺桶に、なにやら紋章が刻まれているのが見えると、オリバーは驚愕の表情を浮かべた。
棺桶にはウルゴの額と同様、聖痕が刻まれていた。
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