聖邪の交進

悠理

文字の大きさ
上 下
12 / 32

11

しおりを挟む
騒ぎを聞きつけて、オリバーはメイビス家へと駆け足で向かっていた。
彼の耳に入ったのは、メイビス家が悪魔を呼び出したので、浄化の為に家に火をつけたという事だ。
住民の不満は把握していたが、まさかそこまでするとは。己の不甲斐なさを悔やむように、オリバーは歯嚙みするしかなかった。
メイビス家にたどり着いたのは、陽が落ちた頃だった。そこにはすでに家屋がなくなっており、代わりにあったのは、焦げ目のついた残骸と、その前に倒れこむ人々の姿だった。
その中ただ一人。大柄な人影だけが、その場に佇んでいた。

「こ、これは一体……」

オリバーは恐る恐る近づく。人影の正体であるウルゴが彼に気が付くと、帽子を目深に被り直し、そちらを振り向いた。

「おう。あんた、ここの司祭だな」

「えっと、貴方は……?」

「俺はこいつの護衛だ」

右手の親指で、近くで眠るモモを指し示す。今日、二度も浄化を行った彼女は、サラの魂から帰って来ると、疲労からすぐに眠ってしまった。浄化を受けたサラも目を閉じたままで、彼女の母親であるセティアも同様だった。

「こいつらを休ませてぇんだが、宿は多分難しいだろ? あんたんとこで部屋を借りられねぇか?」

「は、はい。それは大丈夫です」

「よし。んで、そこでのびているのは、ここに火をつけた奴らだ。こいつらはどうする?」

「そ、そうですね。ひとまず、司法機関に連絡して、身元を預かってもらいます」

「そうか。そんじゃ、それは頼んだ」

ウルゴがモモとサラ、セティアを抱え込み、オリバーを一瞥した。

「じゃ、一晩邪魔させてもらうぜ」

ウルゴは教会を目指し、足を進める。残されたオリバーは、改めて倒れこんだ人の方を見る。彼らは皆、鎖で縛られていた。その鎖の元をたどると、大きな棺桶に行き着いた。鎖が解かれた棺桶に、なにやら紋章が刻まれているのが見えると、オリバーは驚愕の表情を浮かべた。
棺桶にはウルゴの額と同様、聖痕が刻まれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...