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国王からの依頼
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中ではマイが仁王立ちをして待っていた。傍らには彼女の魔法による人造生命体、種人もいた。
「あたしの研究所へようこそ。本当はあんたみたいな部外者を簡単には入れないんだけどね」
マイの言葉を聞きながら、ハンナは辺りを見渡す。
明らかに外の幹よりも広い空間。空からは陽光のような光が注ぎ、背の高い樹木がそこに向かうように伸びている。研究所というよりは、小さな村という印象を彼女は持った。
「お前のような子どもが、このような場所を作ったというのか?」
「子どもとか大人とか関係ないでしょ」
マイの機嫌があからさまに悪くなる。彼女が子ども扱いを嫌う事は、クーもよく知っていた。
「そ、それよりマイ。必要な物が足りているか確認しとこ? 足りなかったら、買い足さなきゃだし」
「……そうね」
マイがクーの意見に同意すると、隣の種人を撫でながら、改めてハンナを見た。
「言っとくけど、もしも余計な事をしたら、この子があんたを縛り付けるから」
「その程度で、私が捕縛できるとでも?」
「余裕だね」
自信満々なマイに、ハンナから殺気のような気配が漂い出した。それを察したクーは、彼女から離れるようにマイの元へと駆け寄った。
「どうしてさっきから煽るような事を言うのっ」
「気に食わないの。あいつ、最初からずっと、あたしたちの事バカにしてるじゃん」
「それは……」
間違いなかった。ハンナとは国王の間を連れ出される時が初対面だが、その時も彼女は見下すような視線を向けていた。その後はマイが国王を非難するようなことを言ったり、兵士の質を問うような事を言ったものだからうやむやになっていたが、彼女が二人を侮っている事は間違いなかった。
「だって初対面だし、私みたいなただの女の子が勇者って言われても信じられないでしょ」
「信じる信じないの話じゃない。初対面だったからこそ、そういう相手を下に見ている神経が気に食わないっていうの」
「ならば貴様らの力を、この場で見せてみろ」
二人の声が聞こえていたハンナは、腰の剣に手をかけていた。完全に敵意を向けた彼女に対し、マイは「いいよ」と申し出を受け入れた。
「あんた程度、あたし一人で十分。言い訳は聞かないからね」
「ガキが抜かせ!」
言葉を乱しながら、ハンナは剣を抜き、地面を蹴ってマイに迫る。マイはその地面に手を当て、ダークを流し込む。
地面から蔓が伸び、ハンナの足に絡みつく。
「小癪な!」
ハンナが足の蔓に向けて剣を振るう。だがその手にも蔓が伸びて絡みつく。あっという間に四肢を拘束されたハンナに、マイが立ち上がって近づいた。
「はい、おしまい。あっけなさすぎる。これなら道中に出会った魔物の方が歯ごたえがあったね」
マイが手を仰ぐと、絡みついた蔓がそれに従うように、ハンナを地面に叩きつけた。
「ぐぅ!」
地面に突っ伏す形になったハンナは、どうにか起き上がろうと力を入れる。だが絡みついた蔓の力は強靭で、彼女の体はピクリとも動かなかった。
「無駄だよ。ていうか、そもそもこの空間の主に喧嘩を売る時点で、程度が知れてるよね」
「このっ、離せ! 正々堂々戦え!」
「正々堂々でしょ。あたしはあたしの空間であることを利用しただけ。それを理解しなかったあんたが悪い」
第一、とマイはしゃがみ込み、ハンナの顎に手をかけた。
「さっき言ったでしょ? 言い訳は聞かないって」
「このガキめ……!」
忌々し気に睨むハンナに、マイは鼻を鳴らして、その場から離れた。
「帰る時には戻してあげる。暫くそのまま、自分の態度を反省しな」
クーに「行こう」と言って、マイは倉庫である第五樹木を目指す。クーは地面に伏したハンナに視線を向けるが、殺気立った目に睨まれ、咄嗟に逸らしてしまう。
「ご、ごめんなさいっ。出来るだけ早く戻りますからっ」
クーは逃げるようにマイの後を追いかけた。
「ふざけるな! 貴様ら、私を誰だと思っている!」
叫ぶハンナに対し、マイが生み出した種人が近づく。彼は何をするでもなく、ただハンナを見下ろしていた。それが先程のマイを彷彿とさせ、ハンナは奥歯を強く噛み締めた。
「あたしの研究所へようこそ。本当はあんたみたいな部外者を簡単には入れないんだけどね」
マイの言葉を聞きながら、ハンナは辺りを見渡す。
明らかに外の幹よりも広い空間。空からは陽光のような光が注ぎ、背の高い樹木がそこに向かうように伸びている。研究所というよりは、小さな村という印象を彼女は持った。
「お前のような子どもが、このような場所を作ったというのか?」
「子どもとか大人とか関係ないでしょ」
マイの機嫌があからさまに悪くなる。彼女が子ども扱いを嫌う事は、クーもよく知っていた。
「そ、それよりマイ。必要な物が足りているか確認しとこ? 足りなかったら、買い足さなきゃだし」
「……そうね」
マイがクーの意見に同意すると、隣の種人を撫でながら、改めてハンナを見た。
「言っとくけど、もしも余計な事をしたら、この子があんたを縛り付けるから」
「その程度で、私が捕縛できるとでも?」
「余裕だね」
自信満々なマイに、ハンナから殺気のような気配が漂い出した。それを察したクーは、彼女から離れるようにマイの元へと駆け寄った。
「どうしてさっきから煽るような事を言うのっ」
「気に食わないの。あいつ、最初からずっと、あたしたちの事バカにしてるじゃん」
「それは……」
間違いなかった。ハンナとは国王の間を連れ出される時が初対面だが、その時も彼女は見下すような視線を向けていた。その後はマイが国王を非難するようなことを言ったり、兵士の質を問うような事を言ったものだからうやむやになっていたが、彼女が二人を侮っている事は間違いなかった。
「だって初対面だし、私みたいなただの女の子が勇者って言われても信じられないでしょ」
「信じる信じないの話じゃない。初対面だったからこそ、そういう相手を下に見ている神経が気に食わないっていうの」
「ならば貴様らの力を、この場で見せてみろ」
二人の声が聞こえていたハンナは、腰の剣に手をかけていた。完全に敵意を向けた彼女に対し、マイは「いいよ」と申し出を受け入れた。
「あんた程度、あたし一人で十分。言い訳は聞かないからね」
「ガキが抜かせ!」
言葉を乱しながら、ハンナは剣を抜き、地面を蹴ってマイに迫る。マイはその地面に手を当て、ダークを流し込む。
地面から蔓が伸び、ハンナの足に絡みつく。
「小癪な!」
ハンナが足の蔓に向けて剣を振るう。だがその手にも蔓が伸びて絡みつく。あっという間に四肢を拘束されたハンナに、マイが立ち上がって近づいた。
「はい、おしまい。あっけなさすぎる。これなら道中に出会った魔物の方が歯ごたえがあったね」
マイが手を仰ぐと、絡みついた蔓がそれに従うように、ハンナを地面に叩きつけた。
「ぐぅ!」
地面に突っ伏す形になったハンナは、どうにか起き上がろうと力を入れる。だが絡みついた蔓の力は強靭で、彼女の体はピクリとも動かなかった。
「無駄だよ。ていうか、そもそもこの空間の主に喧嘩を売る時点で、程度が知れてるよね」
「このっ、離せ! 正々堂々戦え!」
「正々堂々でしょ。あたしはあたしの空間であることを利用しただけ。それを理解しなかったあんたが悪い」
第一、とマイはしゃがみ込み、ハンナの顎に手をかけた。
「さっき言ったでしょ? 言い訳は聞かないって」
「このガキめ……!」
忌々し気に睨むハンナに、マイは鼻を鳴らして、その場から離れた。
「帰る時には戻してあげる。暫くそのまま、自分の態度を反省しな」
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「ふざけるな! 貴様ら、私を誰だと思っている!」
叫ぶハンナに対し、マイが生み出した種人が近づく。彼は何をするでもなく、ただハンナを見下ろしていた。それが先程のマイを彷彿とさせ、ハンナは奥歯を強く噛み締めた。
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