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1 集団面接会場
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「この黒い物体は何なのだ? 食べれるのか?」
「ケーキよ。私たちの世界にもあったわ」
「ふ、ふん、それでマウントを取ったつもりか? ま、魔王城にだって美味しい物はあったのだからな。オームの肉とか美味かったぞ」
魔王リカリナがチョコレートケーキを前に固まっていた。
剣士やシスター、魔族のような恰好をした者、この世界では敵同士じゃないのかしら。隣にいるにもかかわらず、親しげに会話したりしている。
みんな手に平べったい石とガラスでてきたような何かを持ってるし。
この世界は一体・・・・。
「う・・・・・・・」
魔王リカリナがチョコレートケーキにかぶりついて硬直する。
「どうしたの? 毒でも入ってた? 解毒なら得意よ」
「美味しい、美味しいのだぞ!!!!」
「リカリナ、ケーキはフォークで食べるものなの」
「うぅ・・・なんと美味しい。こんな・・・」
ぼろぼろと涙を流していた。
近くにあったナプキンで、魔王リカリナの手と口を、拭いてあげる。
「た、食べ終わるまで、考えるのを止めるぞ」
「わかったって。ほら、あまりこぼさないで」
「美味しいー」
私、どうして女神の加護を受けた手で、魔王リカリナの世話をしているのかしら?
「ねぇ」
「ん?」
「わー、思わず声かけちゃった。あんたたちめちゃくちゃ可愛いね。マジでゲームキャラみたい。魔王勇者コンビ?」
踊り子のような恰好をした女の子が隣に座った。
「魔王勇者コンビとはなんだ? 私たちは最終決戦が終わって目が覚めたらここにいたのだぞ」
「そうね。当初の予定とはだいぶずれてるけど」
「まだ、わからないではないか。本当にあるのだからな、男のいる世界は」
「はいはい」
魔王リカリナを責めるつもりはない。
私だって、一瞬魔が差したというか、男というものを見てみたかったのにな。
「へぇ、ちゃんと設定まで、練ってるんだ。私もね、お城で人気の踊り子設定なの。この衣装は手作り、似合うでしょ?」
少女がじゃらじゃらとアクセサリーを鳴らしていた。
「まぁ、魔王城に踊り子はいないな」
「踊り子なら、私の街にもいたわ。感謝祭では必ず踊り子が、ステージで踊るの。ステータスアップするから・・・」
「すごい!」
いきなり、がしっと手を掴んできた。
「なんか、ますます気に入った! 最高じゃん! こんな細かい設定持ってくる子始めて見た」
「?」
「私、実は普段ギャルだから、友達にこうゆう異世界ファンタジーものが好きな人がいないんだよね。でも、あんたたちみたいに、ガチ勢って子と会えて本当嬉しい」
「えぇ、うん・・・」
ギャルって何かの職種かしら? ガチ勢って?
別テーブルにある、大きめのガラスのようなものは?
「私、彩夏っていうの。一応、インスタのフォロワーは1万人いる、インフルエンサーって感じかな。あんたたちは?」
「私は勇者ティナ、この子は魔王リカリナで・・・」
「ふわぁ、美味しかったのだぞ。満腹だぞ」
魔王リカリナが口の周りにチョコレートをつけて、こちらを振り返る。
「じゃ、ここを吹っ飛ばして、転生しなおすのだぞ」
「何言ってるの? 止めなさい。そんなことしたら、もうケーキは食べられないわよ」
「イケメン王子がケーキを持ってくる異世界に転生するから問題ないのだぞ。今はちょっと味見してみただけだ」
魔王リカリナが出そうとした魔法を、寸前で止める。
バチッと電流の走るような音がした。
シュウウゥゥゥゥゥゥゥゥ
「!!!」
周囲の人間たちが一斉にこちらを見る。
「こ、小道具まで持ってきてるなんて、本格的ね」
彩夏が手を叩くと、自然と拍手が沸き起こった。
「すごいわ」
「これが異世界カフェよね」
「今のアップしたら絶対再生数伸びたのに!」
「惜しかったわね」
「・・・・・・・・・」
何を言ってるのかさっぱりわからないけど、この世界ではあまり魔法を人前で使わないものなのかしら?
「邪魔するな、勇者ティナ!」
魔王リカリナが袖でチョコレートをぬぐった。
けど、まだチョコレートがついてる。
「私は、女だけの世界に転移するのなんて嫌なのだ。転生して、令嬢になって、ちやほやされたいのだぞ!!!」
「っ・・・・魔王リカリナ、こんなところで」
「うるさい、うるさいうるさいのだ! この場所ごと吹っ飛ばして、今度こそ転生するのだぞ!」
まずいわ。魔王リカリナが一気に魔力を溜めている。
女神の加護を持つ私でも、剣なしでこれだけの人数を守れるかどうか。
いえ、守ってみせるわ。勇者の名に恥じないように・・・。
ガタン
立ち上がって、魔王リカリナの目を見つめる。
「魔王リカリナ、貴女がここを吹っ飛ばすというなら、私も本気でいかせてもらうわ。次こそ、私の手でとどめを刺す」
「憂さ晴らしだ。遊んでやるぞ勇者よ」
「え、え? いきなり始まる感じ? 私のスマホ、カメラが壊れてるの。誰か撮影を!!」
彩夏が周りの子に言うと、シスターの恰好をした少女が、平べったいガラスの塊のようなものをこちらに向けた。
「危ないわ、下がってて」
「すごい、本当に異世界にいるみたい」
「これが異世界コンセプトのカフェなのよ。『リトルガーデン』はその最先端だもの。ガチ勢が混ざってるのもおかしくない。それにしても2人とも、アイドル級に可愛いなんて」
「はぁ・・・私、あの勇者の子のファンになっちゃいそう」
私に加勢するつもり?
こんな魔力の少ない物じゃ、魔王リカリナに敵うわけない。
「この世界の者は馬鹿だな。何を考えてるのかわからないが、全てぶっ壊してやるのだ」
「みんな、逃げ・・・・」
ガタンッ
「あー遅くなってごめん、ごめん。異世界コンセプトカフェ、『リトルガーデン』の支配人の佐久間だ」
すうぅぅぅぅ
魔王リカリナが溜めていた魔力を放出する。
思わず、深呼吸した。
大きめの中年男性が部屋に入ってきた。
男性? 男? 男が・・・。
たぶん、男ね。だって、匂いが違う。
「そうそう。こうゆうコンカフェの運営者って、なんとなく地味な、昔からモテなかった中年男性が多いのよね。客層もそんな感じだから。出会いとか求めるなら期待できないかも」
「・・・・・・・・」
「テンション下がっちゃうのも無理ないよね」
彩夏が爪を触りながら息をつく。
「でも、佐久間さんはこの業界で有名だから、こうやって各地から女の子たちが集まってきてるのよ。今回みたいな、最新技術を取り入れたコンカフェって、初めてだし」
「・・・佐久間さん・・・」
「知らない? あー、インスタもフォローとかしていないとわからないか。募集かけてたの、主にツイッターだもんね。佐久間さんって、もともとゲーム業界でも知名度を上げてるし、コンカフェ用Vtuberアバターの作成も彼が手掛けて・・・」
「あの、男がいるの? この世界」
「え? ま、まぁ・・・」
彩夏がちょっと動揺しながら頷いた。
「・・・・アリね」
「そうだな。アリだ」
魔王リカリナと顔を合わせて、大きく頭を縦に振る。
「か、か、か、かっこいいのだ。佐久間、佐久間というのだな。しかも、男、男がいるのだな。なんて、かっこいいのだ」
ころっと表情を変えていた。
「へ?」
「確かに、彼はかっこいいわね」
「そうなのだ。私はもしかして、想定通りの場所に転移したのかもしれないのだな」
「え・・・」
彩夏が長いまつげをバサバサさせていた。
魔王リカリナがきちんと座りなおした。
女神の加護が私に呼びかける。彼はめちゃくちゃ、かっこいい。
「どうするの? 魔王リカリナ」
「勝負は保留なのだ。この世界で、イケメンにちやほやされる可能性もでてきたのだ」
「えぇ、賢明ね」
溜めていた魔力を、飽和していく。
「かっこいい? ちょっと待って、え? もしかしてデブ専だったりする? キャラづくりだよね? どっち?」
彩夏が戸惑いながら、佐久間さんを凝視していた。
「ケーキよ。私たちの世界にもあったわ」
「ふ、ふん、それでマウントを取ったつもりか? ま、魔王城にだって美味しい物はあったのだからな。オームの肉とか美味かったぞ」
魔王リカリナがチョコレートケーキを前に固まっていた。
剣士やシスター、魔族のような恰好をした者、この世界では敵同士じゃないのかしら。隣にいるにもかかわらず、親しげに会話したりしている。
みんな手に平べったい石とガラスでてきたような何かを持ってるし。
この世界は一体・・・・。
「う・・・・・・・」
魔王リカリナがチョコレートケーキにかぶりついて硬直する。
「どうしたの? 毒でも入ってた? 解毒なら得意よ」
「美味しい、美味しいのだぞ!!!!」
「リカリナ、ケーキはフォークで食べるものなの」
「うぅ・・・なんと美味しい。こんな・・・」
ぼろぼろと涙を流していた。
近くにあったナプキンで、魔王リカリナの手と口を、拭いてあげる。
「た、食べ終わるまで、考えるのを止めるぞ」
「わかったって。ほら、あまりこぼさないで」
「美味しいー」
私、どうして女神の加護を受けた手で、魔王リカリナの世話をしているのかしら?
「ねぇ」
「ん?」
「わー、思わず声かけちゃった。あんたたちめちゃくちゃ可愛いね。マジでゲームキャラみたい。魔王勇者コンビ?」
踊り子のような恰好をした女の子が隣に座った。
「魔王勇者コンビとはなんだ? 私たちは最終決戦が終わって目が覚めたらここにいたのだぞ」
「そうね。当初の予定とはだいぶずれてるけど」
「まだ、わからないではないか。本当にあるのだからな、男のいる世界は」
「はいはい」
魔王リカリナを責めるつもりはない。
私だって、一瞬魔が差したというか、男というものを見てみたかったのにな。
「へぇ、ちゃんと設定まで、練ってるんだ。私もね、お城で人気の踊り子設定なの。この衣装は手作り、似合うでしょ?」
少女がじゃらじゃらとアクセサリーを鳴らしていた。
「まぁ、魔王城に踊り子はいないな」
「踊り子なら、私の街にもいたわ。感謝祭では必ず踊り子が、ステージで踊るの。ステータスアップするから・・・」
「すごい!」
いきなり、がしっと手を掴んできた。
「なんか、ますます気に入った! 最高じゃん! こんな細かい設定持ってくる子始めて見た」
「?」
「私、実は普段ギャルだから、友達にこうゆう異世界ファンタジーものが好きな人がいないんだよね。でも、あんたたちみたいに、ガチ勢って子と会えて本当嬉しい」
「えぇ、うん・・・」
ギャルって何かの職種かしら? ガチ勢って?
別テーブルにある、大きめのガラスのようなものは?
「私、彩夏っていうの。一応、インスタのフォロワーは1万人いる、インフルエンサーって感じかな。あんたたちは?」
「私は勇者ティナ、この子は魔王リカリナで・・・」
「ふわぁ、美味しかったのだぞ。満腹だぞ」
魔王リカリナが口の周りにチョコレートをつけて、こちらを振り返る。
「じゃ、ここを吹っ飛ばして、転生しなおすのだぞ」
「何言ってるの? 止めなさい。そんなことしたら、もうケーキは食べられないわよ」
「イケメン王子がケーキを持ってくる異世界に転生するから問題ないのだぞ。今はちょっと味見してみただけだ」
魔王リカリナが出そうとした魔法を、寸前で止める。
バチッと電流の走るような音がした。
シュウウゥゥゥゥゥゥゥゥ
「!!!」
周囲の人間たちが一斉にこちらを見る。
「こ、小道具まで持ってきてるなんて、本格的ね」
彩夏が手を叩くと、自然と拍手が沸き起こった。
「すごいわ」
「これが異世界カフェよね」
「今のアップしたら絶対再生数伸びたのに!」
「惜しかったわね」
「・・・・・・・・・」
何を言ってるのかさっぱりわからないけど、この世界ではあまり魔法を人前で使わないものなのかしら?
「邪魔するな、勇者ティナ!」
魔王リカリナが袖でチョコレートをぬぐった。
けど、まだチョコレートがついてる。
「私は、女だけの世界に転移するのなんて嫌なのだ。転生して、令嬢になって、ちやほやされたいのだぞ!!!」
「っ・・・・魔王リカリナ、こんなところで」
「うるさい、うるさいうるさいのだ! この場所ごと吹っ飛ばして、今度こそ転生するのだぞ!」
まずいわ。魔王リカリナが一気に魔力を溜めている。
女神の加護を持つ私でも、剣なしでこれだけの人数を守れるかどうか。
いえ、守ってみせるわ。勇者の名に恥じないように・・・。
ガタン
立ち上がって、魔王リカリナの目を見つめる。
「魔王リカリナ、貴女がここを吹っ飛ばすというなら、私も本気でいかせてもらうわ。次こそ、私の手でとどめを刺す」
「憂さ晴らしだ。遊んでやるぞ勇者よ」
「え、え? いきなり始まる感じ? 私のスマホ、カメラが壊れてるの。誰か撮影を!!」
彩夏が周りの子に言うと、シスターの恰好をした少女が、平べったいガラスの塊のようなものをこちらに向けた。
「危ないわ、下がってて」
「すごい、本当に異世界にいるみたい」
「これが異世界コンセプトのカフェなのよ。『リトルガーデン』はその最先端だもの。ガチ勢が混ざってるのもおかしくない。それにしても2人とも、アイドル級に可愛いなんて」
「はぁ・・・私、あの勇者の子のファンになっちゃいそう」
私に加勢するつもり?
こんな魔力の少ない物じゃ、魔王リカリナに敵うわけない。
「この世界の者は馬鹿だな。何を考えてるのかわからないが、全てぶっ壊してやるのだ」
「みんな、逃げ・・・・」
ガタンッ
「あー遅くなってごめん、ごめん。異世界コンセプトカフェ、『リトルガーデン』の支配人の佐久間だ」
すうぅぅぅぅ
魔王リカリナが溜めていた魔力を放出する。
思わず、深呼吸した。
大きめの中年男性が部屋に入ってきた。
男性? 男? 男が・・・。
たぶん、男ね。だって、匂いが違う。
「そうそう。こうゆうコンカフェの運営者って、なんとなく地味な、昔からモテなかった中年男性が多いのよね。客層もそんな感じだから。出会いとか求めるなら期待できないかも」
「・・・・・・・・」
「テンション下がっちゃうのも無理ないよね」
彩夏が爪を触りながら息をつく。
「でも、佐久間さんはこの業界で有名だから、こうやって各地から女の子たちが集まってきてるのよ。今回みたいな、最新技術を取り入れたコンカフェって、初めてだし」
「・・・佐久間さん・・・」
「知らない? あー、インスタもフォローとかしていないとわからないか。募集かけてたの、主にツイッターだもんね。佐久間さんって、もともとゲーム業界でも知名度を上げてるし、コンカフェ用Vtuberアバターの作成も彼が手掛けて・・・」
「あの、男がいるの? この世界」
「え? ま、まぁ・・・」
彩夏がちょっと動揺しながら頷いた。
「・・・・アリね」
「そうだな。アリだ」
魔王リカリナと顔を合わせて、大きく頭を縦に振る。
「か、か、か、かっこいいのだ。佐久間、佐久間というのだな。しかも、男、男がいるのだな。なんて、かっこいいのだ」
ころっと表情を変えていた。
「へ?」
「確かに、彼はかっこいいわね」
「そうなのだ。私はもしかして、想定通りの場所に転移したのかもしれないのだな」
「え・・・」
彩夏が長いまつげをバサバサさせていた。
魔王リカリナがきちんと座りなおした。
女神の加護が私に呼びかける。彼はめちゃくちゃ、かっこいい。
「どうするの? 魔王リカリナ」
「勝負は保留なのだ。この世界で、イケメンにちやほやされる可能性もでてきたのだ」
「えぇ、賢明ね」
溜めていた魔力を、飽和していく。
「かっこいい? ちょっと待って、え? もしかしてデブ専だったりする? キャラづくりだよね? どっち?」
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