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第六章 王都

第167話

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 「うむ、知らぬ事とは言えど、狼藉を詫びるべきじゃろうの。ユーマ様はお優しい方ゆえ、謝罪は受け入れてくれるはずじゃ」

 パリパリに乾く前に一命?を取り止めたウーパー君(仮)改めウーパーちゃんは、シアに介抱されるように抱かれながら何かを訴えているようです。

 「それはおぬしがせねばならぬじゃろうよ?
 我の主人となられたお方に手を上げたのは、他でもないおぬしであろ?先程の威勢はどこにいったんじゃ?」

 どうやらシアに執り成しを頼んで断られた模様。

 「ほれ、もう動けるじゃろ?精霊竜の名を汚す様な真似はするでない」

 シアの言葉に背中を押されたかのように、ふらつきながらもこちらへ向かって来るウーパーちゃん。

 「ユーマ殿…あの、えーと…」

 蚊の鳴くような声で語りかけて来ます。

 「す、すまなかったのだ!吾の負けである!」

 ズビシッ!
 結構な勢いでシアの手刀がウーパーちゃんの後頭部に打ち込まれました。
 わりと痛かったんだろう。短い前足で頭を撫でようとするも届かず。
 …か、かわいいじゃないのさ。

 「これ!なんじゃその態度はっ!ユーマ様は我の主人となられたお方であると申したであろう?
 おぬしは我を蔑ろにするつもりかぇ?
 それであれば、我もそれなりの扱いを致すぞ?」

 「あぅ…しゅ、しゅみましぇん…」

 「ほれ、やり直すがよい」

 再び僕の前に浮かぶウーパーちゃん。

 「す、すいませんでしたっ!
 これでよかろぅ?どうか許してたもれ」

 再び打ち込まれるシアの手刀。
 悶えるも届かないウーパーちゃんの手。
 アレだ。癒しだ。

 「わからぬ奴じゃの。態度を変えよと…」

 「まぁまぁ、シア。そのくらいにしてあげなよ?きっと経験がないから上手く出来ないだけだろうし。
 これ以上やると立ち直れなくなりそうじゃん」

 「むぅ…ユーマ様がそう言われるのであれば、我も吝かではないんじゃが…
 おぉ!そうじゃ!此奴も末席とはいえ我の一族のものじゃ。一族の不始末は長の我が責任を取らねばならぬからして?ほれ、ユーマ様。我を折檻してたも…」

 いや、どさくさに紛れて性癖全開にするなし。
 ウーパーちゃんの表情がえらい事になってるから。

 「しないから。子供の教育に悪いわっ!」

 「あぁん。いけずぅ…が、これもまた良き…」

 …もう、しらん。



 「ユーマ殿。済まなかったのじゃ。
 知らぬ事とはいえ、ルーテシア様の主人たるお方にとんでもないご無礼をしてしもうた」

 「もういいって。それよりこっちこそごめんね?乾かしちゃってさ。
 あんなになるとは思ってなくて…」

「あ、あれはヤバかったのじゃ…精霊竜として生まれ出でて150年、乾き死ぬ思いをしたのは初めてじゃった…」

 あ、結構年上だったんだ…
 シアの醜態を見てか、冷静になればちゃんとしてるあたり、それなりの経験値を持ってるんだね。
 まぁ、シアを見る目が生温くなってるけど。

 「なんかごめん。見なくていいものまで見せちゃって…」

 「う、あ、いや、吾は何も見ておらぬのじゃ。そういう事にしてたもれ。
 そ、そうじゃ!忘れておった!
 ユーマ殿はこんな泉に何用であったのじゃ?吾に会いに来たわけではなかろ?」

 うん、その方針は正解。記憶から抹消した方がいいと思います。

 「あー、うん。ちょっと一晩この泉の辺りを借りて休もうかと思ってさ。
 もし迷惑なら場所を変えるけど、良かったらお願い出来ないかな?」

 「休む?おぉ!それくらいであれば構わぬのじゃ!
 吾もまだ未熟ゆえ、もてなす事は出来ぬが場所くらい存分に使ってたもれ」

 「あ、そう?助かるよ。泉に魚とかいたら少し分けて貰えたら有り難いけど…」

 ウーパーちゃんが主なんだろうし、流石に勝手にするわけにもいかないよね?

 「うむ!絶えぬ程度であれば存分に獲って良いのじゃ!」

 …そんなに獲らないからね?



 ウーパーちゃんの了解も貰えたということで、いつもの様に小屋を展開すると、風羽花に魚獲りをお願いしました。
 たちまち網にいっぱいの魚を捕まえて来る風羽花。

 『主人様!お待たせしましたのですっ!』

 『ありがとうね!風羽花は凄いなぁ!』

 『えへへなのですっ!魚獲りは得意なのですっ!』

 肩に掴まりながら頬擦りしてくる風羽花を、わしゃわしゃ撫でながら食事の支度に向かいましょう。
 他のみんなも慣れたもので、カマドの準備もすっかり出来上がっていました。
 手分けして魚の下処理をすると、網で焼きにかかります。

 「ねぇ、ユーマ君。なんとなく察してはいるんだけどさ、さっきのアレはなんだったんだい?」

 「え?あのウーパーちゃんですか?
 アレ、シアの眷属の水の精霊竜みたいです。この泉の主らしくて」

 「ウーパーちゃん?変わった名前なんだねぇ…
 それで、なんでまたあんな感じになってたんだい?」

 あ、そう言えばウーパーちゃんの名前聞いてなかった。

 「あ、いや、それ名前じゃないです。元の世界にあんな感じの生き物がいまして、それがウーパールーパーって呼ばれてたもので。
 で、彼女?がそんな見た目だったんで…」

 マイラさんに簡単なあらましを説明すると、彼女は大笑いしながら納得してくれました。

 「シアの眷属かなと思えば、あんな事になってたから何事かと思ったよ。
 まぁ丸く収まって良かったねぇ」

 えぇ、心配なのはウーパーちゃんがシアを見る目が生温いままな事だけですわ。
 アレ絶対信頼なくしてるよね。
 まぁ、シアだしいいか…
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