転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第六章 王都

第162話

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 お風呂で解体の汚れを落としサッパリした頃には、日もすっかり沈み、大地の際に薄明かりを残すのみとなっていました。

 急ぎ身繕いをした僕は、みんなに声をかけます。

 「今から晩ご飯の準備しまーす!今夜は暴君山羊タイラントゴートの焼肉食べ放題だからね!」

 以前に少し食べた時の記憶が蘇ったのか、みんなの顔が笑顔になりました。僕も楽しみ。

 色々な部位から塊肉を切り出して、お皿に取り分けます。
 山羊肉って臭みあるイメージだったけど、やはりそこは魔獣なだけあって、心配なさそう。
 薄切りや厚切り、賽の目にと切り方も一工夫してみます。
 味付けはシンプルに塩胡椒、薬味に辛味人参おろしと、丸ネギおろしを用意しました。

 僕が食材を下拵えしてる間に、カマドを用意してくれていたシアからお呼びがかかります。

 「ユーマ様よ。火の加減も良さそうじゃ。そろそろどうかの?」

 「はいはーい。こっちも準備出来たよ。みんな集合!」



 山羊の焼肉、めっちゃ美味しかったです。



 すっかり夜の帳に包まれて、辺りは真っ暗です。
 篝火がそよ風に揺らめくたびに、みんなの影もゆらゆら揺らめく感じが、なんとなくキャンプファイアを思い出して、ワクワクしてしまいますね。

 「ねぇユーマ、アレ見てきたわよ?増築したやつ。なんかいい感じになってるじゃない」

 「そうでしょ?我ながら良い出来だと思う」

 「ベッドもふわっふわね!このスケベ」

 ….おぅふ。
 別にその為とかじゃなく…

 「何言ってんのよ。マイラとナディアがベッドで跳ねてたわよ?凄いわね、アレ」

 何やってんだか…
 けどまぁ、確かに天板に弾力を付けたから、柔らかいのは間違いないんだけど。
 別にその為とかじゃなく…

 「ふーん。そこまで言うならいいんだけどねぇー」


 …そりゃもう凄い事になりました。



 翌朝、柔らかな毛皮布団で目を覚ますと、今までと違って身体が楽でした。いやまぁ多少の疲れはあるんだけども…
 やっぱり広くて柔らかいベッドはいいよね。

 みんなも新しい寝具がお気に召したようで、同衾しなかったエリーヌとナディアも、いつもより良い目覚めだったみたい。
 もちろん、夜の運動会に参加したネル、シア、マイラさんも、いつも以上にツヤツヤしてましたとさ。



 「さあ、昼までに暴君山羊の解体と馬車のメンテ終わらせて、ヨーゼル村に向かおっか」

 みんなに声をかけ、解体台ごと暴君山羊を取り出します。

 昨日の残りを朝食にして済ませた後、解体をシアとマイラさん、ナディア、エリーヌに任せ、僕はグラルと一緒に馬車の整備をする事に。

 「旦那、軸受周りは問題なさそうですがね、この板バネってやつにちょっとばかり錆が浮いてましたぜ」

 「そっか、ありがと。それくらいなら大丈夫だね。
 それよりも、巴を繋いでるハーネスの留めが弱ってるみたいだった。とりあえず留め具を改造しとかなきゃね」

 「了解でさ。そっちは旦那にお任せするしかないんで、あっしは巴ちゃんのケアしておきます。異常があれば報告します」

 グラルはそう言って巴の方に向かいました。

 僕も馬車の車体に戻ると、問題の留め具に再度取り掛かります。
 留め具自体は金属製だったものの、そこにかかる負荷により、歪みと変形があります。気付かず放置してたら、いつか破断してたかも。
 フレームそのものと直接繋がる部分なので、壊れたら大変な箇所のはずです。
 今後の安全性の為に、負荷がかかりやす所に手持ちの鉄材を融合させて、更に魔力で強化しておきましょう。
 いつか、車体そのものを軽くて丈夫な素材に交換しちゃうのもいいかも。
 あ、でもデータが取れなくなっちゃうか…
 とりあえず、連結部分の形状変更は必要事項だと覚えておきますかね。


 馬車のメンテナンスと補修を終え、ひと息ついていると、解体作業についていたエリーヌが、作業終了を伝えに来てくれました。

 「ユーマさん、解体終わりましたわ。収納をお願いします」

 「ありがとう、エリーヌ。流石に汚れちゃったね。出発前にみんなお風呂入っとこうか?」

 「まぁ!それはみなさん喜ばれますわ!わたくしもぜひ!」

 昼までにはまだ時間もあるし、さっぱりしてから出発した方が気分いいよね。
 エリーヌに伝言を頼んで、僕は昼食の支度しとこう。




 天気は晴れ。ただ、ほんの少し涼しい風が吹く。そんな快適な環境の中、馬車は街道へと戻ってきました。
 やはり草の上とは違い、ある程度整備された道は安定して走れます。
 巴も負荷が減って楽になったみたいです。

 「旦那、明るい内に村に着くには、ちょっとペースを上げた方がいいんじゃないですかい?」

 「あー確かに。ちょっとゆっくりしすぎたもんね。近い場所で野営するのも面倒だから、少し急ごうか」

 「了解でさ。巴ちゃん頼むよ」

 そう言いながら、手綱で軽く合図を送るグラルに、少しだけ歩調を早める巴。うん、いい感じだね。

 『巴、その調子で頑張ってね!』

 『はーい!ウチ、頑張っちゃうんだから!ご褒美待ってるねー!旦那様』

 巴にご褒美か…
 何を要求されるのかなぁ…
 次の野営の時は、夜の運動会に巴と騎馬戦する事になりそうです。
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