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第六章 王都
第158話
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気持ち良い晴天の下、爽やかな風が吹く草原の中を馬車は進みます。
マイラさんの話によれば、昼前には街道の休憩所に辿り着き、順調に行けばヨーゼル村まで数時間といった辺りまでは進めるらしいです。
騎士団が余程のんびりしてない限り、今日の内に出会えそうだね。
『巴、調子はどう?キツくない?』
『絶好調だよっ!旦那様!もっと急いでも大丈夫だし!』
『そっか、でもそんなに急がなくても大丈夫だからね。
騎士団と合流したら、今度はゆっくり休めるからさ』
巴もお風呂好きだし、ケイトを引き渡したら、ゆっくり身体をほぐして貰おう。
「グラル、巴も調子良さそうだけど、急がせなくてもいいからね」
「了解でさ。何かあれば報告しますんで、中で寛いでて下せぇ」
グラルと巴に任せて大丈夫そうだね。
出発してから数時間、前を行く銀達から連絡が入りました。
『殿!先に土煙が上がっておりまする。恐らく相当数の集団でござるよ!』
『了解。念のため街道から離れながら戻って来て。銀と蒼、剛と流でペアになって、左右を警戒しておいてね。
騎士団だと思うけど、盗賊とかの可能性もあるから』
まぁ、土煙上げながら来てるってことは、恐らく騎馬の部隊だろうと思うけどさ。
『みんな聞いて。銀から連絡あった。多分騎士団だと思うけど、一応万が一には備えておいてね』
みんなにそう伝え、御者台に座るグラルの隣に移動します。
「グラル。聞いての通り多分騎士団だと思う。念の為速度を落としてゆっくりめに行こう」
「了解でさ。旦那はここで様子見ですかい?」
「そうだね。多分初動が肝心だと思うし」
ペースダウンした馬車の御者台から前方を眺める事しばし、肉眼でも土煙が見えて来ました。魔力眼を発動しながら観察すると、やはり予想通り騎士団です。彼らがクレイドルの騎士団である事を願いましょう。
「そちらの馬車!進軍の妨げである!街道より離れられたし!」
騎士団では一騎の騎士が集団に先行しているようで、こちらに向かって呼びかけながら近づいて来ました。いわゆる露払いみたいなもんかな?
「今脇に寄せます。失礼ながら、騎士様の紀章から察するに、クレイドル騎士団の方々でしょうか?」
「有り難い。左様、我々はクレイドル第二騎士団である。私は第1部隊所属のジム・セオドールと申す。
して、何か?」
「良かった。実は…」
ジムさんに、フランカで出会ったモーム隊長からの依頼を伝えると同時に、馬車の中にいるケイトを呼びました。
「ケイト!!今話を聞いたぞ!すぐ本隊に報告してくるから、こちらの方ともう少し待っていてくれ!
いや、無事で良かった…
誠にかたじけない!では!」
「あっ!ジムさん…」
恐らくジムさんとケイトは、顔見知りだったんだろうね。
というか、なんとなく親しそうな雰囲気だったし。
その彼は、颯爽と馬首を返し、本隊に向け大急ぎで駆けて行きました。まぁ、状況激変だもんね。そりゃ急ぐわ。
「ケイトさん、さっきの方はお知り合いですか?」
「えっ!?あ….はい。今は別部隊なんですけど、幼い頃からの知り合いなんです」
そうなんだ。そりゃありがたい。上手いことケイトを引き取って貰えるようにしないとね。
『ユーマ君、問題なさそうかい?』
『えぇ、大丈夫です。多分この後本隊と合流すると思うので、ケイトを引き取って貰う様に話します』
『頼むわよ!ユーマ!お風呂が懸かってるんだからっ!』
….ブレないねぇ
まぁ、僕もそれには同感なんだけどさ。
それから半刻程で、騎士団本隊と合流する事になりました。
「おぉ!ケイト!本当に無事で良かった!先遣隊としてフランカへ向かったお前を、心から案じていたよ」
「いえ、アベル兄様。私、何の役にも立てなかったんです。心配して下さるなんて勿体無く…」
「いいんだよ、ケイト。私は、ただただお前が無事で嬉しい」
…なんか、もの凄いイケメン騎士が、ケイトを抱き締めながら、2人の世界に入り込もうとしてるよ。
こっちは放ったらかしですか?
「あ、えーと、自分はクレイドル第二騎士団第1部隊副隊長のアービン・トマスと言います。
失礼ですが…?」
癖っ毛が特徴的な青年が、あっちのイケメンをチラ見しながら話しかけてきてくれました。
アレか?凄く苦労性の副官的なやつ?
「あ、申し遅れました、私はユーマと言います。トマスさん、声を掛けて下さってありがとうございます。
放置されてどうしようかと思ってたもので」
「そうですよね。うちの団長がご迷惑をお掛けします。あの人普段は切れ者なんですけどねぇ…いつも、ケイトお嬢が絡むとあんな風になってしまいまして。
とりあえずアレは放っておいて構いませんので、詳細をご説明いただいても?」
「いいんですか?まぁ、それでしたら…」
トマス副隊長は、気さくな感じで話しやすかったので助かります。
フランカ入市から、ここまでの話を簡単に纏めて説明しながら、モーム隊長から預かった書簡を手渡しました。
「本来ならケイトさんの役割だとは思うんですが…」
「そうなんですけどね…あの人が、あんな風になったらしばらく使い物にならないんでいいです。
それよりも、無事にお連れ下さってありがとうございました。
正直な話、大変だったでしょ?ケイトお嬢…」
どうやら、この人もケイトに苦労させられてるクチか?いや、もう1人面倒そうな人もいたか。
話合うかもね。
マイラさんの話によれば、昼前には街道の休憩所に辿り着き、順調に行けばヨーゼル村まで数時間といった辺りまでは進めるらしいです。
騎士団が余程のんびりしてない限り、今日の内に出会えそうだね。
『巴、調子はどう?キツくない?』
『絶好調だよっ!旦那様!もっと急いでも大丈夫だし!』
『そっか、でもそんなに急がなくても大丈夫だからね。
騎士団と合流したら、今度はゆっくり休めるからさ』
巴もお風呂好きだし、ケイトを引き渡したら、ゆっくり身体をほぐして貰おう。
「グラル、巴も調子良さそうだけど、急がせなくてもいいからね」
「了解でさ。何かあれば報告しますんで、中で寛いでて下せぇ」
グラルと巴に任せて大丈夫そうだね。
出発してから数時間、前を行く銀達から連絡が入りました。
『殿!先に土煙が上がっておりまする。恐らく相当数の集団でござるよ!』
『了解。念のため街道から離れながら戻って来て。銀と蒼、剛と流でペアになって、左右を警戒しておいてね。
騎士団だと思うけど、盗賊とかの可能性もあるから』
まぁ、土煙上げながら来てるってことは、恐らく騎馬の部隊だろうと思うけどさ。
『みんな聞いて。銀から連絡あった。多分騎士団だと思うけど、一応万が一には備えておいてね』
みんなにそう伝え、御者台に座るグラルの隣に移動します。
「グラル。聞いての通り多分騎士団だと思う。念の為速度を落としてゆっくりめに行こう」
「了解でさ。旦那はここで様子見ですかい?」
「そうだね。多分初動が肝心だと思うし」
ペースダウンした馬車の御者台から前方を眺める事しばし、肉眼でも土煙が見えて来ました。魔力眼を発動しながら観察すると、やはり予想通り騎士団です。彼らがクレイドルの騎士団である事を願いましょう。
「そちらの馬車!進軍の妨げである!街道より離れられたし!」
騎士団では一騎の騎士が集団に先行しているようで、こちらに向かって呼びかけながら近づいて来ました。いわゆる露払いみたいなもんかな?
「今脇に寄せます。失礼ながら、騎士様の紀章から察するに、クレイドル騎士団の方々でしょうか?」
「有り難い。左様、我々はクレイドル第二騎士団である。私は第1部隊所属のジム・セオドールと申す。
して、何か?」
「良かった。実は…」
ジムさんに、フランカで出会ったモーム隊長からの依頼を伝えると同時に、馬車の中にいるケイトを呼びました。
「ケイト!!今話を聞いたぞ!すぐ本隊に報告してくるから、こちらの方ともう少し待っていてくれ!
いや、無事で良かった…
誠にかたじけない!では!」
「あっ!ジムさん…」
恐らくジムさんとケイトは、顔見知りだったんだろうね。
というか、なんとなく親しそうな雰囲気だったし。
その彼は、颯爽と馬首を返し、本隊に向け大急ぎで駆けて行きました。まぁ、状況激変だもんね。そりゃ急ぐわ。
「ケイトさん、さっきの方はお知り合いですか?」
「えっ!?あ….はい。今は別部隊なんですけど、幼い頃からの知り合いなんです」
そうなんだ。そりゃありがたい。上手いことケイトを引き取って貰えるようにしないとね。
『ユーマ君、問題なさそうかい?』
『えぇ、大丈夫です。多分この後本隊と合流すると思うので、ケイトを引き取って貰う様に話します』
『頼むわよ!ユーマ!お風呂が懸かってるんだからっ!』
….ブレないねぇ
まぁ、僕もそれには同感なんだけどさ。
それから半刻程で、騎士団本隊と合流する事になりました。
「おぉ!ケイト!本当に無事で良かった!先遣隊としてフランカへ向かったお前を、心から案じていたよ」
「いえ、アベル兄様。私、何の役にも立てなかったんです。心配して下さるなんて勿体無く…」
「いいんだよ、ケイト。私は、ただただお前が無事で嬉しい」
…なんか、もの凄いイケメン騎士が、ケイトを抱き締めながら、2人の世界に入り込もうとしてるよ。
こっちは放ったらかしですか?
「あ、えーと、自分はクレイドル第二騎士団第1部隊副隊長のアービン・トマスと言います。
失礼ですが…?」
癖っ毛が特徴的な青年が、あっちのイケメンをチラ見しながら話しかけてきてくれました。
アレか?凄く苦労性の副官的なやつ?
「あ、申し遅れました、私はユーマと言います。トマスさん、声を掛けて下さってありがとうございます。
放置されてどうしようかと思ってたもので」
「そうですよね。うちの団長がご迷惑をお掛けします。あの人普段は切れ者なんですけどねぇ…いつも、ケイトお嬢が絡むとあんな風になってしまいまして。
とりあえずアレは放っておいて構いませんので、詳細をご説明いただいても?」
「いいんですか?まぁ、それでしたら…」
トマス副隊長は、気さくな感じで話しやすかったので助かります。
フランカ入市から、ここまでの話を簡単に纏めて説明しながら、モーム隊長から預かった書簡を手渡しました。
「本来ならケイトさんの役割だとは思うんですが…」
「そうなんですけどね…あの人が、あんな風になったらしばらく使い物にならないんでいいです。
それよりも、無事にお連れ下さってありがとうございました。
正直な話、大変だったでしょ?ケイトお嬢…」
どうやら、この人もケイトに苦労させられてるクチか?いや、もう1人面倒そうな人もいたか。
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