転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第六章 王都

第154話

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 「皆さま!お世話になります!ケイト・ドルクスです!」

 モーム隊長の話についてみんなと協議した結果、伝令の護衛依頼という形式でケイトを預かる事になりました。
 第一・第二騎士団とは、恐らくヨーゼル村に向かう途中で接触出来るだろうという話なので、最悪2泊は一緒かもしれないってのが一番の不満です。
 なにしろ今回は拠点が使えない事に加えて、すれ違い防止の為に街道沿いを離れるわけにいかないので、どうしても不便になってしまうんだよね。
 一応、一般的な野営道具は積んであるので、久しぶりにキャンプを楽しむんだと、前向きに考える事にしましょう。

 「では、護衛の方よろしくお願いします。我々はフランカの封鎖準備にかかりますので、これにて」

 「お役目お疲れ様です。よし、出発しよう!」



 騎士団の見送りもなくフランカ市を後にした僕達は、一路ヨーゼル村目指して馬車を進めます。
 車内はいつもと違って、静かなもんです。

 「あ、あの…ユーマ殿、いつもこの様にお静かなんでしょうか?」

 「いや、いつもはもっと賑やかですよ。今は護衛任務中ですから」

 「あ、え?あの…いつも通りにして下さっても…」

 …無理です。

 「いえ、任務中ですから」

 「…はい」

 ケイトは僅かに抵抗しようとしましたが、最期は諦めたのか、蚊の鳴くような声で呟いてから俯いてしまいました。

 イジメるつもりはないんだけどさ、自分達よりも明らかに若い子をみんなで放置する様子は、側から見ればアウトです。
 でも仕方ないよね。
 だって仲間達にケイトの行動を聞かせると、全会一致で有罪判決だったし。特にエリーヌが辛辣でした。

 「侯爵閣下の血族とはいえ、あまりにも我儘が過ぎるかと。
 己の力量を弁えず、結果的に周囲に迷惑を撒き散らし、その事にすら気付いていないのでしょう。
 その様な輩が正義を語るなど、愚かとしか思えません」

 うん。その通りだね。
 でもリアルな話、そういう人って結構いると思う。

 仲間達の意見もエリーヌに概ね賛成だったから、とりあえず可能な限り関わらないでおこうって事になったんです。

 『なんだか落ち込んだみたいね。ユーマだけでも、もう少し相手してあげなさいよ?』

 『やだよ、面倒くさいし。それに、あんまり構ってヘタに懐かれでもしたら、絶対後々良くない事が起きそうじゃん?』

 『うん、そうだねぇ…ユーマ君の場合、かなりの確率でそうなるんじゃないかい?
 それにしてもだ、これはまた便利だねぇ…』

 便利だよね!僕もこんなに上手くいくとは思いませんでした。

 今、仲間達とはいわゆる思念テレパシーというヤツで会話してます。
 表面上はずっと無言なんだけどさ。



 ケイトと関わらない方針を決めた際、僕達の会話自体も聞かれるべきじゃないって事になりました。
 そりゃそうだよね。結構ヤバい内容とかもあるし、どうしてもウッカリ聞かれたりする可能性があるからね。
 かと言って、みんなと全く話せないと不便なので、ちょっと実験がてらやってみる事にしたんです。

 最初はマイラさんだね。
 イメージとしてまず携帯電話を想像しながら、魔力の線をマイラさんに伸ばして行きます。
 流石に魔力感知の優れたマイラさんだけあって、僕から延びる魔力に気付いてました。一瞬怪訝そうな表情になったけど、そのまま受け入れてくれるみたいで一安心。

 『もしもーし!マイラさん、聞こえますかー?』

 『何かと思ったよ。まさかこんな事が出来るとはねぇ…それより、もしもしってなんだい?』

 『おっ、ちゃんと繋がりましたね。元いた世界に、こんな風に話せる道具があったんですけど、話すときの呼びかけ方なもので、つい習慣で』

 もしもしっていうやつ、思わず使っちゃうよね。

 『へぇ!凄い道具だねぇ…こんな使い方をする意味は良くわからないけど』

 『こんな使い方はしませんよ。もっと遠くにいる人と会話する道具ですし、そもそも声を届ける道具ですから。
 とりあえず、声出せない時に使える様に考えてやってみたんですよ』

 『なるほど。彼女対策かい?
 これで他の人とも同時に話せたり出来たら便利そうだねぇ』

 ふむ、確かに同時通話があれば…
 確かにスカ◯プとかにもそんな機能あったもんなぁ。遠隔地の現場との会議で使った事あったし。

 試しにネルにも繋いでみましょう。

 『何かしてるとは思ってたけど、これ面白いわね!』

 『ネル様の声も聞こえるよ。もっと増やせるのかい?』

 というわけで、仲間達みんなに魔力を繋いでみると、それぞれびっくりしながらも会話に参加してくれました。



 『これってユーマ抜きでも使えるのかしら?出来たらもっと便利よね』

 『会話が全部筒抜けじゃからのぅ。ユーマ様に内緒の話には使えぬしのっ』

 『えぇ…内緒話しちゃうんだ?まぁいいけど。多分、僕が切ったら全部切れるような気がするし』

 なんとなく僕がターミナルになってるのは予想できるしね。
 なので、そのターミナルを僕から切り離して、何かに付与してみたらどうかなと思います。
 えーと…何がいいかな?あ!そうか、魔石!オークのやつがまだ残ってたはず。
 とりあえずしばらく使えたらいいし、そうしよう。
 今後継続的に使おうと思ったら、恐らく魔力含有量を増やさないとダメだろうなぁ…

 今度、ちゃんと魔道具として作ろうと思います。





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