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第五章 フランカ市

第148話

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 どうも僕です。

 …困りました。

 まさかの展開に動揺が隠せません。

 テイム失敗?
 いや、テイムは無事完了したんです。
 3人ともそりゃあ喜んで受け入れてくれました。

 そこまでは良かったんです…

 問題発生したのはその直後でした。



 「じゃあ、名前付けてあげなさいよ」

 …えっ!?

 「ほら、銀の時にも話したじゃない?便宜上付けた呼び名だからって。
 テイムしたんだから、ちゃんと絆を作る上で名付けしてあげなきゃダメよ?」

 …まじすか。想定外。

 「…まさか考えてなかったわけ?そんなはずないわよね?」

 「そのまさかっす…」

 「は?じゃあ考えてあげなさいよね。主人の責任よ?」

 ….うっす。

 勿論考えますとも。考えるんだけどさぁ…

 3人とも、もの凄く期待した目で僕を見てるし。
 助けてマイラさ…目を逸らさないで下さい。
 シア…あからさまに他所を見てる。

 誰一人として目を合わせようとしてくれません…

 ぐむむっ…だってさぁ、名前の元にするネタがないんだもん。銀と同じ銀狼なんだよ?特徴だってそこまで違いが…

 …ん?
 よく見ると3人とも結構違いがあるな。

 耳は他の2人より耳が大きくて、形も綺麗な三角だし、毛色が少しだけ黒っぽい。いや、耳だけじゃないな。耳の辺りから背中にかけて同じ色の筋があるね。
 黒い筋か…線…ライン…帯…!?
 来た!それだっ!!
 黒帯ってどうかな?いや、まんますぎるなぁ…
 黒帯…有段者…強い…剛の者…
 剛!?キタコレ!
 良し決めた!剛(ごう)にしよう。

 次は牙か。
 牙をじっと見つめると、嬉しそうに尻尾をフリフリ。もふもふかわいいです。
 そういえば、3人の中では牙が一番お風呂で和んでたなぁ。毛皮が湯の動きに合わせてゆらゆらするのを、楽しんでいた様に思います。流れに身を任せて…
 流(りゅう)ってなんかカッコいいな。うん、決まり!

 最後は爪だけど…さっきすぐ気付いたんだよね!
 爪の胸の毛皮って、凄く青みがかってるんだよなぁ。
 でも青じゃそのまんまだし、やっぱり厨二っぽく蒼でしょ!
 だから蒼(そう)で決定!

 3人それぞれに違いがあるって事に気付いてなかった僕自身、正直言って駄目だね。なんていうか、3人を一纏めに考えてたんだと思います。反省。

 「名前決まったよ!」

 「あら?意外と早かったわね。ちゃんと考えたのかしら?…って、大丈夫そうね、その顔だと」

 「どういう意味だよっ。まぁいいや、発表しまーっす!
 まずは耳ね。キミは今から剛だよっ。
 それから、牙。キミは流ね。
 最後に爪。キミは蒼。
 それぞれに相応しい名前だって自負してるよ。
 改めてよろしくねっ!」

 そう伝えると、3人とも尻尾のフリフリが加速しました。気に入って貰えたかな?

 『殿!ありがとうございます!我が配下一堂、心より喜んでおりますぞ!
 今後、より一層の忠義を尽くしてお仕え致すでござる』

 「うん、銀も銀狼の能力の活かし方とか、色々教えてあげてね」

 『承知!お役に立つよう励みます』

 にしても、銀達4人でちょっとした戦力だよね。多分あのオークジェネラル位なら、余裕をもって倒せる気がします。

 「ユーマ君、名付けと聞いて動揺してたわりに、随分すんなり決まったね?何か決め手があったのかい?」

 「えぇ。それぞれに個性があるって気付いたんですよ。自分が情けなくなりましたけどね」

 「ふふっ、そうかい。そりゃよかったねぇ!
 ユーマ君は従魔達にとって、良い主人になれたんじゃないかな」

 そうだといいなぁと思います。



 従魔達の能力も確認出来たということで、僕達はフランカへ向かう旅を再開しました。
 相変わらず周りは荒涼とした山岳地帯。景色に変化が少ないのがちょっとつまらないんだけどね。

 「そうだ!ねぇマイラさん、フランカの鉱山ってこの山の中にあるんですよね?」

 「あぁ、それはそうなんだけどねぇ…ただ、正確にこの山の中かどうかはわからないんだ。
 なにしろ坑道の地図は極秘だったからねぇ。入り口の位置はすぐにわかるんだけど、そこからどう延びているのかは全く知らないんだよ」

 「そうなんですね…あ、もしかすると、フランカの街で坑道の地図とか見つかったりしないかな?」

 住人が全て退去してるそうだから、街中探せばあるかもしれないし、最悪中の情報だけでも欲しいなぁ。

 「地図か…そうだねぇ、市長のところと領主代理、それから鉱山頭のところにはあるんだろうけど、一応機密扱いだろうから持ち出されてるかもねぇ…」

 「そっか…まぁ、行ってみたらわかりますよね。とりあえずその三ヶ所は探索決定ってことで」

 「はははっ…気軽に言うねぇ」

 だって廃墟の探索と家捜しは、RPGのお約束ですよね!
 それに、何かしらを勝手に持ち出すつもりなんてありません。勇者じゃありませんので。
 鉱石は持って行くけどねっ!山の石を拾ってもいいでしょ?

 「ユーマ、それも一応クレイドル侯爵の所有物よ」

 「掘り出して収納しとけばわからないじゃん」

 「うっ…確かにそうね。アンタの倫理観がわからなくなってきたわ」

 ネルに倫理観って言われるとは…

 「どういう意味よっ!」

 「いや、だって、ほら、ねぇ…」

 「わ、私はいいのよ、女神様なんだから。私がルールよっ!」

 でた、その理論。
 って言うか、やっぱり多少思い当たる節はあるんだ?別に理屈は間違ってはないんだけどね…


 そんな話をしながら、馬車は遂に峠の頂上まで到達したのでした。
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