転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第五章 フランカ市

第137話

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 …どうも、僕です。
 不可抗力なのに信じてもらえないって、たまにありますよね。
 つらみ。

 ネルとマイラさんが、何か言いたげな顔で見つめてきます。

 この状況で動揺する僕を余所に、隷属魔法は無事に発動し、一瞬ナディアの頭上に魔法陣が浮かぶと彼女の中に吸い込まれていきました。
 と、同時に身体をビクンと反応させるナディア。

「あふっ…やっばいコレ。はぅっ!」

 …あ、逝った?




 「そういうもんなら仕方ないけど…あんたも先に言っておきなさいよねっ!またユーマがなんかしたかと思ったじゃない」

 「だから僕は何もしてないって言ったじゃんっ!」

 「それは悪かったわよっ!でもね、そもそもユーマの日頃の行いが…」

 不当裁判の最中、証人ナディアの証言により、どうにか無罪を勝ち取った僕。
 てゆーか、僕の主張の扱いが軽すぎる…

 ナディアも含め魔族の種族特性として、恋愛中のカップルはお互いに魔力を流し合って、高め合うそうです。
 何をかは聞かないで?
 そうする事によって生殖機能を活性化しないと、魔族同士で子供を作る事が出来ないんだそうで。
 今回、隷属魔法とはいえ僕の魔力を受け入れたナディアは、想像以上に濃い魔力を受けた為、非常に高まったとの事。何がか…割愛。

 魔法発動の後、ぐったりしながら時折ビクビクするナディアを横目に、あらぬ疑いをかけられた僕はネルとマイラさんから、そりゃあもう、変態だの痴漢だの散々な言われよう。
 なんら疚しいところがなかった僕の無罪の主張がほぼスルーされる中、息も絶え絶えなナディアから静止の声が掛からなかったら精神こころが死んじゃうところでした。


 「わかったわよっ!疑ってかかってごめんなさいいっ!コレでいいでしょっ?」

 「アタシも謝るから。ごめんなさいだよ、ユーマ君。ほら、機嫌を直してくれないかい?」

 「へいへい。いいですよっ。どうせそういう扱いなんだから」

 拗ねるでしょ?普通。
 まぁ、そんなに後を引いても仕方ないけどさ。一応やっとかないとねぇ。

 「まだ拗ねてるじゃないっ!もうっ!」

 「いいって。もう許してあげるってば!そのかわり、もっと優しく接してくれるの希望」

 「ぐむっ…わ、わかったわよっ!検討するわよ…」

 そこは検討しないで?僕のハートは優しさを求めています。

 「今度、ネルとマイラさんの番の時に期待しておきます」

 「ユーマ君…それは狡くないかい?そんな言い方されたら逃げ道がないじゃないか」

 「マイラさんは逃げるつもりと…」

 メモを書くフリをしてみます。

 「ちょっ!なんでメモするかねっ!逃げやしないよっ!」

 「はい。逃げやしない、頂きましたー」

 「くっ…逃げないよ。どんと来るがいいさ」

 なんかこういうやり取り好きだわぁ。
 2人には、ちゃんと怒ってない事を伝えて、クギだけ刺しておきましたけど。
 楽しみにしとこうっと。




 こうして、ナディアの奴隷化も無事?に終わり、馬車は順調に峠道を上って行きます。
 そろそろ昼時だけど、まだ森を抜けていないんだよね。とりあえず一度休憩にしよ…

 「旦那!森を抜けますぜ」

 …すごいタイミング。

 ちょうど大木を迂回するようなカーブの先で、森の終わりを示すような明るい光が見えて来ました。

 「いきなり木がなくなるんだ…なんで?」

 「この辺りは鉱山があるって言っただろう?鉱山から掘り出された鉱石は、精錬しなけりゃ使えないからねぇ。
 精錬する為の炉で大量の木材を燃やすから、街に近い所から順に伐採されたってわけさ」

 「わぉ…めっちゃ自然破壊」

 確かに映画とかでもそんなシーンを見た事あるけど、まさかこんなファンタジーな世界で…



 「現実的な話をすれば、炉を使わなくても精錬出来るんだけどね。ただコストに合わないし、大規模に出来るほど錬金術が使える人がいないのさ。
 ユーマ君もわかるだろう?」

 …魔力が保たないとかかな?

 森を抜けた先には、想像していたよりも植生が少ない、岩石地帯が広がっていました。
 岩の隙間から僅かな草が顔を覗かせる程度で、生命の気配が薄い、荒れた環境みたいです。

 結構大きな岩の陰がちょうど良さそうだったので、そこで昼休憩を取る事にして、今は食後の休憩をしています。

 「まぁね。魔力量にも限界あるだろうし、そもそもそんな簡単な魔法じゃなさそうだもんね」

 「そういう事さ。逆に真銀ミスリルやアダマンタイトみたいな魔法金属は、錬金術でしか精錬出来なかったりするんだけどね」

 魔法金属ねぇ。前にえらい事になった記憶が…
 ん?アダマンタイト!?そういえば老師に聞いた事がある。
  …って誰だよ老師!

 「何を考えてるのかわかる気がするねぇ…あまりよろしくないと思うんだ」

 「もう否定っ!?酷くない?」

 「ユーマ君なら多分、アダマンタイトに魔力を流し込んだらどうなるんだろう?やってみよう!ってなるだろう?」

 …図星。なぜわかる。

 「あはっ!その顔だと正解みたいだねぇ。
 いや、本当によろしくないな。アダマンタイトは、ユーマ君が錬成した神銀ゴッド・シルバーと違って、昔からわりとよく知られた特殊な金属なのさ。
 ヒヒイロカネ・オリハルコンには一歩劣るけど、これらと同じく知性のあるインテリジェント素材マテリアルとか生きている金属リビング・メタルと呼ばれるモノだね。
 そんなモノに、ユーマ君の非常識な魔力を流し込んだら…うん、考えたくもないねぇ」

 なにそれ、凄い面白そう!
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