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第五章 フランカ市

第136話

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 朝の身支度と食事をサクッと済ませると、僕達は再びフランカへ向かう道に戻りました。

 馬車を曳く巴もご機嫌な様子。微妙に歩き方に違和感があるんだけどねぇ…

 僕は、手綱を握ってるグラルの横に座っています。
 一応様子は見とかないとね。

 「旦那、わかっちゃいるけど切ねぇよ…」

 「うっ…それ言っちゃう?」

 「それくれぇ言わせてくれてもいいだろ?まぁ、こんだけご機嫌な巴を見てたら、恨む気持ちにゃならねぇし。
 それに、あっしの努力が実る可能性だって無いわけじゃねーと思うからよ」

 グラルが前向きで良かった…



 馬車は順調に進み、徐々に道が坂がちになってきています。
 この道を上ると森を抜けて岩山になるそうで、その岩山の峠を越えた先にフランカの街があるらしいです。

 「…ということは、ナディアもフランカに暫く滞在してたってことかい?」

 「えぇ。オーガ達が中の人を追い出した後、街に滞在しながら魔物の様子とここの鉱山を調査して報告するのが、ワタシの小隊の任務だって聞いてたから」

 「で、実はそうじゃなかったって話だったわけなんだね?」

 マイラさんが、ナディアから話を聞き出しています。
 昨日、ネルも含めた3人でどんな話をしたのかはわからないけど、こうやって色々と話せる位にはお互いを受け入れてるんだろうね。

 「そう。アタシが部隊でもお荷物っぽく扱われてたのは薄々感じてたんだけどね…
 さすがに両親までとは思わなかったわ。
 もし貴方達とユーマさんに出会えてなかったら、 多分ワタシ絶望感で苦しんだままアイツに始末されてた…
 いつかもっと力をつけて、国元の奴等の鼻を明かしてやるんだからっ!」

 「アイツってやっぱり副隊長のバーミルの事だよねぇ?彼は優秀なのかい?」

 「うん。凄く優秀だったわ。
 ワタシ達の国でも人族の国と同じ様に貴族階級が優遇されるから、その環境の中で特殊部隊の副隊長にまで上がるのは大変だと思う。アイツ一般民だったはずだから」

 そう語るナディアの顔は、悔しそうな表情をしてる。きっと実力では敵わないってわかってるんだろうな。

 「マイラさん、横からごめんね。マイラさんは冒険者として魔族の国に行った事ないの?」

 「え?あぁ、魔族の国には行ってないんだよねぇ。
 そもそも、魔族の国には冒険者ギルドがないのさ。だから、魔族の国に入る様な依頼はまず無いんだよ。
 噂では、傭兵団みたいな似た様な組織はあるらしいけど、少なくとも冒険者ギルドとの連携はなかったはずだしねぇ」

 「傭兵団はあるわ。人族の冒険者ギルドと似てるけど、もっと殺伐としてたかな。
 冒険者ギルドには行った事あるけど、やっぱり助け合う事が勧められてるでしょ?傭兵団はもっと競争って言うか、みんな敵みたいな雰囲気なのよ。
 一応、個人で対処出来ない魔獣なんかには、団員が集まって討伐したりする事はあるけど、基本的にそれ以外はバラバラに行動してるはずだわ。
 ワタシも詳しくないんだけど…」

 なんて言うか、種族的な差なのかな?個人主義がかなり徹底してる感じがする。

 「僕からすると、団として集まる意味があるのかなって思うけどなぁ。別に必要なさそうじゃない?」

 「一応、傭兵団同士で報酬支払いとか買取とかの共通ルールがあって、互いに団員の活動に便宜を図るとかはやってるわ。
 それに傭兵団長は、活躍度合いで順位がつけられてて、それに応じて国から報奨金が支給されるのね。
 その代わり、もし仮に他の団の活動を意図的に妨害すると、最悪の場合団長は死刑にされちゃうみたい」

 凄いな…殺伐とするのも頷けるかも。

 「それで、傭兵団は軍隊が動くには割に合わない魔獣討伐なんかを請け負ったり、あとは一般民では対処しきれない討伐の依頼を受けて団員が動くんだけど、団員の中にも団長と同じ様に順位を付けてあるから…」

 「そりゃ殺伐とするね。ありがとうナディア。勉強になったよ」

 「ううん、こんな話でもユーマさん達の役に立って良かった!ワタシのわかる事なら何でも話すから、遠慮しないで訊いて欲しいなっ」

 …なんていうか、かわいい。
 クール系美人が、頬を赤らめながら両拳をぎゅっと握って訴えてくるのって反則じゃない?

 「ユーマ君?ナディアを気に入ったのはわかるんだけど、君は美人に弱すぎやしないかい?
 いつか悪い女に引っかかりそうで心配だよ」

 「確かに不安ね。マイラも目を光らせておきなさい?ユーマも、勝手な行動しないのよ!」

 「わかってるって!ネルもマイラさんも頼りにしてるからさ。
 で、話は変わるんだけど、ナディアに奴隷化魔法を使うって話はどうなったの?」

 ネルとマイラさんの口撃は苦手です。

 「…露骨に逃げたわね。まぁいいわ。それも大切な話だし」

 「ほんとにそうですねぇ…全く。
 その件ならナディアも了承してくれてるよ。だからグラルと同じ様に奴隷化じゃなくて、隷属魔法で十分だと思う。
 その代わり2人とも目印になる何かを考えておいてくれないかい?」

 「うっ…マイラさんまで…まぁいいや、目印は考えてみるよ。
 そしたら、サクっと済ませちゃうね。ナディア、いい?」

 そう問いかけると、にっこりしながら頷くナディア。
 僕は、魔力を集中すると隷属の契約を思いながらナディアの肩に手を置きます。
 魔力が流れ込むと、何故か顔を赤らめるナディア。…え?

 「んっ…くっ!…はぁん!」

 …なんすかっ!?

 「き、気持ちいい…んふっ!」

 …え?えっ?なんもしてないっす!?だからそんな目で見ないでくれませんかね?
 ネルとマイラさんの視線が…




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