転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です

こうたろう

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第五章 フランカ市

第135話

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 背後からやってきたネルが、僕の隣に座りました。

 「ユーマは私がこんなだから、面倒とか思ってるかもしれないけどさ…
 私は、こっちに来たのがユーマで良かったって思ってるから」

 「え?間違えて連れてきたんでしょ? 」

 「うっ!?そ、それはそうなんだけど…でも…」

 真顔で返すと、途端に狼狽える女神様。

 「あはははっ!冗談だよっ!大丈夫。
 間違えられた事なんて気にならないくらい楽しいし、今じゃ間違えてくれてありがとうって思ってるんだから。
 たださぁ、こんなに素敵な美人達に囲まれて過ごした経験とかなかったからね。正直なところ落ち着かないかな」

 「それなら良かったけど…ほんとはイヤな思いさせてるかもって。
 でも、美人に囲まれてんのは自業自得よ?
 まぁ、増やそうとしてるわけじゃないのは知ってるけど、たまに疑いたくもなるわ」

 そこは疑わないで欲しいです。

 「とは言っても、みんな色々と助けになってるのよね、私とエリーヌ以外は」

 「エリーヌは否定出来ないけどネルは違うよ?
 ネルがいなかったらきっと色々とやらかして、今頃檻の中か地面の下に居るんじゃないかな。
 だから僕にとってネルは、サポート役っていうよりも、なんていうかパートナー?的な位置なんだよね」

 「パートナーか…って、パ、パ、パートナー!?
 なによぅ…そんな俺の嫁的な事言われたら…」

 …そこまで言ってないっす。

 「と、ともかくっ!ユーマがそんな風に思ってくれてるってわかって良かったわっ!
 じ、じゃあ、わた、私はもう行くわねっ!」

 真っ赤になった顔を見られるのが恥ずかしかったのか、少し俯き加減でそう言うと立ち去るネル。
 振り返り際にちらっと見えた口元が緩んでたのには、気づかなかったフリをしてあげた方がいいよね。
 僕自身、伝えた言葉でネルが喜んでくれたのが嬉しいし。

 ネルの後ろ姿を見送る僕。…あ、転んだ。



 湯上りの火照りを冷まして、小屋の寝室に戻った僕をベッドの上で迎えてくれたのは、シアと巴でした。

 「ユーマ様よ。ネル様から巴のサポートをするように言付かっておるのじゃ。
 なんでも、プラムの宿ではお預けしたそうじゃなぁ」

 …なんつー言い方するかな。否定出来ないけど。

 「旦那様!あの、ウチ、ずっとずっと待ってたから…」

 「と言うわけじゃ。ユーマ様、我も途中まで手伝ってやるゆえ、巴をオンナにしてやってくれるかの」

 「えーと…シア、いらないから…」

 見られながらとか、そんな難易度高い事は出来ません。

 「はぅっ!!まさかの展開なのじゃぁ…」

 「ほら、早く出て。邪魔だから」

 「くはっ!この肩透かし感はくるのじゃぁ…」

 1人で感極まるシアを追い出すと、緊張してる雰囲気の巴の横に座ります。
 普段は結構アピールしてくる巴も、さすがにいざとなると、何時も通りにはいかないみたいだね。
 それでも約束した事でもあるし、責任は果たさないとなぁ。

 「巴、いつも頑張ってくれてありがとね。巴が仲間でいてくれて凄く良かったって思ってる。
 …待たせてごめんね?」

 「旦那様、ウチ…」

 元気娘のイメージがある巴が、潤んだ目で見てくる姿にはグっと来るものがありました。

 …馬に馬乗りされたし。

 翌日、窓から射し込む朝陽に目を覚ますと巴の姿は既になく、僕は全身筋肉痛。何故かは秘密です。
 暴れ馬を手懐けて乗馬訓練するのを夜通しするのは、絶対お勧め出来ません。と、だけ言っておきましょうかね。




 あちこちから鈍い痛みが襲ってくるので、寝転んだままいつもの回復のイメージで、全身に魔力が行き渡るようにゆっくり動かしていくと、徐々に痛みが引いて行くのが実感出来ました。
 それと同時に、痛みの引いた場所の筋肉が元より大きくなったような気がします。ん?コレって超回復ってやつ?
 となると、限界まで筋トレして回復するのを繰り返したら、あっという間にゴリマッチョ?いや、そこまではやり過ぎだけど、もう少しだけ筋肉質な細マッチョ位に…

 「バカ。そんな事したら死ぬわよ?食べながらやるならまだしも」

 いつの間にか枕に座ってたネルから驚きのセリフです。

 「え?まじか。でも、なんでよ?」

 「簡単な話じゃない。栄養不足になるのよ。無理矢理身体中から筋肉の素になるモノを集めてきちゃうんだからね?
 例えば、内臓とか筋肉じゃない部分がごっそり削られて、下手したら無くなってしまうわ。
 全身ムキムキで中味空っぽの死体の出来上がり」

 うわぁ…

 「もし、どうしてもやりたいなら、バランスよく食べてからやる事ね。それでも安全だとは言えないけれど」

 「いや、やめとく。でも、普通に鍛えるよりは効率いいのか。焦らずゆっくりやる位にしとこ」

 「急に身体だけ大きくなったって、動かし方に慣れるまではマイナスになるから、気をつけなさいね」

 なるほど、ネルの言う通りかも。
 それに現実的な話、力が必要な時は魔力強化すれば済むんだよね。筋肉増強は見た目だけかぁ…

 「普通は違うわよ?強化魔法でも、元になる筋力が強い方が当然最大値が高いんだし、強化を使わずに力がある方が何かと都合いいんだから。
 元の筋力関係なく、どこまでも強化出来るアンタが異常なだけ」

 「あ、やっぱり?って事はさ、ある程度筋肉は付けといた方が、いざ強化した時に目立たなかったりするんじゃない?」

 「そうね。多少は筋肉付けておく方が、側から見た時の違和感は少なくなるんじゃないかしら。
 あと、強化魔法が得意って話にも真実味が増すと思うわ」

 よし、そういう事なら地道に鍛えよ。



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