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第五章 フランカ市
第131話
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僕達は、とりあえずバーミル君を迎え入れ、座って話を聞く事にしました。
当事者のナディアさんは、動く気力すらない程に焦燥してるので、ベッドに寝かせておきましょう。
「お待たせ。じゃあ聞かせて貰おうかな」
「わかりました…」
バーミル君の説明は、意外なものでした。
まず魔王国としては、人族国家との全面戦争などは一切考えてないらしいです。実際、魔王国内では魔物や魔獣が活性化して、各地にバカにできないレベルの被害が出ているそうで、戦争どころではないみたい。
今回のフランカやプラムでの出来事には関与しているものの、その目的自体は魔物の制御実験で、襲撃自体は魔物の自発的な行動なんだって。
確かに、ヒトを襲わない様に制御出来たかどうかなんて、明確に判断出来ないわけで、それ以外の部分で命令を聞かせてみないとわからないよね。
要は、リスクのある実験を自国内では行う訳にはいかないという事で、極秘裏に他国で行なったという話だ。
制御実験自体は概ね成功で、当初の命令については目論見通りになったそう。何を命令したのは機密扱いらしくて教えてもらえなかったけどね。
だから、国内の魔物の制御も遠い先の話にはならないだろうという事だった。
「我々の行いで被害を受けた方には申し訳ないとは思ってますけど、まぁ他国の話なんで、ご理解を頂けるとありがたいです」
「個人的には、国に所属してるわけじゃないし、国家犯罪なんて大抵そんなもんだからさ。
被害者の気持ちは別にしても、わからないわけではないよ。
でも、可能ならもうやらないで欲しいかな」
「あ、実験はもう完了してるんで、ウチとしてはやらないはずです。
ちなみに明確な物証はないと思うんで、多分魔王国側から補償とか賠償はしないと思います。
魔物災害って扱いにして貰えるのが一番じゃないすかね」
そうだよなぁ…プラムのオーク襲撃だって焼印っていう証拠はあるけど、あれはあくまでも飼育実験場から逃げ出したって事実の証拠であって、短期間で進化させたのが魔族である証拠はないし、今のバーミル君の説明だって、王国の上層部が直接聞いたわけじゃない。
ナディアさんはある意味証拠なんだけど、彼女が受けた命令は、フランカに潜入して被害状況を調べて報告する事だそうから、襲撃事件の証拠としては弱い。
うーん…なかなか上手いこと考えてあるなぁ。
きっと僕の証言も、そこまで重要視されないだろう事まで考えて話してくれてるはずだし。
「という事で良いでしょうか?自分そろそろ原隊復帰しますので、お暇させて頂きたいです。
あ、元隊長の件は、本当に先程お伝えした通りですので」
「あぁ、それについては了承したから。
じゃあ、気をつけてってのもおかしなセリフだから無事を祈るよ。
機会があれば、またいつかどこかで」
バーミル君は、小屋を出ると変化を解いたようで、ナディアさんと同様の羽根を広げ飛び立ちました。
さっき僕達に勝てる気がしないって言ってたけど、変化を解いた後に彼から感じた圧力からすると、こっちもそれなりの覚悟をして戦わないとダメだろうな…
穏便に済ませるつもりでいてくれて良かったです。
バーミル君を見送った頃にはすでにもう辺りは真っ暗で、すっかり夜になってました。
こりゃ晩御飯は手抜きするしかないね。
とりあえずカマドを組み上げて、ストックしてた野草のスープと平パンを温めます。
あとは金網で手持ちの肉を焼くだけにして、
晩御飯を済ませてしまいましょうかね。
有り合わせの物で空腹を満たしたら、久しぶりのお風呂タイムです。
魔導給湯器のおかげで、か準備は起動スイッチ一つなのは、こういう時ほんとにありがたいです。
湯が溜まるのを待つ間に、ナディアさんの様子を見ておこうとベッドに向かうと、マイラさんとネルが先に来てました。
ナディアさんは少し回復したようで、ベッドの上で膝を抱えて座っています。それでも精神的ショックは抜けていないらしく、表情は虚ろなまま、遠い目でどこかをぼんやりと眺めてます。
これはちょっと重症かなぁ…
「あ、ユーマ。良いところに来たわね。この子このまま放置したら、多分精神的にマズイ感じになりそうなのよ。
ユーマの回復魔法なら、そっちに作用させたりも出来るような気がするからさぁ、ちょっと試してみてくれない?」
そっか。普通の回復魔法だと精神的ダメージは回復出来ないもんね。
まぁ、僕だって出来るかどう知らないけどさ。
「ユーマ君。全快させるのは難しいかもしれないけど、なんとか試してみてくれないかい?
気持ちが高揚するだけでもいいと思うんだ」
「うん。わかった。試してみるよ」
マイラさんの助言もあって、なんとなくやれそうな気もするし、きっといつか使う可能性もあるしね。
ナディアさんが受けたショックって、多分、親からも所属してた軍からも見捨てられた事による、絶望的な孤独感じゃないかなと思うんだよね。
だから、なんていうか愛情に包まれてると思う事が出来たら、状態も改善するんじゃないかな…
うーん…なんか怪しい催眠術みたいだなぁ。
でも結局の所、精神療法には催眠術って有効、みたいな話を聞いた事あるような気もするし…どうしよう?
当事者のナディアさんは、動く気力すらない程に焦燥してるので、ベッドに寝かせておきましょう。
「お待たせ。じゃあ聞かせて貰おうかな」
「わかりました…」
バーミル君の説明は、意外なものでした。
まず魔王国としては、人族国家との全面戦争などは一切考えてないらしいです。実際、魔王国内では魔物や魔獣が活性化して、各地にバカにできないレベルの被害が出ているそうで、戦争どころではないみたい。
今回のフランカやプラムでの出来事には関与しているものの、その目的自体は魔物の制御実験で、襲撃自体は魔物の自発的な行動なんだって。
確かに、ヒトを襲わない様に制御出来たかどうかなんて、明確に判断出来ないわけで、それ以外の部分で命令を聞かせてみないとわからないよね。
要は、リスクのある実験を自国内では行う訳にはいかないという事で、極秘裏に他国で行なったという話だ。
制御実験自体は概ね成功で、当初の命令については目論見通りになったそう。何を命令したのは機密扱いらしくて教えてもらえなかったけどね。
だから、国内の魔物の制御も遠い先の話にはならないだろうという事だった。
「我々の行いで被害を受けた方には申し訳ないとは思ってますけど、まぁ他国の話なんで、ご理解を頂けるとありがたいです」
「個人的には、国に所属してるわけじゃないし、国家犯罪なんて大抵そんなもんだからさ。
被害者の気持ちは別にしても、わからないわけではないよ。
でも、可能ならもうやらないで欲しいかな」
「あ、実験はもう完了してるんで、ウチとしてはやらないはずです。
ちなみに明確な物証はないと思うんで、多分魔王国側から補償とか賠償はしないと思います。
魔物災害って扱いにして貰えるのが一番じゃないすかね」
そうだよなぁ…プラムのオーク襲撃だって焼印っていう証拠はあるけど、あれはあくまでも飼育実験場から逃げ出したって事実の証拠であって、短期間で進化させたのが魔族である証拠はないし、今のバーミル君の説明だって、王国の上層部が直接聞いたわけじゃない。
ナディアさんはある意味証拠なんだけど、彼女が受けた命令は、フランカに潜入して被害状況を調べて報告する事だそうから、襲撃事件の証拠としては弱い。
うーん…なかなか上手いこと考えてあるなぁ。
きっと僕の証言も、そこまで重要視されないだろう事まで考えて話してくれてるはずだし。
「という事で良いでしょうか?自分そろそろ原隊復帰しますので、お暇させて頂きたいです。
あ、元隊長の件は、本当に先程お伝えした通りですので」
「あぁ、それについては了承したから。
じゃあ、気をつけてってのもおかしなセリフだから無事を祈るよ。
機会があれば、またいつかどこかで」
バーミル君は、小屋を出ると変化を解いたようで、ナディアさんと同様の羽根を広げ飛び立ちました。
さっき僕達に勝てる気がしないって言ってたけど、変化を解いた後に彼から感じた圧力からすると、こっちもそれなりの覚悟をして戦わないとダメだろうな…
穏便に済ませるつもりでいてくれて良かったです。
バーミル君を見送った頃にはすでにもう辺りは真っ暗で、すっかり夜になってました。
こりゃ晩御飯は手抜きするしかないね。
とりあえずカマドを組み上げて、ストックしてた野草のスープと平パンを温めます。
あとは金網で手持ちの肉を焼くだけにして、
晩御飯を済ませてしまいましょうかね。
有り合わせの物で空腹を満たしたら、久しぶりのお風呂タイムです。
魔導給湯器のおかげで、か準備は起動スイッチ一つなのは、こういう時ほんとにありがたいです。
湯が溜まるのを待つ間に、ナディアさんの様子を見ておこうとベッドに向かうと、マイラさんとネルが先に来てました。
ナディアさんは少し回復したようで、ベッドの上で膝を抱えて座っています。それでも精神的ショックは抜けていないらしく、表情は虚ろなまま、遠い目でどこかをぼんやりと眺めてます。
これはちょっと重症かなぁ…
「あ、ユーマ。良いところに来たわね。この子このまま放置したら、多分精神的にマズイ感じになりそうなのよ。
ユーマの回復魔法なら、そっちに作用させたりも出来るような気がするからさぁ、ちょっと試してみてくれない?」
そっか。普通の回復魔法だと精神的ダメージは回復出来ないもんね。
まぁ、僕だって出来るかどう知らないけどさ。
「ユーマ君。全快させるのは難しいかもしれないけど、なんとか試してみてくれないかい?
気持ちが高揚するだけでもいいと思うんだ」
「うん。わかった。試してみるよ」
マイラさんの助言もあって、なんとなくやれそうな気もするし、きっといつか使う可能性もあるしね。
ナディアさんが受けたショックって、多分、親からも所属してた軍からも見捨てられた事による、絶望的な孤独感じゃないかなと思うんだよね。
だから、なんていうか愛情に包まれてると思う事が出来たら、状態も改善するんじゃないかな…
うーん…なんか怪しい催眠術みたいだなぁ。
でも結局の所、精神療法には催眠術って有効、みたいな話を聞いた事あるような気もするし…どうしよう?
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