129 / 170
第五章 フランカ市
第127話
しおりを挟む
あっという間に岩トカゲの群れを殲滅させたマイラさんは、魔法の余波で吹く風に髪を靡かせながら戻ってきました。
あ、凄いいい笑顔だわ。
「どうだい?ユーマ君。見てくれたかい?」
「めっちゃカッコ良かったですよ!マイラさん!
もう、なんていうか、惚れ惚れしました!」
「うふふ。そうだろう?これもユーマ君のおかげさ」
馬車に乗り込んだマイラさんは、風で乱れた髪と衣服を手早く整えながらそう言います。
「昔のアタシは、こんな規模の魔法なんて使えなかったのさ。
ユーマ君と知り合って、キミの非常識な魔力運用と考え方を知ったからこそ、今みたいな威力の魔法を使えるようになったんだ。
それに、魔力の消費効率が格段に向上したからね。以前のアタシなら魔力枯渇で昏倒ものだよ」
さりげなくディスられた様な気がしないでもないけど、マイラさん的には認めてくれてるのかな?そう信じたい…
「それよりも気になるのはさ、こんな草原地域にいる様な魔獣じゃないんだよ。岩トカゲってやつは」
「旦那。あっしも驚きましたぜ。あいつらはもっと岩がゴロゴロしてるような荒地や岩山で出くわす魔獣ですわ」
「やっぱり、例のオーガとトロルの集団のせいなのかな?」
マイラさんもそう予想していたようで、頷きながら話してくれます。
「アタシもその可能性が高いと思う。
まだフランカを占拠してるのかはわからないけど、少なくとも聞いてる限りの規模の集団なら、そいつらの食糧だってかなりの量が必要になるはずさ。そうなれば、周辺に狩りに出てる可能性は低くないはずだよ。
恐らくさっきの岩トカゲも、ナワバリを侵されて逃げて来たんじゃないかな」
うん。多分そうだよね。逃げて来たのか、獲物不足で餌を求めて移動して来たのかまではわからないけど、同じ地域の捕食者密度が上がったのは間違いないからなぁ。
って事は、この先も通常と違う様な敵と遭遇する可能性もあるって話で…意外な素材が入手出来たりしてね。
あ、そうだ。岩トカゲの素材を拾わないと。
「マイラさん、岩トカゲって使えるの?あと、美味しい?」
「あはははっ!流石ユーマ君だねぇ。
岩トカゲは皮を防具に使う事があるよ。でもまぁ、特別いい材料ってわけじゃないかな。
肉は…それなりだね。よく鳥の肉に似てるとか言われるかな。脂身はほとんどなくて淡白な味らしいよ。
ちなみにさっきの指揮個体は亜種のようだったから、普通の岩トカゲとほぼ同じだね。皮も穴だらけにしてしまったから使い物にはならないかな」
うーむ…そうかぁ。普通の個体は粉々だし、とりあえず指揮個体の2匹だけ回収してみますか。
一応食べてみたいし。
そんなわけで、サクッと回収を済ませて再び馬車を進めます。
岩トカゲを倒した後、不思議と道が穏やかで激しい揺れが無かったのに、ワザとらしくネルに倒れこんだりしてね。しっかり堪能させて頂きました。
ネルの機嫌も改善したからいいんです。
「この前よりも長く使えたわね。やっぱり魔力を貯める方がいいみたい」
「しばらく使ってなかったら沢山貯まってたんだね。またしばらく貯めとかないと」
「それならば今夜の風呂は、我とマイラで楽しませてもらうかの。ふふふっ」
シアとマイラさんがお互い笑い合ってます。
「ふぁっ!?しまったー!それを忘れてたわ…なんて単純なミスを…」
再びミニサイズに戻ったネルが、馬車の床を叩きながら悔しがっています。
「ユーマ?あんた絶対気付いてたでしょ?なんで言ってくれないのよぅ…」
「いやさぁ、だってほら、お風呂のネルを期待してるよって宣言するようなもんだしさ。言いにくいって」
「ぐぬぬっ…それは確かにそうなんでしょうけど…」
そんな血の涙でも流しそうな顔で言われましてもねぇ…
「ネル様の負けじゃな。くふふっ」
「ぐはっ!まさか駄竜如きに…いいように言われるとは、なんたる不覚」
「まぁまぁ、落ち着いて?ネル。また沢山魔力込めとくからさ、そしたら今度は2人きりで入ればいいじゃん」
その瞬間、がばっと音がしたかと思う位の勢いで顔をあげたネル。
「うふふふふっ…聞いたわよ?ユーマ。みんなも聞いたわよね?
うひひひ…やったわっ!いただきよっ!必ず実行させるから」
…おぃ、こら女神様。なんて悪い顔するんだよ?みんなドン引きしてるからね?
「のぅ、マイラよ。ちとやり過ぎたかの?」
「そうだねぇ、まさかの反応だよ。これがあのネールドリア様かと、疑うレベルじゃないかい?」
はい!そこ!警告!
まぁ、ネル本人はトリップ中で聴こえてないだろうけどさ。
とばっちりはゴメンだよ?
「わたくしの扱い…」
あ、こっちもトリップ中だった…
こうして賑やかなまま順調に馬車は進み、徐々に日が暮れ始めて来ました。そろそろ休憩時間かな。
「旦那、目隠しに良さそうな林がありますぜ?あの辺りでどうですかい?」
休憩ポイントを探す様にお願いしてたグラルから、そんな声が聞こえて来たので顔を出すと、ちょっとした岩山と木立が街道から少し離れた場所に見えました。
「うん、良さそう。行ってみようか」
「了解です。道外れますんで一旦揺れますぜ。落ちない様に気をつけてくだせぇ」
グラルの操作で道を逸れ、草地に入ります。路面の状態が悪くなったのにもかかわらず、巴のパワーで問題なく馬車は進み、ほどなく目標の場所に到着しました。
日没まではあと少し、急いで拠点準備しましょうかね。
あ、凄いいい笑顔だわ。
「どうだい?ユーマ君。見てくれたかい?」
「めっちゃカッコ良かったですよ!マイラさん!
もう、なんていうか、惚れ惚れしました!」
「うふふ。そうだろう?これもユーマ君のおかげさ」
馬車に乗り込んだマイラさんは、風で乱れた髪と衣服を手早く整えながらそう言います。
「昔のアタシは、こんな規模の魔法なんて使えなかったのさ。
ユーマ君と知り合って、キミの非常識な魔力運用と考え方を知ったからこそ、今みたいな威力の魔法を使えるようになったんだ。
それに、魔力の消費効率が格段に向上したからね。以前のアタシなら魔力枯渇で昏倒ものだよ」
さりげなくディスられた様な気がしないでもないけど、マイラさん的には認めてくれてるのかな?そう信じたい…
「それよりも気になるのはさ、こんな草原地域にいる様な魔獣じゃないんだよ。岩トカゲってやつは」
「旦那。あっしも驚きましたぜ。あいつらはもっと岩がゴロゴロしてるような荒地や岩山で出くわす魔獣ですわ」
「やっぱり、例のオーガとトロルの集団のせいなのかな?」
マイラさんもそう予想していたようで、頷きながら話してくれます。
「アタシもその可能性が高いと思う。
まだフランカを占拠してるのかはわからないけど、少なくとも聞いてる限りの規模の集団なら、そいつらの食糧だってかなりの量が必要になるはずさ。そうなれば、周辺に狩りに出てる可能性は低くないはずだよ。
恐らくさっきの岩トカゲも、ナワバリを侵されて逃げて来たんじゃないかな」
うん。多分そうだよね。逃げて来たのか、獲物不足で餌を求めて移動して来たのかまではわからないけど、同じ地域の捕食者密度が上がったのは間違いないからなぁ。
って事は、この先も通常と違う様な敵と遭遇する可能性もあるって話で…意外な素材が入手出来たりしてね。
あ、そうだ。岩トカゲの素材を拾わないと。
「マイラさん、岩トカゲって使えるの?あと、美味しい?」
「あはははっ!流石ユーマ君だねぇ。
岩トカゲは皮を防具に使う事があるよ。でもまぁ、特別いい材料ってわけじゃないかな。
肉は…それなりだね。よく鳥の肉に似てるとか言われるかな。脂身はほとんどなくて淡白な味らしいよ。
ちなみにさっきの指揮個体は亜種のようだったから、普通の岩トカゲとほぼ同じだね。皮も穴だらけにしてしまったから使い物にはならないかな」
うーむ…そうかぁ。普通の個体は粉々だし、とりあえず指揮個体の2匹だけ回収してみますか。
一応食べてみたいし。
そんなわけで、サクッと回収を済ませて再び馬車を進めます。
岩トカゲを倒した後、不思議と道が穏やかで激しい揺れが無かったのに、ワザとらしくネルに倒れこんだりしてね。しっかり堪能させて頂きました。
ネルの機嫌も改善したからいいんです。
「この前よりも長く使えたわね。やっぱり魔力を貯める方がいいみたい」
「しばらく使ってなかったら沢山貯まってたんだね。またしばらく貯めとかないと」
「それならば今夜の風呂は、我とマイラで楽しませてもらうかの。ふふふっ」
シアとマイラさんがお互い笑い合ってます。
「ふぁっ!?しまったー!それを忘れてたわ…なんて単純なミスを…」
再びミニサイズに戻ったネルが、馬車の床を叩きながら悔しがっています。
「ユーマ?あんた絶対気付いてたでしょ?なんで言ってくれないのよぅ…」
「いやさぁ、だってほら、お風呂のネルを期待してるよって宣言するようなもんだしさ。言いにくいって」
「ぐぬぬっ…それは確かにそうなんでしょうけど…」
そんな血の涙でも流しそうな顔で言われましてもねぇ…
「ネル様の負けじゃな。くふふっ」
「ぐはっ!まさか駄竜如きに…いいように言われるとは、なんたる不覚」
「まぁまぁ、落ち着いて?ネル。また沢山魔力込めとくからさ、そしたら今度は2人きりで入ればいいじゃん」
その瞬間、がばっと音がしたかと思う位の勢いで顔をあげたネル。
「うふふふふっ…聞いたわよ?ユーマ。みんなも聞いたわよね?
うひひひ…やったわっ!いただきよっ!必ず実行させるから」
…おぃ、こら女神様。なんて悪い顔するんだよ?みんなドン引きしてるからね?
「のぅ、マイラよ。ちとやり過ぎたかの?」
「そうだねぇ、まさかの反応だよ。これがあのネールドリア様かと、疑うレベルじゃないかい?」
はい!そこ!警告!
まぁ、ネル本人はトリップ中で聴こえてないだろうけどさ。
とばっちりはゴメンだよ?
「わたくしの扱い…」
あ、こっちもトリップ中だった…
こうして賑やかなまま順調に馬車は進み、徐々に日が暮れ始めて来ました。そろそろ休憩時間かな。
「旦那、目隠しに良さそうな林がありますぜ?あの辺りでどうですかい?」
休憩ポイントを探す様にお願いしてたグラルから、そんな声が聞こえて来たので顔を出すと、ちょっとした岩山と木立が街道から少し離れた場所に見えました。
「うん、良さそう。行ってみようか」
「了解です。道外れますんで一旦揺れますぜ。落ちない様に気をつけてくだせぇ」
グラルの操作で道を逸れ、草地に入ります。路面の状態が悪くなったのにもかかわらず、巴のパワーで問題なく馬車は進み、ほどなく目標の場所に到着しました。
日没まではあと少し、急いで拠点準備しましょうかね。
0
お気に入りに追加
535
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる