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第五章 フランカ市
第127話
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あっという間に岩トカゲの群れを殲滅させたマイラさんは、魔法の余波で吹く風に髪を靡かせながら戻ってきました。
あ、凄いいい笑顔だわ。
「どうだい?ユーマ君。見てくれたかい?」
「めっちゃカッコ良かったですよ!マイラさん!
もう、なんていうか、惚れ惚れしました!」
「うふふ。そうだろう?これもユーマ君のおかげさ」
馬車に乗り込んだマイラさんは、風で乱れた髪と衣服を手早く整えながらそう言います。
「昔のアタシは、こんな規模の魔法なんて使えなかったのさ。
ユーマ君と知り合って、キミの非常識な魔力運用と考え方を知ったからこそ、今みたいな威力の魔法を使えるようになったんだ。
それに、魔力の消費効率が格段に向上したからね。以前のアタシなら魔力枯渇で昏倒ものだよ」
さりげなくディスられた様な気がしないでもないけど、マイラさん的には認めてくれてるのかな?そう信じたい…
「それよりも気になるのはさ、こんな草原地域にいる様な魔獣じゃないんだよ。岩トカゲってやつは」
「旦那。あっしも驚きましたぜ。あいつらはもっと岩がゴロゴロしてるような荒地や岩山で出くわす魔獣ですわ」
「やっぱり、例のオーガとトロルの集団のせいなのかな?」
マイラさんもそう予想していたようで、頷きながら話してくれます。
「アタシもその可能性が高いと思う。
まだフランカを占拠してるのかはわからないけど、少なくとも聞いてる限りの規模の集団なら、そいつらの食糧だってかなりの量が必要になるはずさ。そうなれば、周辺に狩りに出てる可能性は低くないはずだよ。
恐らくさっきの岩トカゲも、ナワバリを侵されて逃げて来たんじゃないかな」
うん。多分そうだよね。逃げて来たのか、獲物不足で餌を求めて移動して来たのかまではわからないけど、同じ地域の捕食者密度が上がったのは間違いないからなぁ。
って事は、この先も通常と違う様な敵と遭遇する可能性もあるって話で…意外な素材が入手出来たりしてね。
あ、そうだ。岩トカゲの素材を拾わないと。
「マイラさん、岩トカゲって使えるの?あと、美味しい?」
「あはははっ!流石ユーマ君だねぇ。
岩トカゲは皮を防具に使う事があるよ。でもまぁ、特別いい材料ってわけじゃないかな。
肉は…それなりだね。よく鳥の肉に似てるとか言われるかな。脂身はほとんどなくて淡白な味らしいよ。
ちなみにさっきの指揮個体は亜種のようだったから、普通の岩トカゲとほぼ同じだね。皮も穴だらけにしてしまったから使い物にはならないかな」
うーむ…そうかぁ。普通の個体は粉々だし、とりあえず指揮個体の2匹だけ回収してみますか。
一応食べてみたいし。
そんなわけで、サクッと回収を済ませて再び馬車を進めます。
岩トカゲを倒した後、不思議と道が穏やかで激しい揺れが無かったのに、ワザとらしくネルに倒れこんだりしてね。しっかり堪能させて頂きました。
ネルの機嫌も改善したからいいんです。
「この前よりも長く使えたわね。やっぱり魔力を貯める方がいいみたい」
「しばらく使ってなかったら沢山貯まってたんだね。またしばらく貯めとかないと」
「それならば今夜の風呂は、我とマイラで楽しませてもらうかの。ふふふっ」
シアとマイラさんがお互い笑い合ってます。
「ふぁっ!?しまったー!それを忘れてたわ…なんて単純なミスを…」
再びミニサイズに戻ったネルが、馬車の床を叩きながら悔しがっています。
「ユーマ?あんた絶対気付いてたでしょ?なんで言ってくれないのよぅ…」
「いやさぁ、だってほら、お風呂のネルを期待してるよって宣言するようなもんだしさ。言いにくいって」
「ぐぬぬっ…それは確かにそうなんでしょうけど…」
そんな血の涙でも流しそうな顔で言われましてもねぇ…
「ネル様の負けじゃな。くふふっ」
「ぐはっ!まさか駄竜如きに…いいように言われるとは、なんたる不覚」
「まぁまぁ、落ち着いて?ネル。また沢山魔力込めとくからさ、そしたら今度は2人きりで入ればいいじゃん」
その瞬間、がばっと音がしたかと思う位の勢いで顔をあげたネル。
「うふふふふっ…聞いたわよ?ユーマ。みんなも聞いたわよね?
うひひひ…やったわっ!いただきよっ!必ず実行させるから」
…おぃ、こら女神様。なんて悪い顔するんだよ?みんなドン引きしてるからね?
「のぅ、マイラよ。ちとやり過ぎたかの?」
「そうだねぇ、まさかの反応だよ。これがあのネールドリア様かと、疑うレベルじゃないかい?」
はい!そこ!警告!
まぁ、ネル本人はトリップ中で聴こえてないだろうけどさ。
とばっちりはゴメンだよ?
「わたくしの扱い…」
あ、こっちもトリップ中だった…
こうして賑やかなまま順調に馬車は進み、徐々に日が暮れ始めて来ました。そろそろ休憩時間かな。
「旦那、目隠しに良さそうな林がありますぜ?あの辺りでどうですかい?」
休憩ポイントを探す様にお願いしてたグラルから、そんな声が聞こえて来たので顔を出すと、ちょっとした岩山と木立が街道から少し離れた場所に見えました。
「うん、良さそう。行ってみようか」
「了解です。道外れますんで一旦揺れますぜ。落ちない様に気をつけてくだせぇ」
グラルの操作で道を逸れ、草地に入ります。路面の状態が悪くなったのにもかかわらず、巴のパワーで問題なく馬車は進み、ほどなく目標の場所に到着しました。
日没まではあと少し、急いで拠点準備しましょうかね。
あ、凄いいい笑顔だわ。
「どうだい?ユーマ君。見てくれたかい?」
「めっちゃカッコ良かったですよ!マイラさん!
もう、なんていうか、惚れ惚れしました!」
「うふふ。そうだろう?これもユーマ君のおかげさ」
馬車に乗り込んだマイラさんは、風で乱れた髪と衣服を手早く整えながらそう言います。
「昔のアタシは、こんな規模の魔法なんて使えなかったのさ。
ユーマ君と知り合って、キミの非常識な魔力運用と考え方を知ったからこそ、今みたいな威力の魔法を使えるようになったんだ。
それに、魔力の消費効率が格段に向上したからね。以前のアタシなら魔力枯渇で昏倒ものだよ」
さりげなくディスられた様な気がしないでもないけど、マイラさん的には認めてくれてるのかな?そう信じたい…
「それよりも気になるのはさ、こんな草原地域にいる様な魔獣じゃないんだよ。岩トカゲってやつは」
「旦那。あっしも驚きましたぜ。あいつらはもっと岩がゴロゴロしてるような荒地や岩山で出くわす魔獣ですわ」
「やっぱり、例のオーガとトロルの集団のせいなのかな?」
マイラさんもそう予想していたようで、頷きながら話してくれます。
「アタシもその可能性が高いと思う。
まだフランカを占拠してるのかはわからないけど、少なくとも聞いてる限りの規模の集団なら、そいつらの食糧だってかなりの量が必要になるはずさ。そうなれば、周辺に狩りに出てる可能性は低くないはずだよ。
恐らくさっきの岩トカゲも、ナワバリを侵されて逃げて来たんじゃないかな」
うん。多分そうだよね。逃げて来たのか、獲物不足で餌を求めて移動して来たのかまではわからないけど、同じ地域の捕食者密度が上がったのは間違いないからなぁ。
って事は、この先も通常と違う様な敵と遭遇する可能性もあるって話で…意外な素材が入手出来たりしてね。
あ、そうだ。岩トカゲの素材を拾わないと。
「マイラさん、岩トカゲって使えるの?あと、美味しい?」
「あはははっ!流石ユーマ君だねぇ。
岩トカゲは皮を防具に使う事があるよ。でもまぁ、特別いい材料ってわけじゃないかな。
肉は…それなりだね。よく鳥の肉に似てるとか言われるかな。脂身はほとんどなくて淡白な味らしいよ。
ちなみにさっきの指揮個体は亜種のようだったから、普通の岩トカゲとほぼ同じだね。皮も穴だらけにしてしまったから使い物にはならないかな」
うーむ…そうかぁ。普通の個体は粉々だし、とりあえず指揮個体の2匹だけ回収してみますか。
一応食べてみたいし。
そんなわけで、サクッと回収を済ませて再び馬車を進めます。
岩トカゲを倒した後、不思議と道が穏やかで激しい揺れが無かったのに、ワザとらしくネルに倒れこんだりしてね。しっかり堪能させて頂きました。
ネルの機嫌も改善したからいいんです。
「この前よりも長く使えたわね。やっぱり魔力を貯める方がいいみたい」
「しばらく使ってなかったら沢山貯まってたんだね。またしばらく貯めとかないと」
「それならば今夜の風呂は、我とマイラで楽しませてもらうかの。ふふふっ」
シアとマイラさんがお互い笑い合ってます。
「ふぁっ!?しまったー!それを忘れてたわ…なんて単純なミスを…」
再びミニサイズに戻ったネルが、馬車の床を叩きながら悔しがっています。
「ユーマ?あんた絶対気付いてたでしょ?なんで言ってくれないのよぅ…」
「いやさぁ、だってほら、お風呂のネルを期待してるよって宣言するようなもんだしさ。言いにくいって」
「ぐぬぬっ…それは確かにそうなんでしょうけど…」
そんな血の涙でも流しそうな顔で言われましてもねぇ…
「ネル様の負けじゃな。くふふっ」
「ぐはっ!まさか駄竜如きに…いいように言われるとは、なんたる不覚」
「まぁまぁ、落ち着いて?ネル。また沢山魔力込めとくからさ、そしたら今度は2人きりで入ればいいじゃん」
その瞬間、がばっと音がしたかと思う位の勢いで顔をあげたネル。
「うふふふふっ…聞いたわよ?ユーマ。みんなも聞いたわよね?
うひひひ…やったわっ!いただきよっ!必ず実行させるから」
…おぃ、こら女神様。なんて悪い顔するんだよ?みんなドン引きしてるからね?
「のぅ、マイラよ。ちとやり過ぎたかの?」
「そうだねぇ、まさかの反応だよ。これがあのネールドリア様かと、疑うレベルじゃないかい?」
はい!そこ!警告!
まぁ、ネル本人はトリップ中で聴こえてないだろうけどさ。
とばっちりはゴメンだよ?
「わたくしの扱い…」
あ、こっちもトリップ中だった…
こうして賑やかなまま順調に馬車は進み、徐々に日が暮れ始めて来ました。そろそろ休憩時間かな。
「旦那、目隠しに良さそうな林がありますぜ?あの辺りでどうですかい?」
休憩ポイントを探す様にお願いしてたグラルから、そんな声が聞こえて来たので顔を出すと、ちょっとした岩山と木立が街道から少し離れた場所に見えました。
「うん、良さそう。行ってみようか」
「了解です。道外れますんで一旦揺れますぜ。落ちない様に気をつけてくだせぇ」
グラルの操作で道を逸れ、草地に入ります。路面の状態が悪くなったのにもかかわらず、巴のパワーで問題なく馬車は進み、ほどなく目標の場所に到着しました。
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