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第四章 プラム村

第119話

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 マイラさんが、ダークエルフのライサさんを気にかけてるみたいです。

 「ダークエルフって種族も、アタシと同じくエルフ族で、ルフ王国にも沢山いるんだ。
 だけどねぇ…彼女達の種族は魔法がほとんど使えないのさ。稀に使えても、強化系の一部を自分にしか使えないんだよ。
 エルフ族の中では、どうしてもそれを蔑もうとする意見がなくならないのさ。
 逆に弓の腕前は、他のどの種族にも負けない程優れてるんだけど、それを認められない愚か者も多くてねぇ。
 精霊に愛されてないからだ、とかなんとか理由をつけては、彼女達を下に見ようとするんだよ」

 どうやらマイラさんは、国許を出奔して冒険者として生活する内に、ダークエルフの優秀な部分をきちんと認められる様になったみたいだね。
 実際、ライサさん自身はかなり優秀な感じだったし、魔法自体がそこまで得意ではない人族の中に入れば、ダークエルフの種族特性は十分な戦力として評価されてるっぽい。

 「だからこそ王族の端くれとしてはさ、ダークエルフを見ると申し訳ない様な気分になってしまうんだよ。
 勿論ただの感傷みたいなもんだけどねぇ…」

 マイラさん自身は、理性では僕達の事情を優先しなきゃいけないんだってわかりながらも、感情的なところではどうにかして欲しいと思ってるんだろうなぁ。

 「それなら…」

 「いや、いいんだ。感情だけで動いたら際限がなくなるから。
 それに聞いた限り、彼女にはまだどうにでも出来る力もチャンスも十分にあると思う。
 ただ、明日少しだけあの子と話す時間を貰いたいな」

 それくらい容易い事だし、マイラさんがどんな話をするにしても、持ち帰って来た結果を受け入れよう。それがきっと一番納得いく結論になるだろうし。



 それから、宿で簡単な昼食を摂る僕達。話題は明日からの旅程です。
 クレイドル侯爵領は、これまでのハイネン男爵領と比較すると、3倍近い広さがあるみたいだね。当然それだけ通過するのに日数がかかる。

 「ここプラム村に一番近いのがフランカの街で、大体馬車で丸3日ってところだね。巴なら2日で着けると思う。
 その次がヨーゼル村。で、ミルカ村を経由して王都までおよそ8日から10日と言ったところじゃないかな」

 「フランカが領都になるの?」

 「いや、領都はクレイドブルクと言ってね、ここから王都に繋がる最短ルートにはかからないんだよ。
 王都からの主要な街道は、勿論クレイドブルクに繋がってて、さらにハンザ、ベイリーザ、ルーアンと言った各領都を結ぶ様に敷かれているからね」

 明日の昼前に出発して、途中で最低2回野営をするって感じになると思うけど、都合のいい場所はあるのかな?
 街道沿いの地形が気になるところです。

 「さっきも言った通り、主要街道ではない分、未整地な箇所も残っているからね。野営場などもないけど、ユーマ君だったら返って都合がいいんじゃないかい」

 「あら?それならお風呂も大丈夫そうね!ここしばらく、ゆっくり浸かれてないじゃない?」

 「そうですね。ネル様の言われた通り、少し場所を選べば大丈夫でしょう。
 まぁユーマ君なら、多少の事はどうにかするだろうけどねぇ」

 僕の扱いが、便利な重機みたいになってる気がするんだけど?

 「ちなみに出現する魔物とかはどうなんだろう?」

 「そうだね…荒地や岩場もあるから、これまで見てない猪系や、山羊系の魔獣は出てくるかな。
 それと、森はオーガとトロル、あとはトレントの出没事例は聞いた事があるよ。
 ただ、アタシ達の戦力的に対処は問題ないと思う」

 「猪や山羊は食材に良さそうね!活きのいいヤツ捕まえてきなさいよね!」

 ネル的には、食材と認識している模様です。あ、僕もだ…

 「ちなみにユーマ君。トレントは魔道具の材料として有名だよ。あれだけ魔力親和性が高い木材はないからねぇ。
 色々な魔道具の部品や、魔法の発動体としても馴染みがある素材って事さね」

 「道沿いのトレントは刈り尽くします」

 「そ、そうかい…まぁアレ等はなかなか上手に擬態してるからねぇ。気付かずに近寄って捕まれば、結構な勢いで魔力を吸われてしまうから注意してくれよ?
 それに、場合によっては擬態したまま動かない事もあるんだ。基本的に手堅い性質らしくてねぇ…あきらかに自分よりも強そうな相手には手を出して来ないから」

 トレントは魔力を感知する能力に長けているみたい。
 って事は、極力魔力を漏らさない様にすれば探さなくても済みそうな気がします。

 次の街までの道中は、新しい食材と素材に出会えると思うと、期待に胸が膨らむね!



 話し合いと昼食を済ませた僕達は、明日からの準備をする為に動きます。

 僕とネルは、馬車の準備。シアとマイラさんとエリーヌは、食材の買い出しに向かいました。

 そういえばエリーヌが大人しいなと思って、具合でも悪いのかと尋ねてみたところ、まだ違和感があるんだってさ…
 はい。僕のせいだね…


 宿の厩舎に着くと、相変わらずグラルが甲斐甲斐しく巴の世話をしていました。
 結構な頻度でブラッシングしてあげてるせいか、巴の全身がツヤツヤとしてます。
 巴もそんなグラルにかなり気を許してるみたいで、気持ち良さげな様子。

 『巴。明日出発する予定なんだけど調子はどう?』

 『旦那様!全然問題ないよっ!
 それよりウチ綺麗になったと思わない?グラルがさ、めっちゃ丁寧にブラシかけてくれてんの!超気持ちいいし!
 もしかしてウチ、魅力的になった?旦那様のためにもっと綺麗になるからねっ!そしたらさ…ね?』

 巴が凄いアピールして来ました。
 グラルの努力が報われる日が来るといいなぁ…



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